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港湾都市ハマ、新たな旅路

(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

進次郎とヨーコ、ヴェルニーの3人はコースカ商会が荷物の運搬に使っているハマ行きの馬車の中にいた。ヴェルニーは荷物に紛れて猫のように丸まってグーグー寝ている。眠るヴェルニーの傍らには布に包まれた進次郎のスピーカーが無造作に置いてある。

現世ではありふれた、しかしこの異世界では唯一無二のコーン状の拡声器と遠隔マイク。


布の包みを指さしてヨーコが聞く。

「シンジロー、このスピーカーについて聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょう?」

「このスピーカーってどうやって動いているの?どういう原理なの?」


布からスピーカーとマイクを取り出しながら、進次郎は説明する。

「これは電気で動いています。こちらのマイクで喋ると、スピーカーから音声が出るという仕掛けです」

「電気……?」

「電気というエネルギーを電池に貯めて使っているのですが…この世界には無いですよね……実際にお見せしましょう」


蓋を外して細い単3電池を取り出してヨーコに見せる。


「これが電池です。これがないと動かない」

つややかな金属のフォルムは、この世界では見慣れないものだ。

「へぇ……きれいなものね……貯めておくってことは、それが無くなったらどうなるの?」

「使えなくなります」

「え!?そうなの?ずっと使えるもんだと思ってた。魔法とは違うのね……」


便利な現代科学だが、魔法に比べられては分が悪い。


「電池を交換すれば使えますが……この世界では手に入らないでしょうからね……」


ありもので即席の電池を作っても必要な電力を稼ぐのは難しいだろう。


「どれくらい使えるの?」

「普通は5時間くらいだと思いますが……こちらに来る前で演説で使って、その後も何度か使ってますから…よくて3時間程度だと思います」

「じゃあ、あんまり使うわけにいかないわね……」


思惑が外れたように言うヨーコを見て、進次郎が興味の目を向けた。


「なにかアイデアでも?」

「いやね。ハマでこのスピーカーで名を売って、情報集めようかなと思ったのよ。ヤマズのところで、でまかせで言った天籟(てんらい)話し手(スピーカー)。あのハッタリ使えそうだなと思って」


何をするにも情報を集める必要がある。だとしたら、これで耳目を集めるのも悪くはないだろう。


「なるほど。面白そうですね」と進次郎も同意する。


「でも、まずは父に相談してみるのが先かな。何しろうちの商会の総帥だからね。こういう時くらい頼らないと」


馬車はほどなく、港湾都市ハマの関所に到着した。

一行は馬車を降り、巨大な商業都市ハマを一望できる小高い丘に立つ。


「ここは……大きな街ですね!ガターボードもいい街でしたが、ここはその何十倍も大きい」


シンジローが目を輝かせながら言った。

街を石の壁が囲む城塞都市に見える。中央にはいくつもの石造りの大きな建物がそびえ立ち、その間を縫うように石畳の道が伸びている。通りには多くの人がひしめき、活気があふれているのが遠目にも分かった。港には帆船らしきものがいくつも停泊しており、その景色は港町出身のシンジローの心を高揚させた。


「交易の中心だからね。ここにないものは無いわよ。品物でも情報でも」

潮風に吹かれながら腕を組んで街を見下ろすヨーコが、自信ありげに言った。彼女の言葉通り、この街はこの世界の結節点のようだった。


「久しぶりに戻ってきたニャー!」

帰郷の喜びに尻尾をブンブン振り回しているヴェルニーがはしゃいでいる。


「ヴェルニーはどうするの?家族にすぐに会いに行く?今日はまだ貴方の誕生日じゃない?」


ヨーコはヴェルニーを気遣って声をかける。


「うーん。おとーとには会いたいけど……」


ヴェルニーは少し迷うような素振りを見せた。


「いかないの?」

「会いたいけど…わたし、シンジローとヨーコをおとーとに紹介したい……」

ヴェルニーの言葉に、ヨーコはにこやかに答えた。

「あら?それは良いわね。私も是非会いたいわ!でも一回、私の父に挨拶してからでいい?」


「分かった!ついていくニャー!」

「では商会に挨拶してから、弟さんに会いに行くことにしましょう!」

シンジローが笑顔で言うと、ヨーコもそれに同意した。

「そうしましょう!」


一行は、関所からハマに入り、賑やかな通りを抜けてコースカ商会を目指した。


(本作品はフィクションであり、実在の人物や政治的主張とは関係ありません)

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