しらたまあんみつ
私の魔力でつくり上げた私の可愛いキッチンの調理台の横には、エーリスちゃんたち用の可愛い椅子もある。
ふかふかのマカロンクッションの上にさっそくシエル様の肩にいたメルルちゃんが飛び移って丸くなると、すぴすぴ寝始める。
エーリスちゃんたちも皆でくっつくようにしてちょこんと座った。
「それで、リディア。何を作るんだ? イチゴパルフェか?」
ルシアンさんが尋ねてくるので、私はうーんと首を捻って、それからぽんっと手を打った。
「イチゴパルフェは二度目になってしまうので、たまには毛色を変えて和国のスイーツにしようかと思うのです」
私がぽんっと手を叩くと、調理台の上に食材がぽんぽんぽん! と現れる。
星型の光と共に現れる食材。なんだか以前よりもちょっと、女神のキッチンの仕様が愉快な感じになっている気がする。
気のせいかしら。
「粉だな」
ロクサス様が訝し気に眉を寄せた。
「白玉粉ですね」
「白玉粉……?」
「ロクサス様、食べたことがないですか? じゃあ、皆の分もつくりますね」
そういえば私は豪華なドレスを着ているのだけれど、女神のキッチンの効果かいつの間にかエプロンをドレスの上からつけている。
フリルが多めの可愛いエプロンだ。私の趣味が反映されているのか、女神のキッチンは全体的に白とかピンク色とかで可愛らしくできている。
「この粉に、ぬるま湯を入れて、こねていくんです」
女神のキッチンのシンクで手を洗ってから、小鍋に水を入れてお湯を沸かした。
ボウルに入れた白玉粉に人肌程度に温めたぬるま湯を少しずつ入れて、こねていく。
粉がすぐに一塊になって、もちもちの感触になってくる。
エーリスちゃんぐらいにもちもちの感触だ。
ガラスの筒の中に入っているメドちゃんの質感が、もちもちぷるぷるしていそうだったので、作りたくなってしまったのよね。
「ただの粉なのに、お湯を入れただけでここまで形が変わるものなのですね」
「そうなんです。お餅をつくのは結構大変なのですけれど、白玉粉をしらたまにするのは簡単なのですよ」
シエル様が感心してくれるので、私は微笑んだ。
「だいたい、耳たぶぐらいの硬さになったら、これを一口大のまん丸にしていきます」
「耳たぶぐらいのといわれても、難しいな」
ルシアンさんが言うので、私は白玉粉で少し白くなった手で、耳を示した。
「触って確かめてみるといいですよ」
「触っていいのか?」
「……ルシアン。発言に下心があると見做した場合、動物たちにお前をぽよぽよしてもらうが」
「どういう状況ですか。ちょっと楽しそうですね、それ」
ステファン様が怒っているわね。ぽよぽよしてもらうってどんな感じかしら。私もやって欲しい。
「たくさんあるので、手伝ってくれますか? 一口大にまん丸くしていくのですが、黒ゴマで目や鼻をつけますので、エーリスちゃんたちの形にしてもいいですよ」
「なるほどね。それは楽しそうだね。どんな形でもいいの?」
「はい。でも、あんまり大きいと食べにくいので、小さめでお願いしますね」
「うん。ロクサス、これならロクサスにもできるんじゃない? 丸めるだけだし」
「そ、そうだな。それぐらいなら俺にもできる」
レイル様が言うと、ロクサス様が嬉しそうにした。
そういえばロクサス様、お料理の時は動くなって言われてばかりいたから、お手伝いしたことがないのよね。
白玉を丸めるだけなら大丈夫だと思って、私は白玉を丸めるのを皆にお願いすることにした。
その間に、しらたまを茹でるために大鍋にお湯を沸かしていく。
シエル様が、ファミーヌさんの形をしたしらたまを作っている。
眠っていたメルルちゃんが顔をあげて、少し羨ましそうに「きゅお」と鳴いたので、メルルちゃんの形もつくりはじめる。
ルシアンさんもイルネスちゃんの形を。まんまるのうさぎちゃんが並んでいく。
ステファン様はお父さんの形を作っている。ふわふわを再現するのが難しいみたいで、耳の垂れた犬の顔になっている。
レイル様とロクサス様は、エーリスちゃんの形を作っている。
レイル様は綺麗なエーリスちゃんを、ロクサス様のエーリスちゃんは少し大きくて丸い。
でも、皆可愛い。
できあがった白玉から、どんどんお湯に入れて茹でていく。
ぐつぐつ茹でられて、ぷにぷにつるんとしたしらたまがお湯から浮いてくる。
それをすくって氷水につけて、硝子の器に魔法で出現させたつぶあんを入れて、可愛いしらたまを並べていく。
黒ゴマで目をつけて、必要な子には鼻をつけて。
シロップ漬けのミカンと、鮮やかな色のチェリーと苺を飾る。
ガラスの器の中で、動物たちがぷるぷるしている。
とっても可愛い。今まで、結構余裕がなかったから、余裕がない中でお料理をしたりしていたから。
もうとっくに倒し終わっているメドちゃんを助けるための料理は、心のゆとりをもって作ることができてよかった。
「できました! 皆一緒に動物しらたまあんみつです!」
エーリスちゃんたちが寄ってきて、嬉しそうに手をぱたぱたさせた。
沢山作ったので、皆の分もちゃんとある。
ロベリアで商品化したいぐらい可愛い動物しらたまあんみつの飾り付けを全て終えて、私はやりきったという気持ちで、綺麗に並んだしらたまあんみつを眺めて微笑んだ。
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