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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン


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34/64

エピソード33 錠前

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


 朝を迎えた。


カーテンの隙間から、

薄い光が差し込む。


新宿の朝は、

夜より静かだ。


隣を見る。


ららは、

俺の腕に額を押し当てて眠っている。


規則正しい呼吸。


昨日の、

あの張りつめた空気はない。


結局。


俺たちは、

何もしなかった。


抱きしめたまま、

眠った。


ららが小さく動く。


目を開けて、

一瞬きょとんとする。


それから、

安心したように笑った。


「おはよ」


声は、

いつものららだった。


女の顔でも、

風俗嬢の顔でもない。


ただの、

朝の顔。


「おはよ」


俺は腕を抜く。


名残惜しそうに、

少しだけ指が絡む。


「今日、同伴だよね」


「うん」


現実が戻る。


ららは起き上がって、

伸びをする。


「原宿で服買ってから行こ」


もう切り替えている。


強いのか、

無理しているのか。


俺はベッドに座ったまま、

少しだけ考える。


昨夜、

越えなかった一線。


正解だったかは、

まだわからない。


でも。


ららは、

ここにいる。


配信者じゃなく。


俺の隣に。


それだけで、

今は十分かもしれない。


――今日から、どうなる。


新宿の朝は、

静かに始まった。


 原宿は、平日でも混んでいた。


人波をかき分けてラフォーレへ入る。


臨時で買うシャツにしては、

なかなかの値段。


ららは、何も言わずに会計を済ませた。


「これ、ららが来る日は着るわ」


そう言うと、


「うん、似合ってるよ」


満足そうに笑う。


その笑顔が少しだけ誇らしげなのが、

気になった。


「もう一件、行きたいとこある」


そう言って、裏原宿の奥へ。


雑居ビルの二階。


小さなアクセサリー屋。


ごつめのシルバーが並んでいる。


ららは店内を見渡し、

一つのショーケースの前で止まった。


「好きな指輪、一個選びな」


「奏楽、ホストなのに何もアクセサリーしてないの気になってた」


確かに。


俺はあまり興味がなかった。


“ホストなのに”。


その言葉が、少し刺さる。


「ありがとう。俺、もっと頑張るね」


「いいの。ららがするから」


……する?


俺は二本が交差した指輪を選ぶ。


指にはめて見せる。


ららが目を細める。


「ばかじゃないの?」


「ホストが薬指に指輪すんなよ」


――しまった。


俺は本当にばかだ。


「冗談!冗談だから!」


でも顔に出ていたらしい。


ららは笑って、

別のケースを指差す。


「じゃあそれの人差し指のサイズで」


そして、

もう一つ。


「これ」


鍵と錠前のモチーフのネックレス。


小さく笑う。


「かけたい?」


一拍置く。


「かけられたい?」


一瞬、空気が変わる。


冗談なのか。


本気なのか。


ららは、

主導権を握ろうとしている。


俺を飾る。


俺に名前をつける。


俺にアクセサリーを選ぶ。


それは優しさか。


それとも、

“所有”か。


俺はネックレスを手に取る。


「難しいな」


正直に言う。


「でもさ」


ららの目を見る。


「鍵は、持つ方が重いぞ」


ららが少し驚く。


それから、

ゆっくり笑う。


「じゃあ、ららが持つ」


軽く言ったその言葉が、

思ったより深かった。

よんでいただきありがとうございます。

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