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『気ままなポーション生活〜異世界転生したら万能薬スキル持ちでした〜』  作者: ゆう


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第31話 はじめての共同生活

ひとりの暮らしに、もうひとつの気配が加わる。

不器用同士の距離は、静かに、少しずつ近づいていく。

第31話 はじめての共同生活


朝の光が、聖域をやわらかく包んでいた。


ゆうは小さくあくびをしながら、湧き水を汲んで戻ってくる。

焚火の近くでは、リュシアがすでに起きており、静かに周囲を見回していた。


「おはよう。夜、ちゃんと眠れたか?」


「……ええ、少しだけですが」


「それなら上出来だな。初日でぐっすりは、さすがに難しいだろ」


そう言って、ゆうは軽く笑う。


リュシアはその笑みに、少しだけ戸惑ったような視線を向けた。


「……あなたは、朝から随分と軽いのですね」


「まあな。朝が重いと一日しんどいしさ。気楽にいこうぜ、気楽に」


「……気楽すぎです」


「はは、褒め言葉として受け取っとくよ」


そう言って火を起こし、昨日の残りと果物を並べ始める。


「簡単だけど、朝飯だ。遠慮はなしな」


差し出すと、リュシアは一瞬ためらいながらも受け取った。


「……遠慮という概念は、あなたの中にありますか?」


「あるよ、あるある。ただちょっと使う場面が減っただけで」


「減らない方がよろしいかと」


「善処します」


軽く肩をすくめると、リュシアは小さく息を吐いた。


その様子に、ゆうは少しだけ安心する。


(昨日より、表情がやわらいでるな)


朝食を終え、ゆうは立ち上がって周囲を見回した。


「さて、今日はやることがいくつかあるんだよな」


「……何をするのですか」


「まずは、ちゃんとした寝床づくりだな。ずっと地面ってのも、さすがに気の毒だろ」


「気の毒、ですか」


「住むって言った以上、最低限は快適にしたいじゃん?」


軽く笑ってみせる。


「それとも、石の上が趣味とか?」


「……そんな趣味はありません」


「だよな」


丸太を運ぼうとすると、リュシアが少しだけ視線をさまよわせた。


「……手伝った方がよろしいですか」


「お、頼もしいな。じゃあ、この細い枝を集めてもらえると助かる」


「わかりました」


静かに頷き、森の方へ歩いていく。


クロが後を追いかけようとしたが、ゆうは手で制した。


「大丈夫だって。ほら、ああ見えて案外しっかりしてる」


クロは不満そうに「フフ」と鼻を鳴らしたが、その場に戻る。


昼前には、簡単な寝床の形が見えてきた。

木の枝と葉で土台を整え、その上に柔らかい草を敷く。


「……思っていたより、悪くありませんね」


「だろ? ちゃんと手入れすれば、もう少しマシになる」


「あなた……意外と几帳面です」


「社会で生きてくには、それくらい必要なんだよ」


少し笑う。


「まあ、人間関係だけは今ひとつだったけどな」


「……それは見ればわかります」


「ひどいなおい」


言いながらも、くつくつと笑った。


その笑い声に、リュシアは一瞬驚いたような顔をしてから、そっと視線を逸らす。


だが、その口元はほんのわずかに緩んでいた。


午後、聖庭水を持って世界樹へ向かうと、リュシアも自然と隣に立つ。


「今日も、与えるのですね」


「ああ。毎日少しずつが基本。過保護もよくないしな」


瓶を傾け、淡い黄色の液体を土へ注ぐ。


「……本当に、大切にしているのですね」


「まあ、こいつがこの森の心臓みたいなもんだし」


「……あなたの、心臓でも?」


「そこは深読みしすぎだろ、はは」


そう言って笑うと、リュシアはじとっとした目を向けた。


「……笑い方が軽すぎです」


「緊張して生きるの、性に合わなくてさ」


一瞬の沈黙のあと、彼女はぽつりと呟く。


「……けれど、そのくらいの方が……安心します」


「お、今の素直じゃないか?」


「言っていません!」


顔をぷいっと逸らす。


だが、その耳はほんのり赤い。


聖域に、静かな時間が流れる。

ふたりと一匹の距離が、ゆっくりと縮んでいく。


それは、とても自然で――

どこか心地よい、共同生活のはじまりだった。

聖域での共同生活が本格的に始まった。

ぎこちなさの中に、ほんのわずかな安心が芽生えている。


次回、第32話

「リュシアの小さな変化」


彼女の態度が、さらに少しだけ変わり始める――。

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