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『気ままなポーション生活〜異世界転生したら万能薬スキル持ちでした〜』  作者: ゆう


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第30話 この森に住むということ

“ここに住む”という選択。

それは静かで、しかし大きな一歩だった。


第30話 この森に住むということ


朝の靄がゆっくりと晴れていく。


聖域に差し込む光はやわらかく、

世界樹の葉についた露が静かにきらめいていた。


ゆうは焚火の跡を整えながら、ちらりとリュシアの方を見る。


彼女は少し離れた場所で、森の外れを見つめていた。

まるでここに留まるか、去るかを量っているように。


「……なあ、リュシア」


声をかけると、彼女はゆっくり振り返った。


「なんですか」


「ここに住むつもりは……あるのか?」


リュシアは少しだけ目を伏せる。


「……ずいぶん率直ですね」


「変に遠回しにするのは、あまり得意じゃなくてな」


その言葉は、柔らかかった。


「エルフにとって“住処”は簡単に決めるものではありません」


「そうだろうな」


ゆうは手を止め、静かに続ける。


「けど、ここは今のところ誰にも荒らされない。

少なくとも、無理に縛るつもりはないよ」


沈黙が流れる。


風が葉を揺らす音だけが、静かに響いた。


「……私は、あの森を追われるように出ました」


リュシアの声は小さい。


「信じていた場所に裏切られて……だから、新しい居場所を選ぶのが怖いのです」


「無理もないな」


ゆうは頷いた。


「でも……ここは違うと思ってる」


世界樹の方へ視線を向ける。


「誰の所有物でもない。ただ、ここにある場所だ」


リュシアは、その言葉をじっと聞いていた。


「……それでも、信じろと?」


「信じなくてもいい。

ただ、自分で決めてほしいだけだ」


ゆっくりと、彼女の視線が世界樹へと移る。


「この木は、あなたが育てているのですね」


「そうだ」


「誰にも渡さないと言いました」


「ああ。今のところ、そのつもりだよ」


静かな間。


そして、リュシアは小さく息を吸った。


「……私は、ここに住みます」


迷いはあったが、声は確かだった。


「この森は……落ち着きます。

それに……あなたも」


最後の言葉は、ほとんど聞こえないほど小さかった。


「……今、何か言ったか?」


「何でもありません!」


少し顔を背ける。


ゆうは小さく笑った。


「そうか。じゃあ、これからは住人だな」


「……住人、ですか」


「そういうことになるな」


「変な言い方ですね」


「悪い意味じゃないよ。歓迎してる」


リュシアは少し戸惑いながらも、わずかに頷いた。


「……感謝はしません」


「そこは相変わらずだな」


その言葉にも、もう棘はなかった。



ゆうは聖域の一角を指差す。


「日当たりも悪くないし、そこを使っていい。

寝る場所、少しずつ整えていこう」


「……ただの地面ですが」


「最初はそんなものさ。必要ならちゃんと考える」


「あなたは、本当に気負いませんね」


「肩に力を入れて生きるのは、昔から苦手でな」


リュシアは小さく息を吐く。


「……呆れます」


だが、その声はどこか安心しているようだった。


訪問者ではなく、住人としての気配。

それが静かに、この聖域に溶け込み始めていた。



リュシアは居場所を選び、ゆうはそれを受け入れた。

少しずつ、距離は縮まっていく。


次回、第31話

「はじめての共同生活」


静かな暮らしが、本当に始まる。

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