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39.おぼろげに浮かんできたんです46という数字が

(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

挿絵(By みてみん)


多大な兵の犠牲を払いながらも、シバ将軍の決死の一撃により、都市龍オーゼンは堕ちた。その巨大な躯は、熱せられた血と肉の匂いをまといながら広場の中央に横たわる。


伝説の龍の躯が広場に横たわる姿は、それ自体現実味のないものだったが、間違いなく、ハマの兵士たちの勝利を示すものだった。


ウィリアム王子と宰相ミツバと共に、王宮から広場に姿を表し、荒れ果てた広場を眺める。生き残った兵士たちは王子に対して姿勢を正そうとするが、負傷者も多く、立つこともままならないものも多い。犠牲になった兵士たちの黒焦げの死体もある。ウィリアム王子は痛ましい顔を見せつつも、兵士たちをねぎらう。

「兵たちよ!よくぞ我が国を守ってくれた。君たちは英雄だ!そのまま楽にしてくれ」


続けて、王子は進次郎へと感謝を手短に述べる。

「シンジロー殿、私の目に狂いはなかった。感謝する。」

ただ、その言葉はどこか昏く、微かなとげがあった。歓喜の渦の前では目立たない微かな棘。


ウィリアム王子は、龍の横で倒れているシバ将軍に駆け寄る。弓を撃つ際に鎧を外したため、簡素なリネンのシャツだけで仰向けに倒れている。胸が呼吸を求めて上下し、疲労は隠しようもないが、引き締まった腹筋に傷は見られない。ただ、彼女の全身は泥と血に汚れ、腕には生々しいやけどと打撲の跡があった。打撲のせいか立ち上がるのもおぼつかない。


「シバ将軍!龍殺し、見事であった!この国は、まさしく将軍のおかげで救われた!」

王子の声は熱烈な称賛をシバ将軍に浴びせる。将軍は仰向けのまま、荒い息を整えながらも、その瞳にはまだ戦場の熱を宿していた。


「ありがたきお言葉……ですが、王子。全ては、シンジロー殿の御力あってこそです」

シバ将軍は、途切れ途切れの息を押し殺すようにして、傍らに立つ進次郎を称えた。


護国の女将軍が発した、一片の偽りもない謝意は、王子の目に再び陰を落とした。


進次郎は、迷わずシバ将軍の傍らに膝を折った。熱された石畳の感触が、熱戦の激しさを伝えてくる。彼は、将軍の汚れた手を優しく取る。


「全ては将軍と兵の力です。その勇猛と献身、感動しました」


進次郎の静かな声が、広場の静寂に響く。

彼の目はまっすぐで、シバ将軍の謝意と同様に、偽りのない敬意に満ちていた。


「貴殿は本心から、他人を支えられるのだな……ありがとう……」


仰向けに横たわるシバ将軍の目から、一筋の涙が伝った。屈強な女将軍が見せた純粋な感謝の涙が、寝せられた広場の石畳に落ちた。


ウィリアム王子は、その光景を無言で見つめていた。握りしめた拳が微かに震えている。その表情に浮かぶ陰りは、進次郎の突然のうめき声で破られた。


「……くっ…」


胸を押さえ、姿勢を崩してたたらを踏んで倒れこみ、熱せられた石畳に四つん這いになった。


「シンジロー殿?!」

ウィリアム王子とシバ将軍が、眼を見開いた。


「シンジロー?!」

「シンジロー!どうしたのニャ?」

初めて見る進次郎の苦しむ姿に、王宮から出てきたヨーコとヴェルニーも駆け寄る。


進次郎の体から白い光が明滅する。それは彼のいつもの能力発動時と同じく力強い光だったが、今回はただ瞬くだけで、周囲に何か影響を与えるような現象は起きない。まるで、彼の内なる力が暴発寸前で留まっているかのように、光は虚しく点滅を繰り返す。


「大丈夫?シンジロー?!」

ヨーコが進次郎を介抱するうちに、白い光の明滅は少しずつ落ち着いてきた。

進次郎の呼吸も荒々しさを失い、肩で大きく息をつく。


「もう大丈夫のようです……」

進次郎は胸を抑えながら、ゆっくりと立ち上がった。だが、その顔には、苦しさが残っている。


「シンジロー!横になっていて!」

「いえ、そんなことより数字が…」

「数字?」

「なにか…とんでもないことが起こる気がします」


額に浮かんだ脂汗を拭いながら言う。

『おぼろげに浮かんできたんです46という数字が』


「46?」

シンジローが変なことを言い出すのはいつものことだが、キリの悪い数字だけをあげられたヨーコは余計に困惑する。


「46!?」

宰相ミツバが同様に呟く。だが、その声には冷静な宰相らしくもない動揺が含まれていた。

ウィリアム王子が怪訝な顔で聞く。


「ミツバ。46がどうした?ただの数字ではないか?」


「そ…そうですね……私の考えすぎかもしれません。そうです46はただの数字です……」

動揺する自分に言い聞かせるように呟くその姿はいつものミツバからはほど遠かった。


その混乱の中に、一人の男がよたよたした足取りで入ってくる。


「よう……久しぶりダナ……」


焼け野原になった王宮の広場の入り口から入ってきたのは、貧相な見た目の男だった。


その男は操り人形のように、不自然な歩みで、焼け果てた戦場の中、歩を進める。


「……魔術師ベツリ!?」


ヨーコとヴェルニーは驚く。それは、かつて悪徳商人ヤマズと共に、ヴェルニーに命を奪う契約魔法を施した悪辣な魔術師。陰気で、狭量で、独善的。自分の利益しか考えず、いつもイライラしていて、そのへんの猫でも蹴っ飛ばしていそうな性格の悪い男。その男が、なぜ、今ここに。


その理由と共に、『46』の真実もまた、彼によってすぐに明かされることとなる。

異世界進次郎を書く以上「46」は避けて通れません

いよいよクライマックス!!

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