43.宰相ミツバ、奇策・五行相剋
(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)
「やれやれ……隣国のオーギ大臣が言っていたことは本当だったのですね……」
常識を超えた出来事が次々と起き、動転し続けていた宰相ミツバの声は落ち着いた。いろいろなことがおきすぎて吹っ切れてきたようだ。
「オーギ大臣が反魔法と言っていた力だな……?」
隣国からの使者が気にしていたのは、魔法を無効化する力であることをウィリアム王子は思い出す。
「そうです。ただ、ヨーコ殿の話を聞くと単なる反魔法や契約無効の力では無いようです」
「どういうことだ?」
ウィリアム王子が問う。
「今、この場の空間がそうですが……この空間は契約無効とは関係ないでしょう。シンジロー殿が言った『大丈夫』を実現するために、何かの力で現実を改変しているようです。しかも、それを自身に使えない……という点も興味深い。おそらく他人の思いを触媒にして、因果や論理を書き換える能力なのではないか……と推察します。その結果として契約を消したり、書き換えたりできる」
「まるで万能の力だな」
シバ将軍が呆れて答える。
「いえ、万能ではないのでしょう。万能なら精霊を一気に消し去ることもできるはずです」
ミツバは冷静さを取り戻しつつある。
「私もこの力がどういう力かわかりません……ただ、誰かが苦境に陥っているとき、本人の力ではどうにもならない理不尽な状況を、私が応援したいと願ったときに発動するようです」
と進次郎。
「なるほど。都市龍オーゼンの時も絶望的な状況だったな」
シバ将軍が金色の目をつぶり、かぶりをふって苦笑いする。
「なるほど……今、絶望的な状況であるから、二つの条件のうち一つは満たせていますね……
あと一つの条件は、誰かがこの全精霊を倒そう思い、立ち向かい、シンジロー殿が応援したいと思えること。そうすればシンジロー殿の力が発揮できる可能性がある」
そこまでの策に思い至ったミツバは白い光の向こうの荒れ狂う破壊の様子を見て、引きつった笑みを浮かべる。吹きすさぶ嵐を安全な石造りの砦から眺めているような心持ちだ。
しかも嵐より何十倍もの威力の破壊の暴風がそこにはある。
「この状況で……?」
引きつった笑みのまま、ミツバはこぼす。今、皆が生きているのはちょっとした幸運にすぎない。
「楽観的に行きましょう。今、我々に必要なのは発想です」
あくまで前向きな進次郎。
「発想一つで、切り抜けられるような状況では……」
そう冷笑めいた返答をしながらも、ミツバの頭脳は宰相として、魔術師として徐々に回転を始めている。
『できっこないってことに挑むのはチャレンジングでいいじゃないですか』
進次郎が、どこか他人事のように言う。
「できっこないことに挑むのは『無謀』というのではないでしょうか……?」
ミツバがそう冷笑気味に返した時、周囲を守る白い幾何学模様の光の一部が、ふわりと宰相ミツバに近づき、彼の眼鏡を包み込む。
「こ…これは…?」
白く光る繭の向こう側で続く、荒れ狂う暴虐。その光景がミツバの眼鏡越しにありありと見えた。
どう見ても絶望的な光景。広場のあらゆるものが震え、壊され、塵となっている。
ミツバはふと気づく。
精霊たちが、塊を形成していることに。精霊と精霊の間に境目があることに。
よく見れば、炎の精霊の力が氷塊を蒸発させているではないか。
「よく見れば……炎の精霊が氷の精霊の力を消している?」
「それが?」
シバ将軍が問う。炎が氷を溶かすのは当然のことだ。
「……精霊の相殺??五行相剋…!?」
宰相ミツバがハッとしたように呟く。
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