表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊界のノル・クァイン〜無腕無敵の最強騎士伝説〜  作者: 凡風
〜精霊騎士養成大学校 決闘編〜
41/51

4−3 楽をする時は必ず

よろしくお願いします。

「ノル、おはよう」


「おはよう……良い天気だね、今日」


「起きる?」


「うん」


 起床の意思を伝えた僕はクァインに体を起こしてもらう。


 それからクァインにカーテンを開けてもらい、クァインに着替えさせてもらい、クァインに顔を拭いてもらい、クァインに歯を磨いてもらい、クァインに…………。


 僕の1日はこうして始まる。


 このような両手を必要とする日常生活の動きも、精霊魔法で再現できなくはない。でも当たり前だけど、できるとは言っても両手ほどスムーズにはできない。

 代わりにやってくれる人がいるなら頼ろう。ずっと前からそういう方針でいる。


 例えるなら、毎日美味しいご飯を作ってくれる人がいるのに、わざわざ自分で作ろうとは思わない。という感覚に近いかもしれない。


『楽をする時は必ず何かを失い、楽じゃないことをする時は必ず何かを得られる』


 これはルル姉に言われたことなのだけれど、僕はその通りだと思っている。

 移動に楽を使えば、体力や乗り物の運転感覚を失う。楽にお金を得てしまうと、労働勘や金銭感覚を失うだろう。


 逆の例えを出すならば、楽じゃない『結婚や子育て』をするとする。大変な思いをする代わりに、子供の成長を感じる喜び、他人と密接に関わることで様々な発見の機会が得られる。それは、結婚も子育てもしない楽な独り身生活を送っている人には得られないもの、と言えるだろう。


 でも、ルル姉はこうも言っていた。


『楽をする時は、失う物を自覚して楽をしなさい。そうすれば必要になった時に補うことができるわ』


 楽をすることは悪いことじゃない。人間の進化の歴史を要約すると、楽をする歴史なのだから。

 それを否定してしまうと、進化や成長も否定してしまうことになる。大事なのは失っていく物を自覚できるかどうかだろう。


 以上のことを踏まえた上で僕は、自ら望んでやってくれる限りは身の回りのことは全てクァインに任せてしまえ。という結論に至り、こんな生活をしているのである。

 もちろん、いつかクァインに愛想を尽かされた日のために、彼女の目を盗んでは精霊魔法で小物を動かす練習をする事を欠かしていない。


「……うん。バッチリ」


「似合ってる?」


「似合ってる」


「クァインも似合っているよ」


 なんてぼーっと考え事をしている間に朝の身支度が完了してしまった。

 クァインがいてくれるおかげで、不自由を強制されるはずだった僕の生活は、逆に快適オートマチック生活に変貌した。

 いいのかな? と思う事もあるけれど、何も言ってこないからいいんだろう、と思うようにした。

 これでも共依存な関係にならないよう一定の距離は保っている、それがまた結構大変なんだけどね。


 ーーーノル起きてる?


 ーーーうん、起きているよ。こっちで話しかけてくるのは珍しいねルル姉


 突然ルル姉に精神干渉で話しかけられた。

 これは過去の事件で僕と()()()を持った人と行える、音声でも精霊魔法でもない意思伝達方法。

 精霊魔法と違い、相手の意思を無視して強制的に伝達を行えるため緊急時以外は使用しない約束だった。


 ーーー何かあった?


 ーーーいいえ、緊急事態ではないの。ただ伝え忘れていた事があって


 ーーーなに?


 ーーーエスクエラ敷地内で使用される精霊魔法通信は監視されている場合があるから気をつけて


 ーーーそうなんだ。偉い人がたくさんいるもんね、不思議ではないか

 ーーーでも、精神干渉(こっち)でそれを伝えてきたっていうことは

 ーーーこれは大丈夫なの?


 ーーー恐らくは。私が精霊騎士団に在籍していた頃と変わっていなければ…だけど

 ーーーでも大丈夫だと思うわ

 ーーーだって、精霊魔法の法則を無視したこんな意思伝達手段が存在するなんて

 ーーー私ですら知らなかったのだから


 うん百歳のエルフ族。それも精霊騎士団に何十年も在籍していた、元超ベテラン精霊騎士が「知らない」というのだから、これ以上の説得力はない。


 ーーー分かったよ、教えてくれてありがとう。気をつけるね


 ーーーそれとついでに連絡。今日あたりようやく私もエスクエラに着任できると思うわ


 ーーーあ、やっぱり。まだこっちに居なかったんだ、姿を見ないだけかと思っていた


 ーーーとぼけちゃって。同じ施設にいてあなたが私を知覚できないわけがないでしょう

 ーーー復帰の手続きに加えてあのルシフェルの一件、ゴタついちゃってね


 ーーーでもこれからはまた頻繁に会えるんだね。嬉しいよルル姉


 ーーーうっ……もう。そう言ってくれるのは私も嬉しいけれど

 ーーー人前では立場をわきまえて頂戴ね

 ーーー面倒な事に、私って結構名前が通っちゃっているから


 本人は極力表舞台には出てこないようにしていたと言うが、序列下位ですらひとたび動き出せば注目を集める精霊騎士団で、トップクラスの地位に居続けたルル姉の存在は、否が応でも目立つだろう。

 僕の印象だと()()どころではないと思う。


 ーーーうん。それも気をつけるねルル姉


 ーーー人前ではルル姉呼びも禁止だからね?


 ーーーえー


 ーーーえーじゃありません!

ご精読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ