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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン


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エピソード31 おおきなキャリー

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


新宿に着く。


喫煙所にいるらしい。


夜の駅前は、

いつも通りうるさいのに、

今日はやけに遠く感じた。


なんて声をかければいい。


お疲れ?

よかったね?

大丈夫?


どれも違う気がする。


喫煙所の端に、

りんがいた。


タバコを持ったまま、

少しだけ俯いている。


「そーらー。おそいー」


声は、

いつもより低い。


「ごめんごめん。

これでも急いだんだよ」


「名古屋からのが早かったね」


皮肉でも、

冗談でもない。


ただの事実。


一瞬、沈黙。


「それで……どうだったの?」


りんは煙を吐く。


長く。


「んー……ほんとあっさり」


「勝手に出てってー、みたいな」


「受け取ったお金そこ置いてあるからって」


笑っている。


でも、目は笑っていない。


「きっともう、いらなかったんだよ」


少し間をあけて、


「私」


その言葉が、

夜に落ちる。


必要とされていなかった。


怒りよりも、

悲しみよりも、


空っぽ。


りんは、

強がっているわけでもない。


ただ、

事実を言っている。


それが一番、重い。


俺は少し近づく。


「いらなかったわけじゃない」


言いかけて、止まる。


それは慰めだ。


嘘になる。


だから、違う言葉を選ぶ。


「ちゃんと終われたんだな」


りんは小さく頷く。


「うん」


「なんかね」


「思ったより痛くなかった」


それが、

一番怖い。


「でもそれは奏楽がいてくれたからだよ」


りんは、

まっすぐ俺を見た。


「ありがとう」


軽くない。


名古屋を出て、

荷物をまとめて、

関係を終わらせて。


その直後の“ありがとう”。


俺は、

何もしていない。


電話して、

会いに来ただけ。


それでも。


「あとね」


りんが、少しだけ笑う。


「もう“りん”じゃなくなるから」


一瞬、理解が追いつかない。


「どういうこと?」


「その名前、配信者からとってるの」


淡々としている。


「今度は奏楽からもらう」


心臓が、少し強く鳴る。


名前を変える。


それは、

依存先を変えるということだ。


「新幹線の中で考えてたんだけど」


「“らら”ってどうかな?」


俺は一瞬、言葉を探す。


軽く返せば、

全部背負うことになる。


重く返せば、

逃げられなくなる。


それでも口から出た。


「わかった」


「今から君は、奏楽のららだ」


その瞬間。


りん――いや、ららは、

ぱっと笑った。


「ららちゃん誕生!」


「さあ、いこー!」


「どこ行くんだよ。何も聞いてないぞ」


「とりあえず家ないからホテル取る!」


大きなキャリーを引いて、

夜の新宿を歩き出す。


その背中は、

軽い。


でも。


俺の足取りは、

少しだけ重い。


名前をつける。


それは、

責任を持つということだ。


ららは今、

俺の隣にいる。

いつまでいてくれるのかな。

よんでいただきありがとうございます。

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