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34.王子と宰相と将軍、決断する

(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

王子の執務室の扉を開ける進次郎、そこにはウィリアム王子と宰相ミツバ、シバ将軍が立っていた。古地図が飾られた石造りの室内は張り詰めた空気で満たされている。


「先程の使者の件、聞きました。都市龍オーゼンが放たれればこの街に危機が訪れることを。私の身柄を渡すか放棄すれば、犠牲が少なくて済むのですね?」


進次郎は一気にまくしたてる。その決意の声音には、めずらしく焦燥が滲んでいた。


「そうかもしれない…が、我が国としてそれはできない」


ウィリアム王子は玉座のような豪奢な椅子に座したまま、微動だにせず、冷静に答える。その瞳は静かに進次郎を見据えていた。


「なぜです?」


進次郎は一歩踏み出し、問い詰める。

「それは…」

「私が答えましょう」

口を開こうとした王子を遮って、宰相ミツバが進み出る。


「理由はふたつ。1つ目、彼らの言う通りにしたとして、かれらが龍を放つ可能性が残ったままだ。2つ目、シンジロー、君が本当に契約破棄の能力を持つなら、絶対に他国に渡すわけにはいかない」


有無を言わさぬ口ぶりだった。論理的にはそうなのだろう。


「しかし、それで犠牲が出ることは看過できません!シバ将軍の配下を危険に晒すことにもなります」

自らの身より、兵の命を気に掛ける進次郎の発言に、シバ将軍は驚いて、かすかに眉をあげる。


「そうかもしれぬ。だが我々はこのようなときのためにいる」

その答えは毅然としていた。


「龍を倒せるのですか?」

「やる以上は身命を賭して戦う。いずれにせよ軍のことは私の裁量。決定は王命だ。」

シバ将軍は進次郎の意見を却下するが、彼女の声色は僅かに穏やかで、進次郎への敬意があった。


「シンジロー殿。私は正直、まだあなたのことを信じられない。本音を言えば、オーギ大臣の要求通りにあなたを引き渡したいくらいだ」


宰相ミツバは、胸の内をさらけ出すように語る。


「だが、私もこの国を預かる身として、感情ではなく理性をもって判断しなくてはならない」


宰相ミツバの目は真剣なものだった。立場は違えど、この国のことを真に思っての言葉だった。その言葉には、国を背負う者の重みが込められていた。


「しかし……」


進次郎はなおも食い下がるが、ウィリアム王子は静かにそれを制する。


「いつも冷静な貴殿らしくもない。いや、他人のことになると放っておけないのも貴殿らしさか」


王子の言葉には諦念が混じっていた。


「シンジロー殿、あなたがなんと言おうがもう遅いのですよ」

宰相ミツバは断言した。


「なぜです?」

「それは……」

進次郎の問いに、王子は言いよどむ。


宰相ミツバが王子を差し置いて、告げる。

「我々はすでにオーギ大臣に決定を通告し、彼は帰路に立った。もはや決戦あるのみだ」


港湾都市ハマの体制も盤石とはいいがたい。

だが、工業国家サキの通告を拒否した今、伝説の都市龍オーゼンの襲来は確定した。


(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

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