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思いは謎で溢れてる ※

恋なのか愛なのか情なのか、はたまたまったく別のものなのか、謎を詰め込んだ7本


※この作品には色気、死、鬱、風刺描写が多く存在します。苦手な方はご注意ください。


※『つい きのう のろったばかり』、『のろいまじないポケットのなか』は創作小説投稿サイト"エブリスタ"にて公開していた作品(現在は削除済み)を加筆したものです。

『透けた体』 ※死の要素あり注意


 オマエを助けたいのは本当。

 けれど、オマエの支えになりたいだなんて、そんな傲慢は到底、許されまいよ。


 ただ、ほんの少しでも俺に寄り掛かれたなら、オマエが楽になるかもと、夢見てしまったことはある。


 傑作だろ。

 俺はもうオマエに触れられもしないのに。






『執』


 臙脂色の水溜まり。水面が揺れて波紋と共に盛り上がる。

 表面張力の限界を越え、水は溢れて水面は破れた。


 突き破ったのは小さな手。赤子の手。

 私はそれを知っている。その凶暴性を知っている。

 それは恋という呪い。






『キスをして、すべてを平らげて』 ※色気描写あり注意


 突き出た舌。舌の上の花弁。

 花弁は肉色をして、艶となまめかしい。

 花のかぐわしさはなく、唾液のにおいだけが微かに。


 遊びではない。少なくとも私達には。

 舌の付け根。花弁に隠れ、象牙色の並びが肉に食い込んでいる。

 やめさせたければ喰え、と暗に。






『捕獲』


 愛を閉じ込めた。

 蝶の翅を摘まむように指で捕らえ、手中に収める。

 逃す気は更々ない。


 愛は手中でおとなしく息づき、翅を微動だにもしない。

 細心の注意を払って手を開いても、そこにただおとなしく留まるのみだ。



「怖くないのか」

 問えば、愛は蠱惑的に笑む。


 ――だって、わたしが囚われたのではなく、わたしがあなたを囚えたのだから。


 それはどこまでも正しく。






『つい きのう のろったばかり』 ※死、鬱要素、暴力を思わす描写あり注意


 土の中、

 息もなく、

 木の根に寄り添ったきり。

 残されていた魄は未だ落ちきらず、

 埋めた咎人の影に今も注がれ続ける。


 のうのうと暮らす咎人は、

 狼藉などなかったことにして、

 罪を面白おかしく幾度も繰り返し、

 魂を蹂躙しては墓穴を増やし続ける。


 莫迦なことをしたものだ。

 狩られたものが味わわされた恐怖と苦痛を、抱く怨恨を、

 理解できず、しようともせぬ咎人は、己が報復される身とも露ほども思わないのだろう。






『のろいまじないポケットのなか』 ※死要素あり注意


 ポケットの中にオマエの歯、

 俺に遺されたそれは呪物。

 歯と肉と血と神経が、

 俺を護ると宣った。


 護る必要ないんだと、

 オマエを忘れさせろよと、

 俺の唯一の願いは叶わずに、

 ポケットの中の呪物は今日も、

 その身を僅かに欠けさせながら、

 どんな厄からも俺を護ろうとする。


 その最後のひと欠片が崩れる時こそ、

 オマエの思い出も存在も消え去る時と、

 知っているから忘却を心底強く願うんだ。


 オマエがいた証は俺の中になくてもよくて。

 ポケットの中に在り続ければただそれだけで。






『△』 ※死要素あり注意


 キミがいなくなった町にアナタがいて、

 アナタが消えた町にはアイツの骸があった。


 アナタにキミの居所を尋ねたらば、燻る紫煙の向こう、黒い紙煙草を咥えた薄く淡い紅の隙間、真珠の歯が僅かに開く。


「オマエが探すのは中身と器のどちらなの」


 ――尚、器の中にキミはいない。


 アナタは紫煙を眺めて宣った。

透けた体 2024.01.26

執 2024.01.26

キスをして、すべてを平らげて 2024.01.26

捕獲 2024.01.26

つい きのう のろったばかり 2024.01.26

のろいまじないポケットのなか 2024.01.27

△ 2024.01.30

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