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28.悪辣魔術師ベツリ、妖精都市ラツカで眼を覚ます

(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

魔術師ベツリが目を覚ましたのは、宝石でできたドームの中だった。

床も天井も壁も、全てがきらめくエメラルド色の結晶でできた、不思議な空間。

拉致される直前まで行動を共にしていた、ヤマズはどこにもいなかった。もちろん自分を売ったブリックも。


「ここは……?」


独り言が硬い結晶の壁に反響し、こだまとなって小さく消えていく。見たこともない光景。こんな巨大な宝石を加工できるものなのだろうか?人間技ではない……と思ったところではたと気づいた。


「まさか……精霊都市……ラツカ!」


(その通りだ……人の魔術師よ……)


ベツリの脳内に言葉が直接響く


「なんだコレ!?頭に直接?やめろ!」


(他の方法もあるのだが……君の好みに付き合っているほど余裕は無いのだ……)


「誰だお前!」


(人に名乗る名は無いが……人は…人類は、私のことを精霊王と呼ぶようだがな……)


ベツリは困惑した。魔術師でも伝説でしか聞いたことがない精霊王。

数多の眷属を従え、古の精霊魔法の中核をなす原初の精霊だ。


「せ……精霊王様が俺に何の用だ!」


精霊が人間に接触してくることはある。精霊は世界に対して直接は干渉できず、人や動物を媒介にするためだ。だが、それもほとんどは下位精霊の話。精霊王のような神話的存在が一介の契約魔術師に接触するなんてことはあり得ない話だ。


(単刀直入に言おう……シンジローの能力の真偽を確かめたいのだ……)


「シンジロー?!なんでヤツのことを?」


(『契約』は古の理。我々と人が結ぶより遥か前から存在していた……我々の存在意義とも等しいもの……有史以来、この契約を無効にする能力は存在しなかった……)


ベツリもその危険性は考えていた。だからこそ、その力の源を知ろうと行動していた。

ただ、考えが及ばなかったのは、それを危険視した精霊が本気で何をしてくるか?だった。


「わかった!やつに関することはなら何でも喋る!」


(お前の言葉に用はない……我らにお前の言葉の真偽はわからぬ……それ故、お前の精神と記憶に直接聞くことにした……それがお前をここにつれてきた理由……)


「や……やめろ!」

精霊との契約を悪用し、ペナルティーとして精霊に精神を侵され廃人となった魔術師仲間のことを思い出す。精霊の侵食は進む。


(なに……命くらいは保証しよう……お前にはこれからだいぶ働いてもらわねばならぬでな……おお……道端の猫でも蹴飛ばしそうな悪しき魂よ……)


「……俺はそんな事はしない…」


ベツリの意識は途絶えた。


(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

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