表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『気ままなポーション生活〜異世界転生したら万能薬スキル持ちでした〜』  作者: ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

第44話 ティナの事情

第44話 ティナの事情


ティナが眠りについた後、

ゆうとリュシアは少し離れたところで焚火を見つめていた。


「……ゆう。彼女、ただの迷子ではありませんね」


リュシアが静かに言う。


「まあ……追われてるって言ってたしな」


「しかも“一族に”です」


ゆうはその言葉を思い返す。


ティナの瞳には、怯えではなく――

諦めに近い影があった。


(あれは……長い時間、追い詰められてきた目だ)


焚火の音がぱちりと弾けた。


リュシアは腕を組んで続ける。


「森狼族は、獣人の中でも特に誇りが高い種族です。

そんな彼らが“追う”のは……ただの勝手な逃走者ではないはず」


「じゃあ……ティナが特別ってことか?」


「ええ。理由はまだ話してくれませんが」


リュシアはゆうを見た。


「ゆう。深入りしてはいけないと思いますか?」


ゆうは少し考え――首を振った。


「……いや。ティナを置いて逃げるのは無理だな」


「やはり、そう言うと思いました」


リュシアはわずかに微笑んだ。

その笑顔は、少し誇らしげだった。



しばらくして、ティナが目を覚ました。


「……ここは……?」


「聖域。お前は今、安全だよ」

ゆうがそっと答える。


ティナは体を起こそうとして、

すぐに顔をしかめてベッドに倒れ込んだ。


「まだ休め。無理すんな」


「……うん」


ティナは視線をゆうとリュシアに向け、

小さな声で言った。


「さっきは……助けてくれて、ありがとう」


「礼はいらねぇよ。

困ってるやつを見て放っとくほど、俺は冷たくない」


その言葉にティナの耳がくいっと動いた。


「……変なの。

人間は、獣人なんて最初に疑うのに」


「リュシアは人間じゃないし、俺も……まあ“変”らしいし」


「そういう意味じゃない!」


急に反応したティナに、ゆうとリュシアは思わず笑う。


ティナは少し恥ずかしそうに視線をそらした。


「……本当に、助けるつもり、なの?」


「当たり前だって言っただろ」


「でも……巻き込んじゃう……」


「巻き込まれてから考える。

まずはお前を治すのが先だ」


ティナは唇を噛みしめたまま、

ゆうを強く見つめる。


「なんで……そんな風に言えるの?」


ゆうは答えられず、

ただ静かに彼女の目を見返した。


沈黙が落ちる。


するとティナはため息をひとつつき、

ゆっくりと話し始めた。


「……森狼族シルヴァウルフは、

昔から“群れ”を大事にする種族」


「群れ?」


「うん。

家族っていうより、“群れで一つの生き方”って感じ」


ゆうは黙って聞く。


ティナは少しだけ目を伏せて続けた。


「私は……群れから“外れた”。

理由は……言えない。

言ったら……あなたたちまで危なくなる」


その声は、震えているわけではなかった。


ただ、何か重い決意を抱えているように聞こえた。


リュシアが優しく口を開く。


「ティナ。すべて話さなくていいですよ。

話したくなった時で」


ティナの瞳が揺れた。


「……どうして、そんなに優しいの?」


「ゆうが優しいから、です」


「わ、私は……!」


リュシアは微笑んだまま、首を振った。


「あなたを責めるつもりはありません。

ただ、ゆうなら――必ず守ります」


ティナは言葉を失った。


ゆうも照れくさそうに肩をすくめる。


「まあ……俺は、守りたいって思ったから助けただけだよ」


ティナは静かに目を閉じる。


「……逃げないんだね」


「逃げても意味ねぇしな」


短い会話だったが、

それだけでティナの肩からほんの少しだけ、力が抜けていくのが分かった。



その時、クロが森の奥へ向かって低く唸った。


リュシアが即座に立ち上がる。


「ゆう……気配が近づいてきます」


「獣人か?」


「おそらく同族。しかも……複数です」


ティナの顔色が一瞬で変わった。


「……やっぱり、追ってきた……!」


ゆうはティナの肩に手を置く。


「ティナ。ここは聖域だ。簡単には入れない」


ティナは震える声で問う。


「……本当に、守れるの?」


ゆうは迷わず答えた。


「守るよ。絶対に」


ティナはゆっくりと頷いた。


ゆうの言葉を――信じたように。


そして、聖域に緊張が走る。


森狼族が近づいている。


ゆうの新たな力が、

初めて試される時だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ