46. おぼろげに浮かんだ46という数字は消え去って
(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)
都市龍オーゼンは退けられ、46精霊は消滅したことで、ハマの危機は去った。
広場は、今一度歓喜に包まれた。生き残った兵たちは抱き合い、飛び跳ね、勝利の喜びを分かち合っている。顔には安堵と歓喜の涙が溢れ、これまで張り詰めていた緊張が一気に解放されたかのように、広場全体が熱狂の渦と化した。
誰からともなく「アダムス王家万歳!」「シンジロー!」「シバ将軍!」「ミツバ宰相!」と英雄の名が上がり、いつもは冷静な宰相ミツバが涙すら流している。
ウィリアム王子が宰相ミツバに手を差し伸べる。
「ミツバ……礼を言う。お前はこのハマを救ってくれた」
「いえ、全てはシンジロー殿のおかげ。このミツバ、不明を恥じます。」
宰相ミツバが感極まった涙を拭いながら、シンジローに頭を下げる。
「シンジロー殿、私からも謝罪させてほしい。私も貴殿のことを見誤っていた。あなたこそこの国の人々の光です。数々の無礼な物言い許していただきたい」
宰相ミツバとシバ将軍が熱っぽく進次郎を見つめる。
「いえ、すべては皆様のお力です。」
あくまで謙虚な態度を崩さない進次郎。
ウィリアム王子も進次郎に感謝の言葉をかける。
「そうだな……シンジロー殿を見出した私の目は狂っていなかったようだ……あらためて礼を言う…シンジロー殿」
ただ、その言葉は、どこかおざなりで冷たく、広場の歓喜の熱には見合ってないものだった。
この国は絶対的な危機を乗り越えた。民は歓喜に包まれている。誰もが喜ぶべき栄光の瞬間だ。だが、ウィリアム王子だけは歓声をどこか遠い声として聞いているかのようだった。民の歓声を背に、ウィリアム王子は眉間に皺を寄せながら、自らの剣の柄を指で小刻みに叩き続けていた。
★☆
「なんだこりぁ……」
悪徳商人ヤマズが港湾都市ハマについて見た光景は信じられないものだった。美麗を誇るハマの王宮の広場が破壊し尽くされているのだ。かろうじて王宮は残っているが、完膚なきまでの破壊ぶりで、なぜこうなったか想像もつかない。
ヤマズが呆然と立っていると、後ろから親しげな声がする。
「おう。ヤマズじゃないか」
声をかけたのはコースカ商会のリュード・コースカ。商人として旧知の仲だ。
「リュード。久しぶりだな。なにがあったんだこれは?」
「襲撃だよ。何があったかは正確にはわからんが……まず都市龍オーゼンが来て、兵たちが撃退した。その後、さらに魔法のような争いがあったようだ。無茶苦茶だよ。だが、もう落ち着いたようだ」
「都市龍オーゼンが?」
ヤマズはその都市龍オーゼンを擁する工業国家サキから逃げ出してきた。
「工業都市サキのオーギ大臣が天籟の語り手とシンジロー殿の引き渡しを要求してな。王家が引き渡しを拒否した。結果がこの有り様さ」
自分の自白のせいで、サキは天籟の語り手奪取に乗り出したのだろう。自分の自白がシンジローの苦境を呼んだなら、いい気味だ。奴がくたばってれば、なおいいが……とヤマズは心中でほくそ笑む。
「天籟の語り手なんて、ただ声を伝えるだけなのになぁ?こんな争いの火種にするなんて馬鹿げているよ」
やりきれないといった口調でリュードはこぼす。
「何だと?!」
旧知からもたらされた突然の秘密の開示にヤマズは耳を疑った。未来の預言をもたらす魔法具と信じたからこそ、付け狙ってきたというのに。
「それは本当か?」
リュードに食って掛かる。
「あぁ本当だよ。この戦いが始まる前にシンジローから頼まれて、私も使ったから間違いないさ」
そう言って、懐から無線マイクを取り出して見せる。白い小さな箱のような物珍しい道具。
「これでな、声を入れると遠くからでも声が伝えられる。面白いぞ。未来の預言がわかるわけではないが、便利なものだぞ」
リュードは軽い口調でヤマズに説明する。そんなことも知らなかったのか?という風情で。
「そうか…そうだったのか……」
ヤマズは凶相を浮かべる。
「ところで、シンジローとやらはまだ生きているのか?」
「あぁ兵士に犠牲はでたものの、娘とシンジロー含めて無事だと報せを受け取った」
進次郎はもとより、娘の安否に心底ホッとしたような表情を浮かべている。
「そうか……ありがとうよ。お前からもらった情報のなかで一番ありがたかったぜ」
「お、おう?そうか?役に立ったなら良かったが」
ヤマズは邪悪な笑みを浮かべて王宮へと向かった。
と言うわけで第5章「おぼろげに浮かんできた46と言う数字」編
第46話で完結です!
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