表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/51

26.悪徳商人ヤマズと悪辣魔術師ベツリ、拉致される

(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

悪徳商人ヤマズと魔術師ベツリは、赤煉瓦団のアジトに呼ばれた。じめじめとした部屋には据えたビールと埃の匂いが満ちている。


ヤマズが不機嫌そうに聞く。

「呼びつけておいて何の話だ?」


「なに、シンジローの件で随分苦労していると聞いてね」

「余計なお世話だ」


ブリックの言う通り、ヤマズたちは苦戦していた。興味を持ってもらえて商人たちの間で噂にはなったものの、商人のつてを辿って、王家に接触しているが、どうも要領を得ない。進次郎と面識があることを伝えても、はぐらかされていた。魔術師ギルドも最初こそ色めき立ったが、証拠がなにもなかったので、騒ぎも沈静化してきていた。


「そっちは随分羽振りが良さそうじゃないか」


赤煉瓦団の団長ブリックは、椅子に深く体重を預けていた。その手は、重たそうな布袋を宙に投げては受け止めるという、手遊びを繰り返している。布袋が彼の掌に着地するたびに、「ジャラリ」と、重い金属の音が響く。まず大量の金貨の音だ。


「良い話と悪い話がある。どっちからが良い?」


ブリックは、その金貨の重みに飽きたかのように、気だるそうに言う。


「もったいぶらずに教えろ」


足元を見るかのような二択に苛立ったヤマズは、短く切り捨て、本題に入るように促す。

横で魔術師ベツリは沈黙したまま、冷静にブリックの様子を観察していた。


「じゃあ、まずは悪い方からだ。昨日、シンジローが王家の臣下となった。謁見の場で、天籟(てんらい)語り手(スピーカー)が貢物として王家に捧げられた。残念だったな」


ブリックの言葉は、地下室の冷たい空気を一瞬で凍りつかせた。


「なんだと!?なぜ?ふざけるな」


ヤマズとベツリは、同時に椅子から立ち上がり、ブリックに食って掛かった。


ヤマズは、未来を告げる天籟(てんらい)語り手(スピーカー)を、ベツリは、進次郎の持つ規格外の力を、それぞれが自分の野望のために狙っていた。今回の王家招聘は、二人の抱いていた野望が、いずれも潰えたことを意味する。二人が激昂するのは当然だった。


「俺にくってかかったってしょうがねぇよ。まぁ、王家が出てくるようなものなんだから、最初から、お前らの手に余るものだったってことよ」


ブリックは肩をすくめ、嘲笑を隠さない。

「うるせぇ!それだけでかいヤマだってことだろうが!俺の眼は間違ってなかった!」

唾を飛ばして食い下がるヤマズ。焦燥で声が上ずっている。

「たしかに悪いニュースだが…良いニュースってのはなんだ?」

ベツリが、冷静に促す。 ここまできて、自分たちにとって良いニュースがあるようには到底思えない。

「良い方は……お前らの身柄を高く買ってくれる人が現れた…ってことだ」

ブリックがそう言うがいなや、彼らの視界が暗闇に閉ざされた。背後から大きな麻袋を頭からすっぽりと被せられたのだ。ざらついた麻の感触が彼らの顔に絡みつく。

「なっ!何をしやがる!」

もがく間もなく、さらに後ろから屈強な腕が首を力強く締め上げてきた。呼吸を止められ、ヤマズもベツリも力のかぎりあがく。

「お前らの話に興味を持ってくれる国があってな。妖精の国と龍の国だ。」

ブリックの声は、麻袋の向こうで遠く、楽しげに響いた。

首を締め上げる力がさらに強くなり、意識は急速に遠のいていく。

「お前らの身柄を引き渡すだけで大金が入るんだ。こんな良い話は無いだろう?」

ブリックの身勝手なつぶやきと、チャリッという金貨の入った袋を投げる音が辛うじて聞こえる。

「良い旅を」

それが、彼らが聞いた最後の言葉だった。


(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ