3−18 精霊騎士への第一歩
よろしくお願いします。
突如として現れ、混乱をもたらした悪魔たち(後にもう一体の悪魔が来ていた事が判明した)は何の痕跡も残さずに消え去った。
僕たちは気がついた時には露天風呂に立っていた。
まるであの空間が幻で、夢でも見ていたのではないかと錯覚するような不思議な気分だった。
しかしルシファーと過ごしたあの時間は紛れもなく現実で、僕がアレクサンドラさんに詰問を受けるのは必至だった。
「さあ、ノル君。聞きたい事が山ほどある」
「まあ、そうだよね」
「私は精霊騎士団の下部組織に所属している以上、答えによっては精霊騎士団に報告する義務がある。これはルシファス絡みの最重要案件だ……」
精霊騎士団の敵対勢力筆頭との繋がりを匂わしてしまった僕という存在は、今すぐ精霊騎士団に引き渡されて尋問されてもおかしくないほどの重要人物だろう。
しかし問答無用でそうしないっていう事は、アレクサンドラさんにも何か思惑があるのかもしれない。
「お願い!」
パンッと反射的にクァインが僕の代わりに手を合わせてくれた。流石は長年僕の腕をやってきた相棒だ。
僕は言及される前に先手を打つ事にした。
「僕は精霊騎士団の味方だよ、これだけは約束する。だからさっきの事について深く掘り下げるのは勘弁して貰えないかな」
「……条件がある」
「どうぞ」
「私の望みを叶えてくれるのであれば、先ほどの悪魔との会話は聞かなかった事にしよう」
「僕が叶えられる望みであれば」
「私は精霊騎士になる前に死力を尽くした全力の戦いがしたい。いま在籍しているエスクエラ生の中にはこの願いを叶えてくれる存在が居ない。それだけがここでの心残りなのだ。底知れない君の力の根源を私自身の力で引き出してみたいという願望もある」
「うん、そのくらいならいいよ。今から戦えばいい?」
「はっは! そうしたいのは山々だが、どうやら今日は時間切れのようだ。見ろ、夜が明ける……試験が終わる」
今日という日が訪れることを祝福するかのように朝日が差し込み、美しい朝焼けの風景が映し出された。
長い夜が明けた。
「じゃあどうするの?」
「これは私にとって大事な儀式と言っても差し支えない。ただの野良試合にしては興がのらないだろう。そうだな……エスクエラの定期行事に『精霊戦』と呼ばれる決闘大会がある。精霊騎士団の青田買いも兼ねたイベントだ。優勝者は会長である私と手合わせする事が習わしとなっている」
「つまりは僕がその精霊戦で優勝してアレクサンドラさんと戦えって事? もし優勝できなかったら?」
「君の事を精霊騎士団へ報告せざるを得ないな、知っている事を吐いてもらう事になる……なんだ、自信が無いとでも?」
「ううん。可能だよ」
どこまで力を隠しながらできるかは不明だけどね。でもそれはこちらの問題だ。ある意味軽く脅されてしまっている以上それは優先事項ではないだろう。
僕の答えを聞いたアレクサンドラさんはニンマリと笑った。
「そうこなくては」
「あ、でも。この二次試験に合格していなければ、精霊戦にエントリーする事すらできないんじゃない?」
「ああ、それに関しては安心してくれていい。君たちが宿泊棟から飛び出してきた時点で合格は確定している。見事に襲撃を予知して対策を練っていた訳だからな、そこから先は正直言うと私の趣味だ」
「はた迷惑な趣味もあったもんだ」
「はっは! まあそう言うな。君の処遇についてはとりあえず精霊戦まで保留、という事だ」
何はともあれ僕たちは無事、精霊騎士への第一歩。精霊騎士候補生になれたのである。
ご精読ありがとうございました。今章はここまでです。次話からは精霊騎士養成大学校編をお送りする予定です。
次回もよろしくお願いします。




