エピソード43 本当のこと
歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。
そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと
そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。
「B2にリコピンさん来てます」
ボーイの声。
やっぱり来た。
リコピンはあれから本当に、毎出勤来てくれている。
ありがたい。
本当にありがたい。
でも今は――
まおと、もっと話していたかった。
「ちょっと行ってくる」
まおに言う。
「北斗さんつけてもらうよう言ってみようか?」
まおは肩をすくめる。
「指名替えしちゃったらごめんね」
「それは許さない」
そんな軽口を叩いて席を立つ。
B2へ向かう。
顔を作る。
ホストの顔。
「おはよ!今日も偉いね!」
急にホストスイッチ。
リコピンが両手を上げる。
「えらいだろー!」
笑う。
でも。
正直、最近はもう――
話すことが少なくなってきている。
毎日来る。
酒を飲む。
笑う。
同じ話。
同じ流れ。
悪いことじゃない。
むしろ、ホストとしては理想だ。
でも、
どこかで感じてしまう。
この関係、
これ以上広がるのか?
それとも、
このまま回り続けるだけなのか。
リコピンが言う。
「今日もテキーラ?」
俺は笑う。
「ほどほどにしよ」
心の中で思う。
ホストって、
売上だけじゃなくて、
“温度”も管理しなきゃいけない仕事なんだな。
今日もテキーラで乾杯。
グラスを合わせる。
「そういえばさ」
リコピンが言う。
「最初に会った時以来、奏楽つぶれてないね!」
「えらい!」
たしかに。
あの日は完全に記憶飛んでた。
「たしかに」
「りこぴんは一回もつぶれてないのすごいな」
リコピンは胸を張る。
「わたしつよいからねー!」
自慢げに笑う。
テキーラをぐいっと飲む。
相変わらず元気だ。
変わらない。
この席はいつも同じ温度だ。
安心する。
でも同時に、
少しだけ、
刺激が足りない気もする。
リコピンは楽しそうに言う。
「ねえねえ」
「今日さ、なんか新規いたでしょ?」
鋭い。
フロア見てる。
「なんで?」
「さっき席立つ時、ちょっと顔違った」
…見られてる。
やっぱり、
毎出勤は伊達じゃない。
「音楽の話で来た子」
正直に言う。
リコピンはニヤっと笑う。
「へー」
「かわいい?」
テキーラのグラスを回しながら聞く。
試してる。
たぶん。
「女の子はみんなかわいいよ」
「もちろん、りこぴんも」
そう言って、ほっぺたをツンとする。
……ホストすぎたか。
自分でも思う。
あまりキャラじゃないことをした。
りこぴんは少し目を細めた。
「ねえ」
「そうじゃない」
「奏楽ってどんな子が好きなの?」
難しい質問だ。
本当のことを言うなら――
きれい系より、かわいい系。
笑顔がかわいい子。
できれば八重歯なんかあるといい。
あと、
細すぎるより、
少しムチっとしてるくらいが好きだ。
……でも、
そんな本音を言っても仕方ない。
「んー」
少し考えるふりをする。
なんとなく直感で外見のことは口にしちゃいけないと思った。
「一緒にいて成長できる子かな」
「俺も、もっと頑張らなきゃなって思える子」
りこぴんが少し黙る。
テキーラのグラスを回す。
「ふーん」
小さく言う。
「それってさ」
顔を上げる。
「私?」
ドキッとする。
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