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42. 全精霊、王都を蹂躙する

(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

一同をの中心に立つ、進次郎が始まりの『進次郎構文』を厳かに、そしてやさしく口にする。

『大丈夫です。私が君たちを守るということは、君たちは大丈夫だと言うことです』


「何言ってるんだよ!大丈夫なもんか!」

進次郎の言葉にツッコミをいれるマシタ。

それと同時に、全45精霊の無比の力が一気に放たれる。


風精霊が口火を切る。聖旋の主神(スプンタ・ヴァユ)を中心とした九階位の精霊が放つ暴風、広場全体に無数のカマイタチの刃が満ち、地面に転がる都市龍オーゼンの肉体を切り刻む、さらに地面を深く削り取り、レンガの防火壁をなぎ倒す。空気はうなりをあげ、破壊的な衝撃波となって地面の残骸を吹き飛ばす。


さらに水精霊の激流がほとばしる。完全なる健全(ハウルヴァタト)らの力は、天からの豪雨であり、津波となって、あらゆるものを飲み込み、ねじ曲げる高圧の水流となり、風によって舞い上がった瓦礫と混ざり合い、質量を持った破壊の奔流となった。


大地も牙を剥く。土精霊の望ましき統治(フシャスラ・ヴァルヤ)を頂点とする力が、広場を激しく揺さぶり、無数の岩の杭を突き上げる。かと思えば、大地は柔らかい泥のように変形し、さらにはあらゆるものを飲み込む流砂と化し、一部は鉄のように硬い塊となって、千変万化の厄災となった。


氷精霊の攻撃が、敬虔なる献身スプンタ・アールマイティたちがすべてを凍らせる。水流を巨大な氷塊へと変え、鋭い氷の刃や槍を降り注がせた。その暴威は全ての生命を停止させんとする無慈悲な意志だった。


そして、炎精霊の力がすべてを焼き尽くす。最善の天炎(アシャ・ヴァヒシュタ)を筆頭にした炎は、都市龍オーゼンのブレス以上の熱量でレンガをも溶かし、疾風と混ざりあい、何人も逃れられない火炎地獄を作り出す。都市龍オーゼンの切り裂かれた躯は瞬く間に消し炭となった。


5精霊9階位の45精霊の力が同時に放たれたその力は蹂躙の饗宴。

生き残れるものも、形をとどめるものもありえない絶対的な力の暴威だった。


耳をつんざくような轟音、この世の終わりのような光景が出現した。


だが、あるべき轟音は聞こえない。

ただ、無音の白い光の繭の中にいた。


人々を覆うのは、何層にも織りなされた白く光る幾何学模様。


「こ……これは?」


ウィリアム王子が薄目を開けると、自分たちをつつむ白い光の向こうで、精霊たちの力が王宮を蹂躙しているのが見える。この世の終わりのような暴風、うねる大地、逆巻く水流、凄まじい質量の氷塊、氷塊を一瞬で沸騰させ、水蒸気と化す炎熱。聞いたこともないような轟音がしてしかるべきだ。


だが、なにも聞こえない。新雪の野に立っているような完全な静寂。

彼らの耳には、ただ自分たちの息遣いと言葉だけが届く。


王子、シバ将軍、宰相ミツバと兵たち、そして進次郎たち一行はその隔絶された空間に身を寄せ合っていた。


「あぶなかった~でも、なんとかなった~~」


緊張から解き放たれたヨーコは、全身の力が抜け、その場にぺたりとへたり込む。汗で湿った前髪を払い、荒い息をついた。


「これは……?いったい?」


宰相ミツバは、硬い表情で周囲を見回す。わずか数メートル先の空間では精霊の暴虐が渦巻いているのが見える。だが、この白いドームの中では、ただ穏やかな空気が流れている。そのあまりにも非現実的な事態に、宰相ミツバは戸惑いを隠せない。


「これがシンジローのちからニャ!大丈夫だって言ったから大丈夫なのニャ!」


ヴェルニーは、進次郎の後ろで得意げに胸を張る。

その丸い瞳には、誇らしげな光が宿っていた。


「そんな馬鹿な?」


「本当よ。シンジローが言ったことは、本当に現実になる。さっきのシバ将軍の矢も、彼の力が作用したんだと思う」


ヨーコは、へたり込んだまま、静かに説明する。その声には、恐怖ではなく、確信のような響きがあった。


「あれはやはりシンジロー殿の力だったのか……」

都市龍オーゼンを倒した矢の一撃は、この世のものとは思えない不思議な力を宿していた。


「いや、まさかそんな法外な力が……」


ミツバは、頭を振って呻く。


「たしかに滅茶苦茶な力だけど、シンジロー自身には使えないのよ。だからさっきは本当に精霊たちにやられるところだった」

ヨーコの言葉に進次郎は頷く。


「そうですね。私自身には、この力が使えたことはありません……ヨーコのひらめきに救われました」


進次郎は、光のドームの外で破壊が続く世界に目をやった。

彼の能力は、自分を守るのではなく、周囲に集まる人を助けるために発動したのだった。


「私がバジリスクに襲われた時もそうだったけど、同じトラブルにあってるときは、シンジローも一緒に守られるみたいだったから。周りに集まれば平気かなって」

ヨーコの機転が、シンジローを含めたこの場の全員の命を救ったのだった。

白い光に包まれた静かな空間で、彼らは束の間の安堵を得ていた。


「ありがとう。ヨーコ。私だけでなくここの皆を救ってくれた」


進次郎は、心からの感謝を込めて、ヨーコに頭を下げた。


その真っ直ぐな賞賛に照れて、ヨーコは少し視線を外にそらす。

「それはお互い様だけど……これどうするの?ずっと見てるしか無いの?」


音は聞こえないが、今も王宮の広場は徹底的な破壊が繰り広げられている。

その光景を見てヨーコは肩をすくめた。絶望的な状況には変わりがない。


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