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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン


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エピソード44 パスポート

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


 「そうかもな」


少し笑いながら言う。


「りこぴんは頑張ってるし」


「見てて俺も頑張らなきゃって思う」


りこぴんは一瞬、黙った。


グラスを見つめる。


それから、照れたみたいに笑う。


「えーなにそれ」


「ずるくない?」


「なんで?」


「それ言われたらさ」


テキーラをぐいっと飲む。


「来るしかなくなるじゃん」


少しだけ、


嬉しそうだった。


「じゃあちょっと行ってくるね」


「いい子にしてて」


「はーい」


そう言って席を立つ。


何卓かヘルプを回って、

まおの席に戻る。


すると北斗さんがついていた。


「ただいま」


「ねー北斗さんかっこいい!やばい!」


……おい。


「よかったね」


「俺もっと回ってきた方がいい?」


わざとらしく言う。


まおがすぐ返す。


「ねえ、すねないで」


「指名替えとかはしないから、さすがに」


北斗さんが笑う。


「奏楽、この子おもしろいね」


「そーっすか?」


「ただのあほですよ」


まおがすぐ突っ込む。


「誰があほじゃ、ボケホス」


「口悪いなあ」


北斗さんが声を出して笑った。


「いいじゃん、この距離感」


「奏楽に合ってるよ」


俺はグラスを作りながら思う。


この子、


客っていうより、


完全に“ツレ”だ。


でも――


こういう子ほど、


あとで一番化ける。


「わたし、そろそろ終電だから帰るわ!」


まおがスマホを見ながら言う。


「え、終電早くね?」


「家、群馬なの」


「まじかよ」


「わざわざ国境越えてきてくれたのかよ」


「群馬行くのにパスポートいらねえわ!」


「同じ関東だろ!」


「ん?」


俺は少し考えるふりをする。


「ちょっとグンマ語まだ習ってないや」


「しね!」


「それは聞き取れる!」


「最低だ!」


まおが笑いながら立ち上がる。


「でも楽しかった」


「また来るわ」


さらっと言う。


営業でもない。


宣言でもない。


ただの感想みたいに。


でも、


こういう言葉の方が、


後でちゃんと来る。


俺は思わず言う。


「気をつけて帰れよ、国境越え」


「うるさい!」


そう言いながら、


まおは手を振って店を出ていった。


嵐みたいな新規だった。


でも、


妙に印象が残る。


フリーにもついた。


軽く会話をして、


送り指名をもらう。


小さいけど、


ちゃんと結果だ。


りこぴんの席に戻る。


当たり障りのない会話。


テキーラ。


笑い。


いつもの流れ。


そして営業終了。


照明が少し明るくなる。


グラスを下げる。


今日一日を思い返す。


なんか、


いい一日だった。


新規指名。


送り指名。


毎出勤来てくれる子がいて。


エースになりそうな子がいて。


そして、


あんな変な新規まで現れた。


歌舞伎町に来てから、


毎日なにかが起きる。


疲れる。


でも、


楽しい。


ホストって、


もしかしたら


向いてるのかもしれない。

よんでいただきありがとうございます。

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