仄昏い水の中、チラリと見える ※
心に澱が溜まるときだってある、澱の底にちっぽけな光だってある7本
※今回は鬱要素、怪我の描写が多めです。苦手な方はくれぐれもご注意ください。
『薄く細いからこそ切れぬ縁』 ※怪我描写あり注意
髪を切って、と手渡されたのはハサミではなく剃刀だった。
鈍色の薄板、鋭い刃。見詰めてフルリ震える。
ひとつ間違えれば、薄い刃の創傷を生むかもしれない。
今はまだありもしない、細い赤とそこから滲む赤、ジンと後を引く痛みを想像して、脳が怯えた。
「俺でいいのか」
「お前だからだ」
仇を相手に何を言う。
『裸眼のカノジョ』
パーフェクトハニーは俺のことしか見えてない(ド近眼)
『虚無と命の灯火』 ※鬱要素あり注意
楽しげな曲が漏れ聞こえる。団欒もどこからか。
幸せの音だな、とぼんやりと思った時、ふと自分がスッカスカなことを自覚する。
世界なんて終わればいいや、と願っちゃいけないことを願った。その瞬間に悟る。
これを終わらせるのは酷く簡単なのだ、と。
『見くびった』 ※怪我描写あり注意
人差し指が痛い。皮が剥けてるんだ。
ナットをね、何回だったかな、素手で回してたんだけど、ぐぬりとした感触で、初めて軍手の必要な理由を知ったんだ。
なぜ、ぼくはバカでしかないのか。
『静寂はくれない』 ※鬱要素あり注意
寝ながらにしてテレビの騒音を垂れ流す、その脳天気さが羨ましい。
しかも、私の大嫌いな音楽だ。
騒音はいらないよ。
『俺ではダメかい』
――愛がほしい。
どんな逆境にあろうとも気丈に振る舞うオマエが、ふと何もない遠くを見詰めた。
その顔に隠しきれない寂寞が見えたから、オマエの傍から離れ難かったんだ。
これは単に、俺のワガママだよ。
『ちっこいおてて』
小さなぬくもりが手に触れ、きゅっと握られる。
それは観葉植物の肉厚の葉よりも瑞々しくて、やわらかで、心許ない弱い力であるはずなのに、ボクの心を支えているかのような不思議な頼もしさがあった。
心はこうして繋がっていくのだろう。
薄く細いからこそ切れぬ縁 2023.9.26
裸眼のカノジョ 2023.9.27
虚無と命の灯火 2023.10.06
見くびった 2023.10.06
静寂はくれない 2023.10.06
俺ではダメかい 2023.10.13
ちっこいおてて 2023.10.24