第41話 金色に揺れる朝
第41話 金色に揺れる朝
朝の光が世界樹を照らし、葉の露がきらりと光った。
ゆうが目を覚ますと、隣でリュシアが静かに眠っていた。
胸元に流れた銀髪がくすぐったい。
「……おはよう、リュシア」
「ん……ゆう……おはようございます……」
彼女は少し照れながら起き上がる。
昨夜一緒に寄り添って眠ったせいか、距離が近い。
ゆうは伸びをしながら、ふとリュシアの手の甲に残っていた小さな傷に気づいた。
「昨日の傷、まだ残ってるな」
「大したことありません。放っておけば――」
「いや、治そう。すぐ済むし」
ゆうは棚から空の小瓶を取り、水を少し入れる。
これはもういつもの作業だった。
だが――この日は違った。
瓶に手を添えた瞬間、
水がふわりと光り始めた。
「……ん?」
ゆうは手を止めた。
光はすぐに強くなり、
温かい金色が瓶全体に広がっていく。
リュシアは目を見開いた。
「ゆ、ゆう……これ……」
「いや、俺もわからん。なんで光ってんだ……?」
水は完全に金色に染まり、揺らめく光の粒が浮かんでいた。
どう見てもただの水ではない。
ゆうはとりあえず、一滴だけリュシアの手の甲に落としてみる。
ぽうっ。
柔らかい光が広がり、
傷は跡形もなく消えた。
リュシアはしばらく黙ったまま、手の甲を見つめていた。
「……治りました。完全に」
「……マジか。すげぇなこれ」
ゆう自身、一番驚いていた。
リュシアは瓶を拾い上げ、揺れる金色をじっと見つめる。
「ゆう。昨日まで、こんな色は……」
「してなかったな。赤っぽいだけだった」
「何が……変わったのでしょう」
「さあ……わかんねぇけど」
ふたりとも考えても答えは出なかったが、
ただひとつ言えるのは――
この金色の薬は、間違いなく“今までとは違う” ということだけだった。
ゆうは肩をすくめる。
「ま、治ったならいいか。便利になるのは悪くないし」
リュシアはゆうを見つめ、少しだけ表情を和らげた。
「……はい。とても助かります。
それに……ゆうが作ってくれたものですから」
「ん? まあ……リュシアの傷、放っておけないしな」
その一言で、リュシアの耳が赤く染まる。
「……っ、その……そういう言い方は……」
「何かまずかった?」
「い、いえっ……むしろ……嬉しいです……」
彼女は小さな声でそう言った。
ほんの少し、朝の空気が甘くなる。
だがそのとき――
クロが突然、森の奥へ向かって低く唸った。
「どうした、クロ?」
リュシアもすぐに立ち上がる。
「……ゆう。誰かいます。
人ではない……別の気配」
「別の?」
「たぶん……獣人族です」
ゆうは金色の瓶を腰に下げ、深呼吸をした。
「ふむ……行ってみるか。危険かもしれないが」
リュシアは迷いなくゆうの隣に立つ。
「大丈夫です。私がいます」
ゆうは思わず笑った。
「頼もしいな、相棒」
「……っ、ば、ばか……いきなりそんな呼び方……」
顔を赤くしながらも、隣を離れようとしない。
世界樹が風に揺れ、金色の朝光がふたりを照らした。
こうして――
ゆうの“知らない能力”と、
新たな出会いの朝が始まった。




