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混沌から星屑を拾う  作者: 三山 千日


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33/77

怠惰な日影 ※

日影に潜み、心が怠けて堕落することもある7本。


※一部に死の要素があります。苦手な方はご注意ください。

『猫背で俯く』


 あなたが好きだった。


 ただ、私があなたに好かれるような人間かもわからないし、そんな人になれるのかも自信がない。


 私はきっと、いつまで経っても私なのだ。






『廃棄処分』


 ゴミ箱の中に手紙。

 一握りして捨てられたであろう、くしゃくしゃになったメモサイズのそれは、私が落ち込んでいる親に書いたものだった。


 ――いらない。


 手紙も気持ちも……私自身さえも握り潰され廃棄するに然るものと、ゴミ箱の中の手紙を介して吐き捨てられた気分になる。



 手紙は拾って切り刻んだ。

 以後はうっかり自分の手紙を部屋のどこかで見つけたなら、切り刻むか燃やすかしている。

 相手がいらないのならば、自分から消した方がまだ、心の痛みは軽いから。


 私はいらない人間。






『魂の叫び』 ※死要素あり注意


 蝉が鳴いている。命の限り鳴いている。

 余命僅かな小さな命が、魂を震わせて鳴いている。


 どうして彼らは生をまっとうするのにこの、命に関わるほどにとびきり暑い季節選んだのか。

 暗く冷たい地中に潜み、長き時を静かに息衝いていくのみの半生。それが何故に、眩く暑い世界を飛び交おうと思ったか。魂の限り愛を叫ぶのか。


 羽化したばかりの白の躰を茶色に染めて、死ぬまで鳴く蝉の、産声でもあり、愛であり、存在証明であり、断末魔たる命の叫び。






『白昼夢』


 夏のぬるい空気の中を泳ぐように進む。

 寝ても熱帯夜、醒めても真夏日で、今が現か夢かも定かでない。

 頭も体もボンヤリしてるから、そのまま濃密な熱と湿度で満たされた世界で過ごす内、いつかユラリフワリと空を揺蕩えるのではないかと微笑う。


 魚は宙を泳ぎ、鳥は水中で飛べばいいのだ。さすれば、私も彼らに見習うさ。


 愛しき夏の日。私はいつでも夢の中。






『七月七日晴れ』


 七月七日晴れ。雲は薄雲が浮くのみで、雨の気配はない。

 織り姫彦星の逢瀬が叶うステキな天気。


 彼女と喧嘩別れしたばかりのぼくは酒気混じりで空の上のリア充相手に舌打ちするも、はたと気付く。

 街の明かりで星の明かりが薄れた空に、天の川は浮かばない。


 せっかく晴れたのに、天の川がないんじゃあ、織り姫も彦星も遭うことが叶わないんじゃあないか。

 雨でも晴れでも逢えぬ二人を悲劇と呼ぶか、なるべくしてなったと捉えるものなのか。

 地上の民にわかるよしもない事情だから、ぼくはただ「残念だったね」と誰にともなく呟いた。






『つまらない』


 この世界に生きてて、面白いことはまあない。

 学生時代からこんにちに至るまで、総合的に"いいな"って思うことは少なかった。

 なにが面白いか、何を面白いとするのか、何を生き甲斐とするか、生きる為に必要なものは何か、見つけきれない自分が悪いのだろう。


 もう自分は人間失格と言わず、生物失格なのではないかとすら思えてきた。

 かといって、私が"私という怪異"とか"人ならざるもの"であるのかというと、それにはまだ弱すぎる気がするのだ。






『重い水』


 水音が聞こえる。雨樋を伝い排水される水が、ピチャパタと音を上げていた。

 だから何、というわけではない。ザアザアと雨音も聞こえ、ともすれば日によっては潮騒も聞こえる土地なのだ、雨樋の水ごときで何を思うこともない。


 ただ、水の音は時に癒やしをもたらし、時に陰鬱な気持ちにさせた。

 たくさんの水の音。涼しく、湿気を多く含む風。重い体と心。


 なんだろう。私は今、水に侵されているのだろうか。

猫背で俯く 2024.7.06

廃棄処分 2024.7.06

魂の叫び 2024.7.06

白昼夢2024.7.07

七月七日晴れ 2024.7.07

つまらない2024.7.10

重い水 2024.7.11

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