3−11 迫る常闇
よろしくお願いします。
状況が続いている試験会場では、ノルたちのチームが必死にアレクサンドラを相手にしている。
時を同じくして、その深夜の会場に人ならざる者…招かれざるゲストが迫っていた。
ーーークッククク……ククッーーー
ーーー……ねえ。さっきから不快な声がこっちに響いてきて、大変、それはもう大変に不愉快なのだけれどーーー
ーーーおっと、これは失礼。麗しのリリス殿ーーー
その2人……霊素に分解され意識として現世に存在する者たちを人と定義して良いかは定かではないが、2人の悪魔が高速で移動しているのは、人が容易に到達できない高度上空。
肉体を持たない、否、高密度な霊素で肉体を形成する彼らにとっては、実体化していたとしても、空気が薄い極寒の上空、マグマが流動する灼熱の地底、穏やかな風が吹き抜ける温暖な草原、その全ての環境に大した差はない。
ろくに話も聞かせず自分を連れ出したルシファーに対し、部下であるリリスは不満を隠そうともしなかった。
だが、普段の冷酷な彼からは想像もできない上機嫌な様子に、リリスは不覚にも興味をもってしまったのだった。
ーーーそろそろ聞かせてくれても良いのではなくて? あたしを連れ出した理由ーーー
ーーーまさか、夜のデートって訳でもないのでしょう?ーーー
できればこんな独尊的な奴と会話などしたくない。しかし、好奇心が優ってしまった。
ろくな返事など期待していなかったが、すぐに返答があった。今夜のルシファーはかなり上機嫌なようだ。
冷酷無慈悲と思っていた悪魔王の返答に、リリスは始め耳を疑った。
ーーー初恋相手に会いにいく気分。そう言えば、あなたなら分かるのではないですかーーー
ーーーいったい誰に会いにいくというのかしらーーー
ーーー…………ーーー
無回答。先程の返答もリリスの質問には答えていない。
どこまでも自分勝手な奴だ、とリリスは憤りそうになるのを我慢した。
奇しくもその回答は、彼女の興味を惹きつけるには十分すぎたからだ。
ここで気分を害して帰ってしまうのは勿体無い。
リリスは若干の不本意を覚えながら、今宵は王に従うことを決めた。
意識と存在の情報を持った霊素。
人からのあらゆる感知を許さず、不可視の存在となった彼らの行手を阻める者はない。
ご精読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。




