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1ー1 一転 

この章はほぼ世界観紹介やメインキャラクターたちの紹介に当てており、正直しばらく登場しないキャラクターによる話です。

かったるい方は次の章まで飛ばして、もし気になったら戻ってくる方がいいかもしれません。

主なお話は次章より始まります。

 ノルが精霊王と接触してから十と幾年。

 ここは森精霊の街と呼ばれている「フォレスティア」。人を寄せ付けぬ密林地帯につくられた秘境の街である。


 年頃の少年へと成長したノルはいつものツレと共に買い物へ訪れていた。

 ノルは両腕を失った不自由な体での人生を.........


「ノル、口開けて。はい、あーん」


「クァイン......やっぱり、自分でやるよ。精霊魔法で食事くらいならなんとか......」


「ダメ。私は、ノルの腕として生きると約束した。この腕も体も心も、私の全ては貴方のもの。気にする必要は何もない」


 ......謳歌していた。少なくとも()()から見れば。


「妬けるねぇ。今や、ルルティア近郊じゃあ傾国の美少女ハーフエルフと誉れ高いクァインが、献身的に世話してるっていうのに。あーあ、変わって欲しいって奴はごまんと居ると思うぜ......オレも含めてな!」


「その獣臭い口をなんとかしてから出直してきなさい駄犬」


「ひど! 狼人族(ワーウルフ)なんだからせめて狼扱いしてくれっ......なあブラザーノル。オレの口って獣臭い?」


「ま、まあ、少しは。クァイン。これでもディックはルルティアの領主なんだから、もう少し穏便にね」


 少し不満そうな視線をディックに送るクァイン。ノルに言われて仕方なくといった様子でコクリと小さく頷いた。


「そんな領主様が、こんなところでのんびりしていていいの? マキナ、よく許してくれたね」


 クァインの鋭い指摘にビクリと体を震わせるディック。さっきまでダランと垂らしていた尻尾を逆立てている。


「ま、ままま、まあな。たまには、休憩も必要ってもんさ」


「そうやっていつもサボっているじゃないか。その内、マキナに愛想を尽かされても知らないよ?」


「ふっ。このオレと血を分けた大事な妹が、そう簡単に愛想を尽かすわけないだろう? なんだかんだ言って、信頼しあてんのさ、オレたちは。アイツのことはオレが一番よくわかって......」


「はい、ノル。あーん」


「クァイン。せめてその、あーん、って言うのやめてくれない? ちょっと恥ずかしいよ」


「大丈夫、恥ずかしがっているノルも可愛い」


「何が大丈夫なの!?」


「聞けよ! 領主様の大事な話をよっ!!」



 ーー魔獣が出たぞっ!!!ーー



 突然響き渡った大声に、昼食どきで繁盛していた露店街は騒然となった。


「どっちだ! 探知できるかブラザー」


 ディックは反射的に立ち上がって叫んだ。情報をわずかでも得ようと、無意識に鼻を高く上げて左右へ忙しなく振っている。


西()()だ! ......まずい、これは岩石熊(ロックベア)だ、突破されるよ。クァイン急ごう、ついて来て! ディックは住民の避難誘導!」


 ノルは素早く指示を出すと即座に駆け出した。


「がってんだ! おーーーいっ!!! 領主ディックがここにいるぞーー! 死にたくねーやつは、オレについて来い! 我らがルルティア国旗について来いっ!!」


 ディックは大声で叫び、精霊魔法で大きな旗を生成すると高々と掲げた。


 旗には、ノルたちがみんなで考えて作ったルルティアの国旗が描かれている。こけしのようなシルエットとその後ろに少し歪な逆三角形を合わせたモチーフ。


 大声よりその視覚的なアプローチが効果的だった。パニックになりかけた人々は冷静さを取り戻し、次々とディックに追従して避難を始めたのだった。


 直後。


 西の方から、木材が引き裂かれるような外壁の断末魔が響いてきた。それは喧騒の中でも微かに聞こえたという。

ご精読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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