エピソード11 小さな進展
歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。
そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと
そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。
それから、
一週間が経った。
それぞれに、
小さな進展はあった。
一人目。
担当がいる子、メロ。
営業終わりに、
俺は仕事帰り。
メロは、
担当の店帰り。
二度、
一緒にバーに行った。
どちらも、
同じ結末だった。
メロは、
先につぶれる。
そのバーは、
常連ばかりで、
潰れた客は
起きるまで寝かせておくのが
当たり前らしい。
二回とも、
俺は先に帰った。
「私がつぶれたら、
先に帰っていいから」
メロは、
そう言っていた。
それが、
優しさなのか、
どうでもいいのか、
俺にはまだ分からない。
二人目。
配信者に貢いでいる子、りん。
やり取りを続けるうちに、
彼女が名古屋にいることが分かった。
実家ではない。
名古屋にいるのは、
彼女が応援している配信者が
名古屋を拠点に活動しているからだった。
りんは、
自分の職場の寮に住んでいる。
職場は、
風俗。
一週間、
毎日十二時間働いて、
一日だけ休み。
そのたった一日の休みに、
配信者の家に行く。
家事をしたり、
身の回りの世話をしたり、
ただ一緒に過ごしたり。
半同棲のような関係だと、
彼女は言った。
直接的な関係がないまま、
大金を投げ銭する人は、
やはり少ない。
こういう距離感の関係を
持っているケースも、
珍しくないらしい。
どの業界にも、
知りたくない話はある。
また一つ、
知らなくてよかったことを
知ってしまった気がした。
三人目。
大学生のみき。
一度だけ、
店に来てくれた。
最低料金で、
一時間。
それでも、
正直、
嬉しかった。
でも、
彼女は
周りの席と比べてしまった。
シャンパンの音。
笑い声。
盛り上がるフロア。
自分の席だけが、
静かだった。
みきは、
だんだん
俯くようになって、
十分に一度、
「ごめんなさい」と言った。
謝る理由なんて、
どこにもないのに。
俺は、
楽しませてあげられなかった。
目標のことばかり考えて、
前のめりになりすぎていた。
その重さが、
みきには
つらかったんだと思う。
帰り際、
彼女は言った。
「今度は、
お金、
頑張って貯めてきます」
でも、
本心で言っている気は、
しなかった。
それどころか、
きっと、
マイナスな印象を
与えてしまった。
数字は、
少しだけ動いた。
でも、
何一つ、
手応えはなかった。
この一週間で、
俺が得たものは、
売上じゃない。
――失望の仕方を、
三通り、
知っただけだった。
それでも、
時間は進む。
八月は、
まだ、
終わらない。
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