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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン


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エピソード40 掲示板

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


仮眠して、昼前に家へ戻る。


カーテンを閉めると、

部屋はやけに静かだった。


ららは「今日新しい店探す」と言っていた。

寮つきの店。

新宿からは少し離れるかもしれない、と。


ここ数日、濃すぎた。


シャンパン、三卓、ホテル、覚悟。


久しぶりに、

何も考えず横になれると思った。


スマホが鳴る。


バンドのメンバーからだった。


「お疲れ様。ホストやってるって本当?」


一瞬、呼吸が止まる。


「本当だよ」


既読がつくまでの時間が、妙に長い。


「本当なのか……掲示板に書かれてた」


嫌な予感が当たる。


「ボーカルが怒っちゃってさ。一時脱退って形に今なってるけど、戻す気はないって」


胸の奥が、ゆっくり冷える。


「俺は気にしてないんだけどさ」


「イメージを下げられたとか言ってる」


イメージ。


笑ってしまいそうになる。


売れないまま活動していたバンドに、

守るべき“イメージ”なんてあったのか。


「そうか。すまない」


自然に出た言葉。


「戻れないと思っておくよ。悲しいけど」


通話が終わる。


掲示板を開く。


そこには、


【〇〇ってバンドの〇〇、活動休止して〇〇って店で“奏楽”って名前で働いてるwww】


完全にバレている。


店名まで。


最悪だ。


でも。


不思議と、絶望はなかった。


むしろ、どこかで思っていた。


“もう後戻りできない”


その言葉が、

やっと現実になっただけ。


もう二足のわらじは履けない。


ホスト一本。


スマホをスクロールする。


その掲示板は、

バンドマンや元バンドマン、

音楽好きが集まる場所らしい。


チャット機能もある。


オフ会募集。


ライブ同行。


楽器トーク。


ふと考える。


――もうバンドには戻れない。


なら。


バンド好きな子を、

集客できるんじゃないか?


音楽の話はできる。


ライブハウスの空気も知ってる。


機材車の匂いも、

打ち上げの乾杯も知ってる。


“元バンドマンホスト”


これは武器になるかもしれない。


今までは、

隠していた過去。


でも。


ららに言われた。


「選ぶホストになれ」


過去を切るか。


武器にするか。


もう戻れないなら、

使うしかない。


名前は出さない。



【元バンドマン。今は歌舞伎で働いてます。音楽好きな子いたら話そ】


送信。


これが正解かはわからない。


でも。


ホストは待つ仕事じゃない。


作る仕事だ。


ネオンの外でも、

戦いは始まっている。


夜。


もう一度掲示板を開く。


通知が一件。


【からみたいです】


軽い。


でも悪くない。


「音楽好きなんですか?」


「はい、〇〇とか〇〇ききます」


……趣味が合いすぎる。


「お、いいセンスしてますね」


「特にこの曲がすきで」


「おーめっちゃわかる」


深夜の匿名チャット。


音楽の話だけで、

こんなに盛り上がるのは久しぶりだった。


ライブの空気。


ギターの音作り。


歌詞の一行。


ホストの営業より、

素で話している気がする。


楽しい。


本当に。


ひとしきり話したあと、

軽く投げる。


「まあ俺はいまバンドやめてホストやってるんだけどね」


少しだけ探り。


「え、ホストめちゃくちゃ最近気になってたんだよね!」


食いつき早い。


「会ってみたい人がいるの?」


「だれ?」


「〇〇さんとか!」


超売れっ子。


「めっちゃ売れてる人やん」


「あと〇〇ってお店きになってる」


心臓が一瞬止まる。


「え、それ俺がいるお店。だれがいいの?」


「まじ?」


「二人いるんだよね」


来た。


「奏楽って人と、北斗って人」


……。

よんでいただきありがとうございます。

感想、評価、レビュー思ったままにお願いします

ブックマークしていただけるよう謹んでまいります。

今後とも長いおつきあいをよろしくお願いします。

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