「アメリカ第一主義の序章」に過ぎないベネズエラ攻撃について
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は26年1月3日にベネズエラの首都カラカスを爆撃し、特殊部隊によってマドゥロ大統領が拘束され5日にはアメリカで裁判がかけられるという事件について個人的な意見を述べていこうと思います。
質問者:
今回の一件は衝撃的でしたよね……。
ネットでは「国際法違反だ」と言う方と「トランプ大統領よくやった」とおっしゃる方とに大きく2分されていますけどこれは一体どういうことなんでしょうか……。
筆者:
まず、麻薬密輸問題や犯罪グループを指揮していたというアメリカ国家安全保障上の問題という事でアメリカの国内法を国外に強制的に適用させることによって「逮捕」という事に至っているようです。
ここでベネズエラは独裁制によって圧政を敷いて人口が流出しているなどの問題がありますが、政治体制について問題にしないのは「内政干渉」と言う指摘をなるべくさせないためだと思われます。
しかし、現状の理論においても国連憲章2条4項に違反し政治的独立・統治機能を侵害しているのではないか? と言う話もあります。
質問者:
中国やロシア同様、国際法は関係ないという事なのでしょうか……。
筆者:
国連は「5大国に都合のいいシステム」であり、形だけの存在だということだと思いますよ。
国際法は体裁を整えるために存在しているだけだと思います。
アメリカが中東で、中国がウイグルや内モンゴルで、ロシア(ソ連)が旧ソ連関係諸国へ戦後好き勝手やり続けてきましたが何ら制裁をかけられなかったのが現実です。
アメリカが外国の指導者を拘束したのは今回が初めてではなく、1989年にはパナマの当時の最高司令官だったマヌエル・ノリエガ氏を麻薬密輸の罪などで拘束し懲役30年を下しました(のちに刑期短縮され、フランスに移送されそこでも有罪判決)。
一方で敗戦国の日本はいつ旧敵国条項を発動されてもおかしくない状況だという事が中国の言動からもより明白になっています。
日本は悲しいことに「虚無」ともいえる国連に対しても「へいこら」しなければ旧敵国条項でやられてしまうという事も意味しています。
質問者:
日本の立場は厳しいですね……。
一方でトランプさんを称賛している側はどういう理論なんでしょうか?
筆者:
そもそも、マドゥロ大統領は一昨年の選挙においても「不正選挙疑惑」が濃厚であるために「国家元首だから逮捕されない」と言う理論は乏しいのです。
その上でベネズエラ国民にとって非常に良くない独裁体制を築いてきたことから、ベネズエラからの難民・移民は790万人近く(因みに元の人口は3000万人ほどだった)になり、国民の貧困率は96%、30%以上が栄養不足になっているとのことです。
そのために国外に脱出したベネズエラ国民にとってはマドゥロ大統領が強制的に退場したことは喜ばしいことであり、正当性が非常に高いように見えるからです。
質問者:
なるほど……国際法を重視しているのか、ベネズエラ国民の感情を重視しているかによって意見が大きく異なるんですね……。
アメリカはどういう意図をもって賛否が分かれそうな強硬手段に及んだのでしょうか?
成功したからまだ良かったものの、失敗したら一大事だったような……。
筆者:
一般的には石油利権が関わっているのではないか? と言われています。
確かにベネズエラは産出量は極少量ですが埋蔵量は世界一とも言われています。
しかしアメリカはシェル革命によって石油産出が世界一なので直接的に石油が欲しいわけではないと思います。
どちらかと言うと中国などが石油を安く仕入れることを阻止したいのでしょう。
「アメリカの裏庭」とも呼ばれた中南米に中国が手を出したことが耐えられないのが裏側の理由だと思います。
実はベネズエラはアメリカへはコカインが送られているという話で、一番問題のフェンタニルはコロンビアの方が多いので、その隣のコロンビアにも今後軍事介入があるのではないかと言われています。
質問者:
筆者:
ただ、コロンビアは「与党にも野党にも薬物マフィアが関わっている」というより悲惨な状況のようでフェンタニルが理由であれば「完全殲滅」すらあり得ると思います。
こうなるとマドゥロ氏1人が消えれば問題がほとんど無くなりそうなベネズエラはまだ生易しいのではないか? とすら感じます。
また、特に政治体制について問題が薄そうなグリーンランドにも「地政学的観点」と言う理由からアメリカが「軍事的脅し」を仕掛けてきているために「この限りではない」ようにも思えます。
2026年はより「戦争の時代」を象徴させる状況になるのではないかと思ってしまいます。
質問者:
グリーンランドもアメリカと中国が主導権争いをしているみたいですから、争奪戦になるという事ですか……。
筆者:
米中は現状、表面上は何も起こっていませんが、水面下では壮絶な駆け引きを行っていると思いますね。
◇中国はこの状況をどう見ているのか?
質問者:
このベネズエラの一件を受けて中国の台湾への介入が非常に注目されています。
これについても「中国が台湾に攻め込む派」と「攻め込まない派」で大きく2分されているんですけど、筆者さんはどう思われますか?
筆者:
「中国が台湾に攻め込まない派」の理論としてはロシアやイラン製の防空識別圏を突破したことや、台湾が海であることからより難しいといった論調だと思います。
習主席の心中次第なので何とも言えないのですが、僕の見方としては「十分あり得る」と思っています。
大義名分があれば国際法完全無視が有効であることが証明されつつありますし、台湾は国連で国家承認されていないですからね。
ただ、僕が「台湾へ攻め込む派」と少し違うのが「尖閣占領」がそれより先に来るのではないか? と言う点です。
特に日本は部隊を尖閣に配置していない(武器を持たない海上保安庁が対応している)ので易々と掠め取ることは可能ですからね。
質問者:
でも、沖縄には米軍もいますから簡単には来れないのではないでしょうか?
筆者:
ただ、トランプ氏が習主席と「ディール」をしてグリーンランドやコロンビアと引き換えに「沖縄を見過ごす事を容認」といった可能性も十分にあり得ると思います。
トランプ氏として見たら遠い尖閣や台湾より、近いコロンビアやグリーンランドの方大事なのは当たり前ですからね。
そして日本が事実上のアメリカへ従属関係にあることから、ベネズエラの件について支持せざるを得ない状況になっています。
「力による現状変更」を事実上容認するわけですから、その因果応報じゃないですけど尖閣が占領されても文句は言いにくいわけです。
ともあれ、日本が現状「台湾有事しか」考えていない現状は非常に危険とも言えると思います。
質問者:
確かに、トランプさんの性格的にディールで沖縄を売り渡すのはあり得そうな気がしてきました……。
筆者:
それは最悪のシナリオだとしても、
アメリカもそれを日本にチラつかせることで、関税交渉の時に要求してきた「80兆円」以上の「みかじめ料」を請求してくる可能性は高そうです。そしてその代償を日本国民が背負うというオチです。
中国は人口減少社会に突入したので人口アドバンテージが近い将来無くなっていきます。そのために人口アドバンテージがあるうちに何とかしたいと思っているはずです。
また、現状はレアアースをほとんど独占しているわけですが、今後は分かりません。
関税引き上げすらも拒むことができた「レアアース脅迫」が効くうちに何か仕掛けてくる可能性は十分あり得ます。
質問者:
いずれにせよ「新しいフェーズ」に入ってしまった印象を受けますね……。
筆者:
いわゆる「吉田ドクトリン」と呼ばれる安全保障をアメリカに委ね、経済重視の戦後日本体制は、経済が世界的に相対的地位が大幅に低下したことから今、大きな岐路に立っていると思います。
戦後日本政治の「代償」がなるべく少なくなることを心の底から願いますね。




