4−1 入学したら
新章本編開始です。僕の中では導入期が終わったので、登場したキャラクターをここからどんどん動かしてきたいと思います。ノルくんもそろそろ暴れてくれたらな〜と画策しています。よろしくお願いします。
エスクエラ入学から少し経った、ある日のお昼時。
競争率が高い食堂やテラスから離れた、庭の端にあるテーブルでクァインと一緒に昼食をとっていると、見知った顔が近寄ってきた。
「ようご両人。またこんな離れた所で昼メシか?」
「うん、お気に入りなんだここ。景色がいいし、人気が少ない」
「まあそれは正解かもですね。ノルくんたちの食事姿は目を引きますから」
2人ともアンダーナイトの証である深緑色のローブを羽織っていた。まだピカピカだ。
もちろん僕たちも同じものを着用している。
フューとヤンはよく行動を共にしている姿を見る、環境が変わっても仲良しのままみたいだ。
「2人はこれからお昼休み?」
「まあな。ハリソン教導官の剣技講習が長引いてね、腹ペコだ。なあ、俺たちもここで食べていいか? 食堂の方はもういっぱいでさ」
「うん、もちろん。良いよねクァイン」
「ノルがいいなら」
仲睦まじいを通り越したクァインとのやり取りを見て2人は苦笑した。
「そっちも相変わらずのようだな」
「ですね」
彼らなら僕とクァインの間柄はもう知っている。同席はなんの問題もない。
「でも思ったより顔を合わせますよねボクたち。入学したらもっと疎遠になると勝手に思っていました」
「まあ、よく考えれば当然だ。試験の時の思い出が無くなる訳じゃないんだ、入学した途端にはいサヨナラはおかしいだろ。同じ学舎で生活していれば普通に会うだろうさ……ってか、そもそも寮生活だしな」
「あ、でも。最初に言われた通り、同じチームの人以外は僕もう覚えてないや」
「いいんじゃないか別に。俺たちは友達を作りに来た訳じゃないんだ」
「仲間作りは必要みたいですけどね。重要な実習や訓練は複数人のチームで受けるものが多いみたいです。試験の時にみんなと仲良くなっていなかったらと思うとゾッとします」
「ま、そういうのも含めた試験だったんだろ。あの短い時間でどれだけ絆を結べるか……その点は俺たち満点合格だったんじゃないか?」
「……フューって、結構気恥ずかしいことも平気で言えるよね」
思い出とか絆とか、出会って数週間の相手に言うには少し勇気のいるワードだと思う。
ヤンも同意なのかこくこくと頷いていた。フューは指摘を受けて「ん、そうか?」と少し不安な様子を見せたから「それが良いところだよ」とフォローすると、安心していつものようにニカっと笑った。
雑談をしながら食事をとっていたら昼休みはあっという間に終わってしまった。
午後の予定に向かおうとしたフューは一旦歩き出したのだが、何かを思い出したように足を止めた。
さっと僕に距離を詰めてくると耳元で、クァインにすら聞こえないような小声でこう言った。
「今日の夜。就寝時間前にクァインを撒いて、ノルだけで寮のトイレに来られるか。相談がある」
* * * * * * * * * *
せっかくできた友達に相談があると言われては無下にはできない。
僕は言われた通りに1人でトイレへ向かった。
そこにはフューとヤン、そしてリードもいた。試験の男子メンバー集結である。
トイレの洗面台付近でたむろしていると、それだけでなんだか不良生徒に見えてくる。
ちなみに寮のトイレはかなり広いので、使用者の邪魔にはなっていない。
「来てくれて助かったぜ、ノルも知恵を貸してくれ」
「一体何の話?」
何の話かは知らないけれど、こういう青春イベント的なノリはとてもワクワクする。
「その前にクァインさんにはなんて言って出てきたんですか? ノルくんを心配して追いかけて来られたら困ります」
「ただでさえ、男子寮で女子が生活している事にみんな結構戸惑っているからね……特にこの場は、ね。話題的にもヤンがそれを心配する気持ちは分かる」
リードは苦笑しながら男子寮に住む候補生の気持ちを代弁した。
彼が言うように僕とクァインは同じ部屋で寝泊まりしている。改めて考えるとよく許可が通ったなと思う。もしかしたらルルーデさんが手を回してくれたのかも。
「フューに1人で来てって頼まれたから、付いて来ないでって言ってきたよ」
「意外と普通! それならコソコソ誘う事もなかったな」
「すんなりと聞いてくれるかは、相手と外出時間によるけれどね。今回の場合は、嘘をついた方が心配してこっそり付いてくるよ、きっと」
「じゃあ俺らはもうクァインに信頼されてるっていう事か……なんだろう、地味に嬉しい」
「でも今頃、禁断症状が出て震えていたりして」
「はは!まさか。で、話……相談? ってなにかな。もし震えていたら大変だから早く帰ってあげないと」
「まあそれ以前に、普通に就寝時間もあるしな。ヤン、お前から言うんだ」
フューはヤンのために僕たちを集めたのか。ここでようやく状況が飲み込めた。
視線が集まったヤンは何かに迫られている、焦っているような様子だった。
「時間が、無いんです……」
震える声でそう切り出した。かなり深刻そうだ。
思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
思い詰めた表情のヤンは続けてこう言った。
「ボクに、恋人ができる手助けをしてください!!」
〜はみ出し小話〜
「でも今頃、禁断症状が出て震えていたりして」
「はは!……まさか」
フリードリッヒの冗談半分の言葉をノルは笑い飛ばしていたが。
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「………ノル、遅い」
ガタガタガタガタガタガタガタ……………
事実だった。




