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精霊界のノル・クァイン〜無腕無敵の最強騎士伝説〜  作者: 凡風
〜精霊騎士養成大学校 決闘編〜
45/51

4−7 僕に戦わせて

よろしくお願いします。

「いいね、とても分かりやすく(シンプルに)なった。ありがとうルディ」


「俺が行く」


 フューが相手を睨みつけながらが前に出た。


 感情の昂りからか、にわかに炎が体から上がっている。精人ではないフューは媒体なしでは精霊魔法()を出せないはず。体のどこかに精霊石を身に着けているのかな?


「別に全員でかかって来てもいいんだぞ?」


「なんたってレクスス様はなぁ……」


「待て、お前ら」


 挑発してくるアルファイアとベルファードを抑え、レクススも挑むような面持ちで前へ出てきた。


「諸君らが騎士道を語れるのなら、方法は決まっているはずさ」


「ああ、騎士が譲れぬモノをかけて戦う方法は古来から決まっている」


「「一騎打ち(決闘)だ」」


 まだ候補生とはいえ、騎士を目指す者同士が衝突したらまあこうなるだろう。

 非常に分かりやすくていい。互いに納得して話が進む。


「こちらは俺様が出る。そっちは……まあ、誰でもいいが後で言い訳されても面倒だ、1番強い奴が来い」


「当然だろう、俺が……」


「お待ちくださいフューエン様。この中で最もお強い方となると、客観的に考えてクーかノルさんになりますわ」


「なんだと?」


「なんだって?」


「……へ?」


 いい感じに話が進みそうだったのに、ルディの発言で一気に怪しくなった。

 僕たちの名前が出るとは思っておらず油断していた。思わず間抜けな声が出てしまった。


「それは、どういうことだ?」


 フューですら怪訝そうだ。


「お忘れになりまして? あたくしたちは二次試験で同じお相手と戦って惨敗いたしましたのよ。対してクーたちは対等に渡り合った。ほぼ無傷のまま試験を終えられましたわ」


「そうなのか!?」


 試験でのアレクさんとの戦闘はルシファーの一件で煙にまいたつもりだった。わざわざ言いふらすような人ではないと思っていたのだけれど。


「誰から聞いたの?」


「リードを連れて行ったのをお忘れでして? 湯気で姿は見えなかったと言っていましたが、激しい戦闘が行われていたと報告を受けていますわ」


 ちょっと甘かったかな。リードにもあまり広めないようお願いしておくべきだった。


「あれは、3人がかりでやっとの事だったんだよ」


「人数だけで言えばあたくしたちも3人でしたわ」


「湯気で視界を遮ったり、遠方から狙撃してもらったり、騎士らしくなくいろいろと手を尽くしてね?」


「効率的な作戦立案も実力の内ですわ。それに生半可な作戦で渡り合えるほど甘いお方ではなかったと、身をもって体感しておりますわ」


 やーん。ルディが僕たちのことを褒めてくるよー、助けて。

 フュー、フューは!? 僕の小細工には反感を持っていたし、反論してくれるよね?


「ふむ、確かにそう聞くと俺が1番強いとは、胸を張って言えないな。あの方にも瞬殺されてしまったし……それに何故か君たちにも、俺は勝てるヴィジョンが全く浮かばないんだ」


 フューーーーー! もっと自分を強く持って!!

 このままだと僕が矢面に立っちゃうよ。


「あ、あのね。僕は、荒っぽいことは、ちょっと苦手で………」


「レクスス様、奴らビビってるんですよ」


「ま、それも当然ですがね。何せレクスス様は特別なお方。雷撃と爆発のニ属性(ハイブリッド)魔法師なんですから。恐れられて当然です」


「僕がやるよ」


「ノル!?」

「ノルさん!?」

「ノ、ノルくん?」


 急にどうしたとみんなの視線が集まる。

 僕はキリッとした表情で見返した。


「僕に戦わせて」


「すまないノル。少し熱くなっていたよ、無理しなくてもいいんだぞ?」


「そ、そうですわノル様。向こうがああ言っているだけで、何も本当に1番強い方が出ていく必要はないのでございますよ?」


 僕の豹変ぶりを見て今度は急に不安になったのか、慌てて止めてこようとする2人。

 でも、僕はもう止まれない。


「雷撃と爆発だって? そんな面白……変わった相手と戦うなんて腕が鳴るよ」


「ノルに腕はない」


「ぜひ研究……じゃない、間近で拝み……じゃなくて、みんなの為、立派な騎士になる為にも、珍しい精霊魔法の使い手と手合わせして………楽しみたい!!」


「ノルに手は無い」


「ノル、本音と建前がごっちゃになっているぞ」


 あら、ちょっと抑えられなかったかな。


 雷撃と爆発はどちらも四属性の内の風系統から派生した精霊魔法。


 習得が困難な上に扱いがとても難しい。イチから普通の人が独学で身につけようとした場合、一生涯を捧げて習得できるかどうかと言われている。

 なのでそれを使える人というのは先祖代々の伝承による場合が多く、大半が門外不出であり、運よく技術提供を受けるにしても国家予算レベルの莫大な代金を要求される。


「ま、まあ。そっちがそう言うのならば、俺様に異論はない。これが正式な決闘であるなら、貴様らは何を望む」


 みんなの視線は先陣をきったフューに集まった。


「俺たちを同じアンダーナイトとして認め、対等に扱え。あと怖がらせたエレーナ嬢に謝罪するんだ」


「いいだろう。俺様の要求はこの場の全員が……と言いたい所だが。ふふ、貴様らの中から自分たちで1人を選んで、自主退学させろ。その方が面白そうだ」


「ちっ、腐ってやがる」


「構わないよフュー。もし負けたら僕が辞めるし、そもそも負けないから」


 * * * * * * * * * *


 それから1時間もしないうちに『トヨタバッカーリ家の御曹司と無腕の新入学生が決闘をする』という噂は瞬く間に広がった。

 舞台となったのはエスクエラ敷地内の小規模決闘場。見物席は噂を聞きつけて集まった候補生や教官で埋め尽くされた。


 集まってくる人混みの中に、エスクエラの生徒会的な立ち位置の組織、精霊騎士候補生評議会委員の姿を見たと言う目撃証言もあった。

 彼女らは滅多に表には出てこない一つ上の存在。

 ノルたちが起こした騒動は、それほどの注目度を要する大事にまで発展してしまった。


 これが()()ではなく正式な()()である以上、見届け人をつける事がルールで定められている。

 新入生(ノル)がらみで、またしても貧乏くじを引いたのはこの男だった。


「えー見届け人は私、ハリソン・クロス・ブラックウッドが務める。両者、異論はないな?」


「「精霊に誓って」」


「レクスス・トヨタバッカーリが求めるは、ノル候補生、クァイン候補生、フューエン候補生、エレーナ候補生、ルディ候補生、ヤン候補生。内一名の退学とその一名の選出である。間違いはないか」


「精霊に誓って」


「ノルが求めるは、ノル候補生、クァイン候補生、フューエン候補生、エレーナ候補生、ルディ候補生、ヤン候補生に対して、レクスス候補生による謝罪と、以上9名が騎士候補生としてエスクエラに在籍することに、今後一切の異論を唱えない。間違いはないか」


「精霊に誓って」


 様式に従って粛々と進む決闘。

 観客の中に軽口を交わす者はいない。満員の会場はこの3人しかいないかのように、シンと静まり返っていた。決闘とは古来より、厳粛かつ神聖な儀式として認知されている。


 たとえ野次馬と言えど、それを汚す行いをする者は騎士を目指す者(この)中にはいない。


「であるならば、これより行われるのは私闘にあらず。このハリソン・クロス・ブラックウッドが両者の決闘を認める………」


 しかし。


 これは嵐の前の静けさ。


「騎士道精神に則り、いざ尋常に………」


 長きに渡り腑抜けていたエスクエラで発生した、久しぶりの決闘。

 騎士候補生養成大学校が今、本来の姿を取り戻し目覚めたのだと告げる。

 歴史に名を刻むことになる試合が今、


「始めっっ!!!」


 始まった。

 この決闘は遠い未来、歴史家からこう呼ばれることになる。


 『ノル・クァインの産声』と。

ご精読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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