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精霊界のノル・クァイン〜無腕無敵の最強騎士伝説〜  作者: 凡風
〜精霊騎士養成大学校 入学試験一次試験編〜
13/51

2−5 一次試験の内容

よろしくお願いします。

「ノルと言ったか。お前は残ったんだな」


 明らかに人が減り静けさを帯びた試験会場で、フューエンは無腕の受験生に声をかけた。


「うん。僕は始めから精霊騎士の試験を受けに来たつもりだったから」


「そっちの子もかい?」


 フューエンはノルのそばにピタリと控えているハーフエルフの少女を指して訊いた。


「......」


「俺、何か気に触るようなこと言った?」


 クァインの無反応ぶりにフューエンは不安げな表情でノルに聞いた。容姿に驕っているつもりは無かったものの、女性から無視される経験をしたことが無かったフューエンは動揺してしまったのだ。


「ごめんね、人見知りしているだけだよ。クァインは僕の腕代わりをしてくれているから、基本的には僕と行動を共にすると思うよ」


「へー、羨ましいことですね」


「おい、ヤン」


 思わず本音が口から出たヤン。フューエンに咎められて、その言葉がノルの身体的特徴を揶揄しているとも捉えられることに気づいた。


「あ! いや、その、とびきりの美人にお世話をしてもらえるという状況を羨ましいと言ったのであって、体のこと....というか、深い意味はないんですよ」


「あはは、分かっているよ。クァインは美人だからね、よく言われる」


「....../ / /」


 クァインは無言のまま俯いてしまった。心なしか頬も赤い、照れているようだ。艶っぽいその表情を見て、彼女の美貌に慣れていないフューエンとヤンは思わず魅入りそうになってしまった。


「ふうん。こ恋人なんですか?」


 気心知れた2人の間柄を見て、ヤンは咄嗟にさらに踏み込んだことを聞いてしまった。


「ヤンおま....お前、初対面の相手によくそんなズケズケと....」


 デリカシーのカケラも感じさせないヤンの言動に背筋が凍りっぱなしのヒューエン。

 しかしノルは、なんの躊躇いも見せずに真正面から物を言ってくるヤンの態度が新鮮で清々しさすら感じた。気を悪くするどころか表情は明るい。


「ふふ、恋人とは言えないかな....むしろ、恋人から1番遠い関係かもね」


「....だ、そうですよフューくん」


「なんで俺に振るんだよ」


「いいえ、なんとなく」


「ヤン、言っとくが別に俺は....」


『注目! それではこれより、一次試験の内容を説明する』


 壇上のハリソンが一度声を張り上げたことで、フューエンは最後まで言い切ることができなかった。

 ノルたちを含め、その場に残っている全員が会話をやめて試験監督官に集中した。


「一次試験である実技面接の内容を伝える。まずは最大人数3人のチームを作ってもらおう」


「3人というのは、精霊騎士団一個小隊の人数ですね」


「分かってるよ黙ってろ。目ぇつけられるぞ」


「チームごとに別会場へ移動。そこで順番に精霊魔法で遠隔操作をしている魔導人形(ゴーレム)と戦ってもらう。以上だ、何か質問は」


 すぐにいくつかの手があがった。


「そのゴーレムを破壊、もしくは戦いに勝利すれば合格ですか?」


「好戦績の方が望ましいが、戦闘の勝敗がそのまま合否にはならない」


 負けたとしても即不合格にはならないが、逆もまた然りということだ。


「....結果に関わらず、か。戦闘内容で判断してくれるみたいだね」


「ああ、精神面や性格も同時に見られそうだ」


 戦闘の勝敗がそのまま合否にはならないとはどう言うことか、一拍遅れて理解したヤンは2人に確認する。


「勝てても卑怯な手を使えば落とされるし、負けても一生懸命頑張れば合格するかもしれないっていうことですか?」


「そう言っているだろ、ちゃんと聞いていなかったのか?」


「なんか、ボクにだけ当たりがキツくないですか!?」


「仲良しだからな」


「それならいいです!」


 フューたちは壇上に意識を戻した。ハリソンが次の質問を受けるところだった。


「ゴーレムは遠隔操作とおっしゃっていましたが、誰が動かすのでしょうか」


「ま、当然気になるよな....うーむ、まあ別に教えても大丈夫だろう。現役のエスクエラ生だ」


「と言うことは、我々はいきなり騎士候補生(アンダーナイト)と戦うんですか!?」


「安心しろ、戦うと言っても3対1だ。よっぽど運悪くゴーレム操作が得意なやつに当たらなければ普通に戦える。あっちは自分の体じゃなくて、人形を操って戦闘をするんだからな。指一本動かすのにも繊細な霊力操作が必要なんだぞ、ハンデは十分だろう。他に質問は......無いようだな。よしよし。では今から15分やる、早速チームを作れ。3人揃わなければその人数で挑んでもらう。これも試験の一環だ」


 ハリソンの一声で一次試験が開始された。


 試験会場は途端に騒がしくなった。

 自己紹介をして回る者、逆に手当たり次第に質問攻めを行う者、見知った者同士で固まる者たち。はたまた隅っこで縮こまってしまう者....運よく試験前に知り合いができていたノルたちだったが、3人という人数に頭を抱えた。


「3人か、運がないな」


「そうだね、クァインが僕以外と組むことはないだろうし、フューエン君も....」


 振り返ったフューエンは無言のまま涙目で袖を掴んでいるヤンと目があう。「見捨てないでくださいぃ....」と訴えているようだ。


「ま、こーいうのも含めて()ってやつかな」


「うん、分かれてチームを組むしかないね。チーム同士で戦う試験じゃなくてよかった」


 ノルはフューエンと健闘を祈り合って分かれた。


「さてクァイン、君が前衛で僕が後衛。もう1人はどういう人を誘おうか」


「私はノルの判断に従う」


「ま、そうだよね....」


 ノルは予想通りの返事を聞きながら周囲を見渡した。


「せっかくなら、出会ったことが無いようなユニークな人がいいよね」


 そう呟きながら何気なく会場を見渡したノル。すると大きな三角形の魔女帽子を目深にかぶり、他の受験生を避けているような人物が目についた。

 その人物は会場の隅っこに居座って動こうとしない様子。試験を受ける意思を持ちながら、参加する気がないように見える。アンバランスでユニークな人物。ノルの目にはそのように写った。


 スカートを履いていることから女の子だろうとは予想できる。しかしそれ以外には小柄な体格だというくらいしか情報がない。


 その異様な雰囲気を察して誰も近寄ろうとはしていない。

 ノルはそんな受験生から何かを感じとり、ゆっくりと近づいて行ったのだった。

ご精読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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