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精霊界のノル・クァイン〜無腕無敵の最強騎士伝説〜  作者: 凡風
〜精霊騎士養成大学校 決闘編〜
47/51

4−9 本気も本気

よろしくお願いします。

「あの人、なんだか雰囲気が変わった?」


 決闘場の関係者席で観戦してたエレーナはレクススの変化に気がついた。

 観戦席までは会話の内容まで聞こえてこないが、人を食ったような態度をしていたレクススが真剣な表情に変わっているのが見てとれた。


「ああ、それに纏っている霊力が増大したように感じる、本気になったんだろう……今の彼は、とても騎士らしい姿だ。参ったな、もっと冷静に話し合えばよかった」


 フューエンは己の未熟さを恥じた。仲裁に入ったノルが言っていたように、レクススは自らの騎士道精神に基づいて絡んできたのだとようやく理解した。

 言い方や態度に問題はあったものの、今冷静に振り返ると互いに感情的になりすぎていた。


「元はと言えばボクのせいで……これでノルくんが怪我でもしたら、ボクは……」


「ヤン。ノルも言っていたけどな、俺も断言するそれは気にしなくていい、お前のせいじゃない」


「その通りですわヤン様。ご覧ください、ノル様のあの様子を……完全に楽しんでいらっしゃいますわ」


 霊力が増した対戦相手を見ても、ノルは怖気付くどころか楽しそうに笑っている。

 あれはハッタリではないとルディの観察眼が告げていた。


「クーちゃんはどう思う、ノルくん大丈夫?」


「………? ノルは負けない」


 関係が深いクァインはさぞ心配しているだろうと思い声をかけたエレーナだったが、当の本人は、なぜそんな事を聞くのかが理解できない様子だった。


「素性を知りたいような、知りたくないような……本当に悩ましい方々ですわね」


 ルディは呆れてため息をついた。


 * * * * * * * * * *


「そこまでしてくれるのなら、僕もそれなりにちゃんと相手をしないと失礼だね」


「なっ!?」


 レクススはノルの要望通り、本気で戦おうとしている。ならば手を抜きすぎれば、ノルは騎士道に反してしまうと言える。


 ノルは手の内を一つ明かすつもりで、纏っているコーティングを操作して体を浮かせていった。

 会場がどよめく。

 レクススも目を丸くしたが、直接対峙している彼はそのくらいはできると感じてしまっていたため、思ったよりも驚きはしなかった。


「……恐れ入った。コーティングの高難度応用技、浮遊を会得しているとはね。その歳でとんでもない霊素コントロール技術だ」


 霊素のみで構成される精霊魔法には物理法則がほぼ通じない。


 体を覆う形で展開された圧縮霊素を上手くコントロールすることで、その体ごと物理法則……つまり重力の影響を切り離す事が可能になる。

 しかしそれは言うほど簡単ではない。コントロールが狂えば体を痛めてしまったり、落下したりする大変危険な技術、扱うには相当な練度を要する。


「君も腕を無くしてみる? 霊感が上がるかもしれないよ」


「勘弁してくれ、代償が大きすぎる。愛する人を抱きしめられなくなるのは困るな」


「そうだね。僕もそう思うよ」


 軽口をたたいているうちにノルは2、3階ほどの高さまで上昇、射角を十分に確保した。


 ノルはここまでの攻防で密かにレクススの霊素密度を大体把握していた。

 多少派手にやっても殺してしまう事(最悪の事態)は無いだろうと判断して、攻勢に出ることにしたのだ。


「今度は……爆発の精霊魔法を見せてもらいたいな!」


 ノルはサラリと希望を要求しながら、チョークのような形をした数多(あまた)の圧縮霊素弾を、斜め上方から撃ち下ろす形で放った。

 これを回避することは困難、防ぐしかないだろう。


「精霊戦前にかんべんしてくれ……」


 愚痴りながらもレクススは迎撃に動く。

 ロッドを薙ぎ払うような動きで大きく振りかざす。圧縮した細かい霊素を射線上に散布した。


 そして、その霊素を芯にして爆発の精霊魔法を発動、一斉に点火した。


爆発(ウォール・エク)防壁(スプロージョン)っ!」


 その魔法名通り、術者を守る分厚い壁のような爆発の花が咲き誇った。

 凄まじい衝撃と共に広がった爆発の絨毯に阻まれて、ノルが放った圧縮霊素弾はほとんど散らされてしまった。


「浮遊は見事だが、それは愚策だ。私の雷撃は、宙に向けて放つ方が速くそして強力だ!!」


 爆発の余韻が残る中。レクススはすかさず反撃に打って出る。


速射電撃(マルチスパーク)!」


 瞬間的に複数発の電撃が放たれた。

 宙に浮いたままのノルに襲いかかる。

 眩い閃光で目が眩んだもののそれは間違いなくノルを捉えたかに見えた。


 だが。


「いろんな精霊魔法を見せてくれてありがとう。おかげで大体分かったよ」


 次にレクススが目の当たりにしたのは、何事も無かったようにふわりと着地したノルの姿だった。


「おも、しろい……そうこなくちゃな。せっかくの決闘なんだ」


 レクススは生まれて初めて武者震いを経験した。

 全力の精霊魔法を何度叩き込んでも、相手はまるで表情を変えない。


 何事も無かったかのように立っている。


 そんな敵を相手にしたのは流石に初めてだった。

 余力を残して勝つのは不可能だとレクススはこの時点で悟った。


「本気も本気。本意気で全力。霊力が尽き果てるまでぶつかってやる………うらぁぁぁあああ!!」


 空っぽになるまで付き合ってやると腹を括ったレクススは、雄叫びを上げながらロッドを構えた。

ご精読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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