二幕 旅団②
翌日、予定の時間を少し遅れて僕は到着した。
「翠松亭」という小さなカフェ。アーケードのパン屋とクリーニング屋の間にある携帯ショップの2階、とは言ったものの、その間の小さな路地にある看板のない小さなお店だから全く見つけられず、窓から覗き込んで伊桜美知を見かけたので、ようやく確信を持って店内に入ることが出来た。
北欧風の白を貴重とした店内。4人がけのテーブルが4つしかない狭い店内、アンティーク調の家具がとても映えるきれいな店内だった。
あいにく、路地裏にあるのと、曇り空だったため日は入らないが、落ち着ける、いい店を教えてもらった、と僕は思った。
4人がけのテーブルに、美知と、もうひとり知らない男が座っていた。
「あ、神埼君、やっときたね。」
「今日何時に待ち合わせにしてたっけか?5分も遅れて来やがって…。」
隣の男が明らかに僕に敵意を向けて小言を言ってくる。僕は苦笑いしながら、向かいの椅子に腰掛けた。
「ああ、ごめん、彼は来栖丈君。同じ能力者で、彼も、同じ目的を持った仲間なの。今日は、時間を合わせて来てもらったの。」
「そういうこった。お前、美知と同じ大学なんだってな?あの日の事、誰にも喋ってないよな?」
金髪ツーブロックで、強面の見た目でいかにも関わりづらい、そんな第一印象を僕は丈に抱いた。
「あの後は短期入院をした後、家と病院を往復する日がほとんどだったし、医者や警察に説明しても頭がおかしいと思われただけだった。身内とかにも会ってないし、喋ってはないですけど…」
「まずいな〜…」
「ええ、そうね…ごめんね、少し口止めをしておくべきだったわ。私も、少しペラペラ喋ってしまったから。」
2人は顔を見合わせて喋っていた。その間に僕はまだ飲み物を頼んでいないことに気付いて、コーヒーを頼んだ。
「この店は誰も来ないからいい。店も静かだし、でかい声で喋らなくてもいい。この街に越してから、よくこの店を俺らは使ってるんだ。」
既に飲み干したアイスコーヒーの氷をガリガリ食べながら、来栖は続けた。
「まず、お前。神埼君だっけ?お前はこれから、まず命を狙われる。大学もしばらくいくな。地元に帰るなりなんなりして、おとなしくしてろ。」
「え?どういう事なんだ?それは、この前の出来事…その、怪物になった男だったり、伊桜美知が関係しているんですか…?」
「うーん、まあそんな感じだよな〜…。でも、どこから喋るべきかな…」
「あの怪物はなんなんです…?」
「ああ、超人のことね〜。でもこの話を聞いたら、もう後戻り出来なくなるけど、大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。」
そう答えると、丈はカバンから鍵を出した。この前見たのとは違うタイプの鍵。昔の錠のような、古いタイプの、でっぱりがついているタイプの鍵だ。
「まず、超能力ってのは実在する。ものを動かしたり、透視したり、そういう類の、超能力者ってのは実在する。が、実在はしねー。どういうことか分かるか?」
丈は自分の氷を食べ尽くすと、僕のアイスコーヒーを奪って飲み始めて、話を続けた。