エピソード15 同伴
歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。
そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと
そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。
目が覚めると、
またDMが来ていた。
【もし可能でしたら、
同伴お願いできますか】
……まじか。
初めてだ。
同伴。
頭の中で、
一気に言葉が渋滞する。
たしか、
店に連絡して、
十九時に一緒に店に入ればいい。
――合ってるよな。
慣れてないって、
思われたくない。
必死に、
平然を装って返信する。
【大丈夫ですよ。
ごはんですか?
どこか行きたいところ、
ありますか?】
精一杯、
経験ありそうに振る舞う。
すぐに返事が来た。
【私、
ちょっと遠くに住んでて。
新宿着いたら、
ご飯食べたいなと思ってます】
【あまり詳しくないので、
どこか連れて行ってくれたら
嬉しいです】
……やばい。
全然、
店を知らない。
頭が、
真っ白になる。
麗に聞くしかない。
慌てて、
電話をかけた。
「もしもし、
実は今日、
同伴することになって」
一瞬の沈黙。
「どこか、
おすすめの場所ないかな?」
「まじっすか」
麗の声が、
一段上がる。
「さすがっすね。
調子いいじゃないすか」
「協力しますよ。
ここ、どうです?」
少し間を置いて、
「そうめん専門店」
「……そうめん?」
「って思うじゃないですか」
麗は笑う。
「でも、
そうめん専門店って
まず珍しいし、
店内めちゃくちゃ
お洒落なんすよ」
「高級感あるけど、
値段は
リーズナブルで」
「同伴には、
めっちゃいいっす」
「……ありがとう!」
心から言った。
「助かった!」
電話を切って、
すぐに予約を入れる。
手が、
少し震えていた。
待ち合わせ、
十分前。
落ち着かない気持ちを抑えながら、
煙草に火をつける。
深く吸って、
吐く。
……そういえば。
顔も、
名前も、
ちゃんと分かってない。
向こうは、
俺のSNSを見てる。
声をかけてくれる、
……よな?
そのとき、
DMが来た。
【もう着きます!】
煙草を消して、
小走りで
待ち合わせ場所へ向かう。
ライオンの像。
そこには、
女性が二人。
……どっちだ?
なんて、
聞けばいいんだ。
そう思った瞬間、
肩を叩かれた。
「奏楽くんですかー?」
振り向く。
そこにいたのは、
上下黒い服に身を包んだ、
若い女の子。
可愛らしい。
思わず、
声が出る。
「えー、
ありがとう!」
「こんな可愛い子が
初回指名なんて、
嬉しいなあ」
完全に、
ホストの台詞だった。
「うわ、
めっちゃ
ホストっぽいこと
言ってるー」
そう言って、
若い子特有の
軽い笑い方をする。
――あ。
心の中で、
小さく声が出た。
DMでは、
すごく丁寧だったのに。
実際に喋ると、
めっちゃ今どきだ。
言葉のテンポも、
距離の詰め方も、
画面越しとは
まるで違う。
文字だけじゃ、
分からない。
これが、
“会う”ってことか。
少しだけ、
気が引き締まった。
「お店、
予約してるから
行こっか」
歩き出しながら言う。
「そうめん専門店なんだけど、
好き?」
「え、
そうめんに
専門店とかあるんだ」
目を丸くする。
「ばか歌舞伎町じゃん」
その一言で、
分かった。
この夜は、
まだ、
読めない。
でも、
確実に、
いつもとは違う。
そうめんみたいに、
細くて、
切れやすい流れ。
それを、
切らさずに
運べるかどうか。
同伴の夜は、
もう始まっていた
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