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なかよしこよし

なかよしこよしとひとことで言っても、いろんな関係がある7本

『甘酒のうた』

 ♪お~ おぉ~ ふぅーぅ

 甘酒が飲みたい×2


 麹の甘酒ぇ 酒粕の甘酒ぇ

 どっちもサイコーにうまいからぁ 甘酒飲みたーい


 飲む点滴~

 疲れを優しく癒やすぅ~ 甘酒~(どぅ~わぁ~)


 生姜入れるとおいしいよー

 温でも冷でもおいしいよー

 あぁー あぁーまぁーざぁーけぇぇー






『餃子にお酒』


「んあーっ、酒煽りてぇー」

 立て続けの災難のせいで、兎にも角にもウンザリしていた。

 即行で退勤してどこかで憂さを晴らしたいところだが、まだまだデスクから離れられぬ身。仕方なく、肘を突いて顔を伏せ、衝動的な願望を呻くに留める。

 当然ながら、呻くだけでは消化不良の鬱屈を払うに及ばない。ならばと、重い気分を振り切るべく、思い付いたことを叫んだ。


「餃子! がっつり!」

 マズイ。テキトーに叫んだくせに、声に出したがばかりに、どうしようもなく餃子が食べたくなってしまった。これでは余計に悶々としてしまうではないか。

 嗚呼、今、無性に熱々の餃子をビールとレモン酎ハイ、烏龍ハイで胃に流し込んでやりたい。



「いいですねえ」

 欲望にまみれた私の叫びを聞き、隣の先輩がおもむろに頷く。

 そうだ。つい衝動に負けて叫んだけど、そういえば、私まだデスクにいたんだ。


 あああ、職務中にしょうもないこと叫んじゃったし、聞かれちゃった。

 しかも、何て叫んだ? 酒と餃子って、可愛さ微塵もねーえ!

 でも、言っちゃったものも聞かれちゃったものも、もうどうにもならないから、いっそ開き直っちゃえ。


「行きます、先輩?」

「ニンニク抜きなら」

「それ、がっつり?」


 ニンニク、ニラ、生姜の風味の欠けた餃子にがっつりの概念は存在し得るのか。

 訝しげに先輩を見遣れば、不敵な笑みを返される。

「おいでなさいな。きっと満足しますよ」



 先輩の言うがっつりはお酒だったけど、大量かつ変わり種豊富な餃子もがっつり満足できたし、憂さも晴れた。

 先輩、天才。餃子とお酒も最高!






『林檎と背比べ』


 ネットによると林檎の大きさは一〇センチから一五センチらしい。


「林檎って、もっと小さくなかったか」

 林檎を手に乗せているイメージを脳内に思い描くが、どうも数字とイメージが噛み合わなかった。


 小首を傾げて掌を見詰めていたら、不意に横から鼻を鳴らされる。弟だ。

 俺の空っぽの掌に、おもむろに林檎を置いた。

「リンゴが小さいんじゃねーよ。お前がデケェんだ」


 俺達の身長差は空想上の林檎二個半だと思っていたが、実際はどうも一個半だけのようだ。


「あとな、俺もそこそこデカくなったの、お前、気付いてねーだろ」

 弟は俺の手から取った林檎を大きな一口でかじりながら、ぶっきらぼうに告げた。


 林檎、やっぱりもっと小さいんじゃないか?






『ノベルゲーム』


「中古ショップでみつけた」

 腐れ縁はそう言いながら、昔のゲーム機とソフトを差し出した。

 俺の記憶にも引っ掛かる有名なノベルゲームだ。確か、ホラーサスペンス系だったか。


「俺、コントローラー持つ係。お前、字ぃ読んで推理する係な」

「分担の意味はあるのか」

「お前、そんなつれないこと言う? んじゃあ、俺が男キャラやっから、お前は女役な」

「……まあ、いいが」

「役になりきって、けど怖くなりすぎんようにやってくれ」

「注文が多いな」

「頼むよ」

「俺に女役を配置したこと、後悔するなよ」


 七色の声とアドリブと貫徹した棒読みで、散々笑かしてやった。我ながら酷い出来だと思う。

 ホラーサスペンスは茶番と化し、エンドロールが流れる頃には、腐れ縁は笑いすぎて頭と腹が痛いと呻いていた。

 ただ、ゲームの素の面白さを体感できなかったのが残念だ。






『空の譜面』


 雲ひとつない青空に、電線が縦横無尽に引かれている。

 あの黒線、私はそんなに嫌いじゃない。


 青空を謳う譜面みたいと想像するもよし、人の声や情報が駆け巡る道と思いを馳せるもよし。

 それに、あの線を引いた者達は今もどこかで皆の為に仕事をしてくれているのだ。






『同居ぬい』


 ぬいぐるみと暮らし始めた。比喩ではない。


 最近までゲーム筐体の中で暮らしていた彼は、お持ち帰りの翌朝、アラーム鳴り止まぬスマホを抱えて、険しい顔で私の目覚めを待ちわびていた。


 喧しいから止めろ、と。

 布製の手では画面をタップできなかったんだと。






『ジンジャーエールと親友』


 「ジンジャーエールが飲みたい」と呟いた二日後、親友から「来い」とたった二文字の招集を受けた。


 わけも分からず訪ねた親友宅。待っていたのは、エプロン姿の親友と山盛りの生姜、砂糖、スパイスだ。


「私は今から生姜糖を作る。お前はその助手をしろ。報酬は残った煮汁とスパイスだ。それで存分にジンジャーエールを作れ。味はやや辛口が私の好みだ」


 君の強引なとこ、好きだよ。

甘酒のうた 2023.8.31

餃子にお酒 2023.8.31

林檎と背比べ 2023.9.02

ノベルゲーム 2023.9.02

空の譜面 2023.9.03

同居ぬい 2023.9.03

ジンジャーエールと親友 2023.9.06

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