33.進次郎、都市龍オーゼンを問う
(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)
シンジロー、リュード、ヨーコの三人は王宮の控室で待機していた。
王家の3人、ウィリアム王子、宰相ミツバ、シバ将軍の議論の結果を待っているのだ。使者も謁見室で待っている。
「侵略の意志がないことを示すのにシンジローと天籟の語り手の放棄か共同管理……まぁ使者の話が確かなら、妥当な線だな」
リュードは腕を組み、低く唸るように状況をまとめた。控室には近衛兵たちの武具がならび、つい不吉な想像を掻き立ててしまう。
「スピーカーは分かるけど、シンジローの放棄ってどういうこと?」
ヨーコが、不安げに問う。その手はテーブルの上で握りしめられている。
「処刑しろということですよ」
進次郎は、まるで今日の天気でも話すかのように、あっけらかんと答えた。
「そんな!いきなりすぎない?」
「不安要素をなくすのは当然と言えば当然です」
まるで他人事のように答える。
「共同管理は?」
ヨーコが問う。
「わからんな。ただ、共同管理をてこに、いずれは占有するつもりだろう。あの国は人を精神を操作する薬品も使うし、まぁゾッとしない展開だな」
リュードは忌々しげに顔をしかめた。その言葉には、サキという国に対する根深い不信感が滲み出ている。
「そんなの認められるわけ無いじゃない?!」
ヨーコが立ち上がりそうになるのを、リュードが手で制した。
「王子と宰相と将軍で決めるそうだが……どうなるだろうな」
本人が絡む話では、本人を前にしてはしにくいだろう。
控室の重い沈黙が、それを物語っている。
「シンジロー殿、あなたに本当に反魔法の力が?」
リュードが率直に問う。
「わかりません。この世界に来て二度その力が出ましたが、魔法を無効化させているかどうかまでは……契約魔法も詳しくは知りませんでしたし…」
進次郎自身、この力の正体を掴みきれずにいる。それは本当だ。
「ヴェルニーを助けるときに契約魔法を無効化したやつを和平契約にも適用できると思われてるんだと思う。もしかしたらできるのかもしれないけど……ヤマズのやつ……ほんとに余計なことしかしないわね……」
ヨーコは苛立って呟く。自分も関わっての行動だっただけに頭を抱える。
「身柄を渡された場合はその時考えるとして……断った場合どうなるか知っておきたいです。龍が来るかも?とか言ってましたが」
進次郎はリアリストらしく、具体的な質問を投げかける。
「都市龍オーゼンね……」ヨーコがつぶやいた神話的な響きに、リュードの表情がわずかに強張る。
「そうだろうな……最初から切り札を切ってくるとは、サキは本気だな…」
「都市龍オーゼンとは何でしょう?」
素朴な質問を進次郎は問う。
「えっと、こういうのは父さんのほうが詳しいかもしれないけど……まず、国の間では魔法による和平契約があって、相互に侵略できないのね。でもこれには、抜け道があって、国の指揮下にない戦力だったら良いわけ。それこそヴェルニーの両親が取られた獣人の独立軍とかがそれね」
ヨーコは順を追って説明する。
「そう言ってましたね」
初めて獣人街に行った日のことを思い返しながら答える。
「それの究極版が工業都市サキを守る龍オーゼン。都市ができる前からそこに住んでいた強力な龍で、人間とは対等以上の存在で、サキの指揮下ではない。ただ、サキを守るために行動することがある。それを差し向けることをほのめかしたんだと思う。都市を守る龍だから都市龍。でも本当に龍が解き放たれたことなんて何十年もなかったはず」
「龍って強いんですか?」
「強いなんてもんじゃないわよ。本気になればこの街ごと焼き払える。」
ヨーコの言葉には、恐怖と畏敬の念が混じっていた。
「仮に、ですが、その龍がこの国を襲ってきた場合はハマの軍隊が応戦するんですか?」
「そうなんだけど……龍を倒すのは難しいわよ。軍隊もそんなにたくさんの人がいるわけじゃないし……魔法による和平契約ができて長いから、軍隊の規模は小さくなってる」
「まぁ……無理だろうな……龍殺しなんておとぎ話だ……ハマは大変なことになる」
リュードは、重いため息をついた。
「だとすると、私の身柄を渡したほうが被害が少ないのでは……」
シンジローの言葉に、ヨーコとリュードが凍りついた。
「いや、駄目!何されるか分かったもんじゃないわよ!」
ヨーコは、慌てた表情でシンジローを止める。
「それでも多くの人が犠牲になることは避けなくては!」
シンジローは毅然と言い放ち、執務室へと足を向けた。
その背中に迷いはなかった。
(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)




