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23.進次郎、王子の心情に触れる

(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

謁見のあと、ウィリアム王子は進次郎を自分の執務室に招いた。執務室は、重厚な石造りで強固なもの、狭い窓から光が差し込んでいる。壁には古い地図や、鹿の頭部のはく製、王家の肖像画などが飾られており、控えめながらも威厳のある空間だった。


二人きりの密談。ドアは固く閉じられ、室内の空気はわずかに緊張を帯びていた。


「シンジロー殿。招聘に応じてくれたこと深甚に思う」


ウィリアム王子は、執務机の前に置かれた豪華な肘掛け椅子を進次郎に勧め、自身は机の縁に軽く腰掛けた。その仕草には、形式的な儀礼よりも、親密な対話を欲する心情が現れていた。


「もったいないお言葉です」


進次郎は姿勢を正し、深く頭を下げた。

彼の眼差しは鋭くも礼儀正しく、王子を静かに観察している。


「相談役の雇用など、私一人の判断で構わぬのにな。臣下の者たちが何かとうるさくてな」

ウィリアム王子は、嘆息と共に首を振った。その顔には、若きリーダーが背負う重圧と疲労の色が浮かんでいた。


「臣下の皆様の理解を得るのは必要なことかと。私のような得体が知れぬものは警戒して当然でありましょう」


進次郎は落ち着いた声で答えた。


「は……そうは言うがな。私が臣下の言うがままの傀儡、『お飾りの王子』と言われていることは知っていよう?」


王子は顔を上げ、進次郎の目をまっすぐに見つめた。その眼差しは、隠し事をせず、真実の意見を求めているようだった。


「流れ者ゆえ存じ上げませぬ。いずれにせよ臣下の皆様の意を汲むのは上に立つものとして正しい姿かと」


ヨーコから「お飾り王子」との評は聞いているが、進次郎は表情一つ変えず、慎重に言葉を選んだ。


ウィリアム王子は、執務机から離れ、壁にある古地図に歩み寄った。古い地図を前に、王子はどこか寂しげだった。


「この国は……80年前の戦争の後、契約魔法にて戦争を選択しない誇りある道を選んだ。しかし、現実にはどうだ。国家間の戦争は無くとも、国外には無数のいざこざがあり、国内では宮廷政治がはびこっている。これが誇れる国だと言えるのだろうか」


「戦争捨てただけでも、誇れることかと思います」

穏やかな肯定は進次郎の心からの同意だった。

消極的平和と積極的平和。それは国際政治学を学び実践してきた進次郎にとっても重要なテーマであった。


ウィリアム王子は進次郎に向き直り、古地図を背に問うた。

「シンジロー殿、先程の謁見の場で気づいたのだが、貴殿は政に携わった経験があろう?」

進次郎の正体と心情を見透かすような質問だった。


「なぜそのように?」


「全てが。謁見の場を設定したことも貢物も……すべて自分の思うように進められるという見通しがあってのことであろう?すばらしい慧眼と胆力だ」


王子は振り向き、尊敬の意を込めた眼差しを進次郎に向けた。


「過分な評価かと……」


進次郎はなおもへりくだる。


「よい。私はシンジロー殿に、人を導く器を見た。師父として、導いていただきたい」


王子の言葉は、決意に満ちていた。それは、自らの現状を打破し、国を導くための、真摯な願いだった。


「私にできることでしたら何なりと」


進次郎は、その願いを静かに受け入れた。


(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

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