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混沌から星屑を拾う  作者: 三山 千日


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16/76

悲壮と幸福 ※

悲壮と幸福は隣り合わせかもしれない6本

※一部に鬱、暴動、死の描写があります。苦手な方はご注意ください。

『毒』 ※鬱要素注意


 ある日、突然浴びせられた猛毒は、

 私の過去のとりとめてなんというわけでもない言動を歪曲させ、

 不躾と無邪気とノリという名のスパイスを加えて投げつけられたものだった。


 私はあの日から他者に毒の材料を渡してしまった自分を憎悪している。






『青』 ※鬱、暴動描写注意


 目蓋を閉ざせばいつかの青空が思い浮かぶのです。


 あれは遠い昔、灰色の町で青い蝶々を追っているときでした。

 瓦礫と化したその町で捕まえようとした蝶々は、私の手をヒラリとかわし、己の翅と同じ色の空へと飛んでしまいます。


 青い空、青い蝶々。

 それが私の見た最後の色。


 続く轟音、飛来する瓦礫片、失われたすべて、のこされた私。


 青に誘われるままにすべてを失った。

 青に導かれなければこの命の灯火さえ消えていた。


 だから、私の瞼の裏には青がいつまでも貼りついているのです。

 ひとはずうっとおろかですから。






『電話』 ※死描写注意


 午前三時、一人の部屋。

 私の呼吸音と時計の音と電化製品のモーター音だけしかない静寂。


 ふと、誰かに呼ばれた気がしたのです。声ではなく、空気で、気配で。

「何か御用でしょうか」

 訊ねましたら、返事の代わりに電話が鳴りました。ジリジリと、ありもしない黒電話の音が。


 スマートフォンはうんともでしたので、仕方なく固定電話を取りましたところ、ええ、先の相手が誰か、ようやっとわかったのです。


 恋人が峠を越えられなかった報せでした。

 峠を越えるよりも私に会う方を選んだようで、なんとまあ……


 それは望んでいなかったのに。






『招待』


 なんとも不思議なものですね。

 今晩は、もしくはお早う御座います。


 貴方様ですよ、そう、大なり小なり硝子板越しに此方をご覧の貴方様。

 夜も夜、未だ明けぬ闇、此方をご覧の貴方様。

 夢ではなく硝子板越しに光を覗く貴方様。


 夢の世界はお嫌いですか?

 其レとも今から往こうとしていた?


 寝しなの御伽噺は如何ですか?

 其レとも、長い夜を越す暇潰しは?

 私がご案内致しましょう。

 夢の手前の想像を妄想を。


 私はしがない文字書きなればこそ、語るはいくつも御座います。

 さあさあどうぞさあどうぞ。






『掴んで』


 差し出されたその手が怖かった。

 あまりにも蒼白い。氷のように冷たそう。

 ボクの熱に触れるだけで溶けやしないかな。

 指も手首も腕もひどく華奢だ。

 ちょっと握るだけで折れやしないか。


「んもう、意気地なしね。ほら」

 強引にボクの手首を取る手は乾いて、やっぱり冷たくて。でも存外、力強かった。

 ボクの手首だけでなくハートまでもをがっしりと掴んでしまうくらいには。






『包む焼く』


 小さな手に乗った丸い生地が、見る間に餃子になっていく。

 襞が四つの小振りな餃子。


 小気味良く、そして魔法のようにあっという間にできたそれらが、整然とトレイに並ぶ。

 あなたの包む餃子は美味そうで、餃子を包むあなたの顔も所作も美しい。


「だから私はあなたに惚れたのです」


 餃子を包む手指に視線を注いだまま告げれば、最後の一個を包んだあなたが挑発的な流し目でこちらを窺う。


「アナタがこの餃子を最高に美味しく焼けたなら、アナタに惚れてあげてもいいですよ」


 仰せのままに、女王様。

毒 2024.3.08

青 2024.3.10

電話 2024.3.10

招待 2024.3.10

掴んで 2024.3.11

包む焼く 2024.3.11

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