47. 勝利記念式典、劇震す
都市龍オーゼンと46精霊の襲来という未曾有の危機が去ってから港湾都市ハマは復旧に急いでいた。そして、一週間経った夜。勝利の記念式典が王宮の謁見室で開かれた。
襲撃で王宮は半壊しているが、謁見室はかろうじて体裁を整えており、生き残った兵士と王宮の面々、市井の人々でごった返していた。豪奢な料理とはいかないまでも混乱の中、人々を労うための温かい料理が並ぶ。
ウィリアム王子が壇上に立ち、周囲を睥睨する。
荒れた謁見室にそぐわないきらびやかな礼服。
それはなんらかの威を表そうとしているようだった。
響く声で、ウィリアム王子が聴衆に呼びかけ始める
「まさに国家の危機だった。皆の力を合わせ脅威を撃退した。この功績は永遠に称えられるだろう。都市龍オーゼンを倒したシバ将軍、46精霊を退けた宰相ミツバ。特に両名の功績は多大である」
「多くの兵士たちも命を落とした…だが、一丸となって、脅威に立ち向かった。犠牲になった勇敢な兵たちに哀悼を捧げたい」
目を伏せ、数秒の黙祷にささげ、聴衆も静まり返った。
「だが、我々の勝利した!生き残った一人一人の功績を高く讃えたい」
激闘の跡を残す謁見室に、人々の拍手が鳴り響く。
「また、勇気ある民にも助けられた。放棄された砲弾を調達してくれたコースカ商会のリュード・コースカならびにヨーコ・コースカ、元凶の魔術師ベツリの拘束に協力してくれたヴェルニー・ショプラ」
リュードは満足そうに笑みをうかべ、ヴェルニーは名前が呼ばれたことに反応してキョロキョロしている。
ヨーコは自分の名前が挙げられて面映ゆい思いをしていたが、同時に、一番の功労者であるシンジローの名前が挙げられないことに違和感を抱き、隣りに立つ進次郎を見上げた。皆を祝うように笑顔で拍手を続けている。
「全ての臣に、民に感謝したい……」
王子は手を上げて聴衆の拍手を受け止める。
手を下げたウィリアム王子が突然、低い声でトーンを変えた。
「だが、ここで一つ残念なことを知らせなければならない」
記念式典に似つかわしくない重い口調に切り替わったことに、ざわつく謁見室の人々。
王子は再び手を上げ、前に振り下ろして突き出した。
「相談役シンジロー!国家簒奪の意志ありとして、その身柄を拘束する!」
王子の声を合図に、シンジローの背後に二人の兵士が近づく。
「ちょっっ!どういうこと?」
ヨーコが動揺して身構える。ヴェルニーはいつの間にかいない。
振り返って進次郎を見るが、いつもと変わらない表情。それどころかいつもより余裕があるようにすら見えた。
ウィリアム王子が告発を続ける。
「此度の戦いに助力したシンジロー殿に疑いがかけられることに疑念を持つものもいよう。ここに証拠を見せたいと思う」
そこに運び込まれたのは天籟の語り手
襲撃の際は王宮に下げられていて無事だったのだ。
「答えろ!天籟の語り手!」
スピーカーは誰かがマイクで声を入れない限り、音は出ないことをヨーコは知っている。最初は進次郎自身が、王宮の謁見ではマシタが、兵士への鼓舞のときは父、リュード・コースカがマイクを使っていた。
今は声を入れる人間はいないはず。
『我は…天籟の語り手……』
スピーカーの声がした。聞いたことのある下品な声。
『……なーんてな…ガハハ…』
ヤマズだ!この声は、最初に天籟の語り手でハッタリをかました相手、悪徳商人ヤマズのもの。なぜヤマズがここに?なぜスピーカーの秘密を?混乱を整理するまもなく、でっぷり太った悪徳商人ヤマズが後ろから登場し、美麗な王子の横に並び立つ。
『みんな。聞いてくれ。このスピーカーは単に声を伝えるためだけの道具。未来からの預言をもたらすものでない。バカバカしい代物さ』
ヤマズはマイク越しに秘密を暴露する。勝ち誇った表情を浮かべてマイクから手を離す、落ちたマイクは地面にぶつかり、スピーカーが増幅された不快な衝突音を響かせる。
「この商人の言う通り……このスピーカーは預言の魔法具などではない」
ウィリアム王子が攻撃的な笑みを浮かべてシンジローに迫る。
式典の参加者はささやきあう。
「さぁ証拠はそろった!相談役シンジロー!我、ウィリアム・アダムス第一王子はアダムス王家の名に懸けて、貴殿をここに糾弾する!」
ウィリアム王子の美しい目がその気迫で歪み、進次郎を見つめている。
輝かしい勝利記念式典の場は、急遽、進次郎の断罪の場へと姿を変えた。
いよいよ最終章!進次郎の決断をお見逃しなく!




