エピソード10 目標
歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。
そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと
そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。
それから、
みくから連絡が来ることはなかった。
既読もつかず、
最初から、
何もなかったみたいに。
相変わらず、
初回は全然取れない。
ついても、
流れる。
名刺はテーブルに置かれたまま、
名前も、
残らない。
成長している実感は、
正直、なかった。
掃除は手際よくなった。
テーブルマナーも、
もう注意されない。
でも、
売上につながる何かは、
何一つ、
掴めていなかった。
一ヶ月と、
少しが経った。
初めての給料日が来る。
出勤は、
二日に一回。
出勤日数は、
十八日。
給料は、
十万円弱だった。
明細を見て、
一つ一つ、
確認する。
毎回のヘアメ代。
指名での来店は、
一回。
引かれるものが引かれて、
残った数字。
理不尽ではない。
むしろ、
今の実力に見合った、
納得できる金額だった。
だからこそ、
きつい。
これが、
今の俺の価値。
でも、
正直に言えば、
これが続くなら、
生活はできない。
食費。
交通費。
家を助ける金。
現実が、
一気に近づく。
今は、
八月。
俺の誕生日は、
十二月。
あと、
四ヶ月。
そこまでに、
何も変わらなければ。
結果が、
一つも出なければ。
――諦めようか。
そんな考えが、
頭をよぎるようになった。
今、
可能性があると言えるのは、
三人だけ。
一人目は、
担当がいるが、
不満だらけの女性。
話を聞いている限り、
気持ちは、
もう揺れている。
ただ、
踏み切れない。
二人目は、
配信者が好きで、
投げ銭に
大金を使っている子。
推しに不満はある。
でも、
やめる気は、
まだない。
俺は、
その外側にいる。
三人目は、
大学生。
一度だけ、
ご飯に行った。
ホストクラブには、
初回で
数回行ったことがあるだけ。
知識も、
経験も浅い。
でも、
決定打がない。
誰も、
今すぐ
客になるわけじゃない。
ただ、
愚痴を聞くだけ。
一円にも、
なっていない。
全員、
「可能性」でしかない。
今、
「お店においでよ」と言えば、
すぐに
いなくなってしまいそうだった。
スマホを見て、
また閉じる。
送る言葉を考えて、
消す。
今はまだ、
踏み出すには、
足りない。
でも、
立ち止まるには、
時間がない。
八月から、
十二月まで。
残り、
四ヶ月。
ここで何も起こせなければ、
俺は、
ホストを辞める。
そう、
心の中で
決めていた。
逃げじゃない。
現実的な、
期限だ。
この街で、
生き残るか。
それとも、
身を引くか。
その答えは、
もう、
数字でしか
出ない。
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