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混沌から星屑を拾う  作者: 三山 千日


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10/75

世界の不思議とボクが識ること ※

世界の不思議とそれを識る7本

※一部に死、鬱、要素があります。苦手な方はご注意ください。

『創作するということ』


 臍に種を植えた。

 何が咲くか、そもそも本当に咲くのかさえ知れぬ種だ。

 それを自らの肉に植え、根付かせようとした理由なんて、大したことではない。


 自分を養分にした種が、毒か薬か、美か醜か、何色なのか興味があっただけ。


 たとえ、それが私の魂まで吸い尽くそうとも。






『蝕む毒が生まれた日』 ※風刺風


 天と地がひっくり返った"あの日"を忘れたことはない。



 "あの日"よりも前は、どの魚も腹に海や川を内包し、獣は山やら丘を背負っていた。

 蛇は空を泳いでは囀り、鳥は地面を無言で滑る。

 世界はずっとそんな感じだった。


 "あの日"まで生き物は多くいたが、人はいなかった筈だ。

 人に近いものならいはしたが、彼らは体を持っていなかった。

 だから世界は平和なままだったのかもしれない。



 体を持たぬものが肉体を得て人になった頃、海や川は魚の腹から放たれ、山やら丘は獣の背から落ちた。

 蛇は地面を無言で這い、鳥は空を飛んでは囀るようになる。



 世界はすっかりあべこべだ。

 では、"あの日"までずっと保たれていた平和はどうだろう。

 残念なことに、その答えを真に知るものはない。


 だが、世界ができてからこの方、すべてを見てきた自分が思うに、人に近いものが初めて人に成った"あの日"こそが、世界が毒で蝕まれ始めた日であるのだろう。

 あべこべの世界は今や、すっかり歪んでしまってる。






『古代樹は語る』


 琥珀を手に入れたならば、そっと訊ねてみるといい。

 あなたはどこの何者で、誰の手から手へと渡ったのかを。


 琥珀はきっと教えてくれる。ただし、その声は聞き取れない。

 彼らはそのぬくもりと内包する輝きだけですべてを語るものだから。






『還れない、還さない』 ※死、鬱要素あり注意


 キミの遺髪と遺骨をこっそり盗む。

 遺髪は編んで台座に敷き詰め、遺骨のダイヤモンドで蓋をした。


 キミは泣く。土に還せと嗚咽を漏らす。

 だからキミを飲み込んだ。飲み込んでから墓穴の中で眠った。


 キミはそうではないとまた泣いた。






『猫の形をした夜』


 その猫は夜の闇からぬるりと生まれ、朝の陽光に溶けて消える。


 かれは私の布団の中の暗闇の中、満月の目をふたつ光らせて、ジッと私を凝視する役目を負っていた。

 私が悪夢を見たならば、それを端から食うためだ。

 でも猫だから頻繁にサボって居眠りしてる。






『豆と隠し事』


「お豆、いくつ用意しましょう?」

 おたふくと鬼の絵の描かれた袋を掲げたあなたが問う。


 ああ、あれか。節分に年齢の数だけ大豆を食べるとかいうならわしだったか。

 さて、いくつ食べれば、このひとに妥当と思われるか。

 本当のところは黄粉にした方が食べ易いのだが。






『昨今の鬼は大豆なんて怖がらない』


 庭先に鬼がいた。

 見つけるやいなや、豆で充たされたザルを見せてくる。


「行く先々でコイツを投げ付けられましてね。一丁、擂る道具を貸しちゃいただけませんか。

 アンタなら見鬼の才も道具も持ち合わせていなさるし」


 ホント、視えるなんざ、ロクなことがない。

創作するということ 2024.01.31

蝕む毒が生まれた日 2024.01.31

古代樹は語る 2024.01.31

還れない、還さない 2024.01.31

猫の形をした夜 2024.01.31

豆と隠し事 2024.02.04

昨今の鬼は大豆なんて怖がらない 2024.02.04

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