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過保護な婚約者



あれからといもの、アリオンは少々私に対して過保護になったように思う。


私がどこかへ行こうとするたびに「どこに行くの」と行先を確認されるし、

誰かと話しているのをみかければ「どんな話をしていたのか」と聞いてくる。

まるで思春期の子供をもつ保護者のそれである。


別になにも悪いことはしていないし隠すことでもないので答えるが、時々面倒だなと感じてしまうこともある。


今だってそうだ。


先ほどまで最近知り合った異性の友人とちょっと挨拶して軽くしゃべっていただけなのに

どこからともなくやってきて、それとなく友人を追い払い、今私の目の前にいる。

私の後ろは壁で、アリオンの両手で囲われるように追いやられている。

いわゆる『壁ドン』とかいうやつである。

逃げ道を奪われている私の目を、アリオンは特に何かを話すでもなく、まっすぐ見つめているだけだ。


アリオンは今までもなぜだか黙ったまま私の目を見つめることが何度もあったのだが、今日はやけに長い。

目は口ほどにものを言う、という諺があるから、私の目からなにかを読み取ろうとでもしているのだろうか。

なにも嘘はついていないというのに。


いくら婚約者候補とはいえ、いわば契約婚約のようなものなのだから何をこんなに心配しているのだろうか。

あれか、妹が心配みたいな、そんな感じなのだろうか。


「アリオンってシスコン?」


「・・・はぁ・・・僕に妹はいないよ。ちょっと黙って」


確かにオズボーン公爵家は3兄弟で姉妹はいないのだが、そんなあからさまに哀れんだような目でため息をつかないでほしい。


「あの」


「なに?」


「そんなに見つめられると、どうしたらいいのかわからないわ。どうしてあなたはよく見つめてくるの?」


「さぁね。きみも熱い眼差しを向けてくれてもいいんだが」


「いつも他の女の子たちから熱い視線を送られているじゃない。今更私のが必要?」


「そりゃそうだろう、婚約者なんだから」


事あるごとに『婚約者だから』と言うのがテンプレートになりつつある。

そんなに何回も言わなくても、婚約者候補としての義務で言っているとを私は理解している。

変な勘違いなどしないというのに。


「・・・・・・だめか」


私をずっと見つめていた目線が外れた。


「なにが?」


「リオラ、きみ、右目に違和感を覚えたことは?」


「特にないと思うけど・・・」


私の問いは華麗にスルーされてしまったのも気になるが、なぜ右目の違和感について聞いてくるのだろう。

私の右目といえばなぜか月のような印がついているのだが、それが今まで不都合だったことはない。

アリオンはなにを気にしているのだろうか。


「それから、」


「そんなに気になることがたくさんあるの?」


「あるよ。さっきの男の子は?」


「最近知り合った、隣の教室のミルケラという子よ。」


つい先ほどまで私と会話していたところアリオンが追い払ったミルケラという子は最近知り合った男子生徒で同い年だ。

1年次からいたらしいのだが、どうも体が悪いらしく入学したものの、あまり学校には来れていなかったようだ。

それが最近になって少しずつ体の調子がよくなっているのか、最近はよく見かけるようになった。


「どう知り合ったの?」


「図書室で魔物についての書籍を探していたら、声をかけてくれたのよ。」


そう、強くなりたい私は魔物の生態をより詳しく知りたいと思い、

学校の図書館で魔物関連の本を物色していたのだが、なかなか欲しいものが見つからなかったところ

ミルケラが声をかけてくれて一冊選んでくれたのだ。

彼も魔物の生態に興味があるのか、図書館にある魔物の書籍についてとても詳しかった。

それからは顔を合わせれば挨拶をするくらいの仲になったのだ。


「そう」


「だからあなたが心配するようなことはないわよ」


「そういえば、最近世界的に魔物が増えている。ここ王都でも」


王都といえばこの国一番人がいるところなのだが、その分魔物もでる。

しかしこれと言って強い魔物は少ないし、国家魔術団の活躍もあり、

人が行きかう場所には強力な結界がはってあったりするので今のところ大きな被害はでていない。


「だから、気を付けて」


「ええ、気を付けるわ」


「魔物討伐実践の授業も始まるけど、気を抜かないようにね。きみは特に」


そういうとアリオンはようやく私を解放してくれた。

先ほどまで視覚のほとんどがアリオンだったのだが、急に外の光が入ってきてまぶしかった。


「私は特に気をつけろって・・・ほんとに過保護ね」


「きみにはどうしても色々言いたくなるんだ」


「もう16歳よ?」


「まだ、16歳だ」


アリオンは18歳だから成人している。だから16歳は子供だ、ということなのか。

年齢だけで子供扱いされるとちょっとムッとする。

アリオンに子供扱いされないためにも、魔法を極めて立派な魔術師になってやる。

そのためにも魔物討伐実践授業は大いに力になるに違いない。


初めての魔物討伐実践授業にワクワクしながらも、アリオンのこの過保護が早く落ち着いてほしいと思うのだった。



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