嫉妬2
読み方
「」普通の会話
()心の声、システムメッセージ
『』キーワード
<>呪文
ミリアはアルトを東屋から呼び出して、中庭の一角でアルトに向き合っていた。
「急に呼び出してどうしたんだい?」
「裏切者!裏切者!裏切者~~~~~!」
ミリアは心にため込んでいた言葉を吐き出した。
「急にどうしたんだ。ミリア」
アルトは身に覚えのない事で責められ困惑していた。
「私以外の女性と楽しく会話する何て許せない!どうしてあなたは楽しそうに話をしているの?私の事だけを愛するって言ったのは嘘だったの?」
(自分でも分かってる。言いがかりに近い嫉妬だって……。でも、苦しいの、辛いの、悲しいの……)
「嘘じゃない。今でも君だけを愛してる」
「なら、殴らせて」
「え?なんで?」
「な~ぐ~ら~せ~て!」
ミリアは顔を膨れさせ、駄々っ子の様に言った。
「分かった。良いよ。それで、君の気が済むのなら」
「アルトの馬鹿~。浮気者~」
そう言って、ミリアは力なくアルトをポカポカと殴りながら顔をグシャグシャにして泣いていた。
「ごめんなさい。こんなワガママな女でごめんなさい。こんな嫉妬深い女でごめんなさい。どうか、私を嫌いにならないで~。うぁぁぁぁ~~~~~」
そういつつ、ミリアはアルトをポカポカと殴り続けた。
「嫌いになんかならないよ」
アルトは殴られながら、ミリアを優しく包み込むように抱きしめた。
(ああ、幸せ……)
(ちょっと、どさくさに紛れて何すんのよ!)
セリアはアルトを突き飛ばそうとした。
(待って!お姉ちゃん。少しだけ、少しだけ許して……)
(分かった。十秒だけ我慢する。い~ち、に~い……)
「はい、ボーナスタイム終了!」
セリアはミリアから体を奪いアルトを突き飛ばした。アルトは突き飛ばされながらもバランスを崩すことなく立っていた。
「今回は許してくれたんだね」
アルトは、最初から突き飛ばされると思っていたが、以外にも抱きしめられたことに驚いていた。
「特別よ!ミリアが弱ってたから少しだけ譲歩したの!」
「そうか、次はもっと譲歩されるように頑張るよ」
「そう。それで、嫉妬されて暴力を振るわれた感想は?」
(ちょっと姉さん!)
「可愛かった」
「はぁ~。悔しいけど、正解!この女ったらし!」
「酷い言われようだね」
「でも、ミリアが言われたら一番うれしい言葉だと思う。そこだけは認めてあげる」
(姉さん。私の為に?)
(違う!アルトが女ったらしだと証明したのよ!)
「ミリアが喜んでくれたのならそれでいい」
(ああ、本当にこの男はミリアが好きなんだな~。嫉妬されて、暴力まで振るわれても可愛いなんて言えるなら、どんなケンカしても許すんだろうな~って思っちゃうじゃない……)
ミリアは東屋に戻り、マリアの隣に座った。
「あの、マリア。今まで無視してごめんなさい」
ミリアはマリアに頭を下げて謝った。
「良いよ。それで、原因は嫉妬?」
「うん。ごめん。マリアとアルト様が楽しそうに話してるの見たらムカムカして……」
「私よりも美人で、気品があって、家柄に恵まれて、教養もあるお嬢様に嫉妬されるなんて光栄だわ」
「それって、皮肉?」
「そうよ。だって、事実じゃない。ミリアの様なお嬢様が、私の様な平民に嫉妬だなんて笑えるわ」
「ごめんね。心が狭くて」
「これで、おあいこにしてあげる。だから、ミリアも私に言いたいことはちゃんと言ってね。友達なんでしょう?」
「うん。ごめんなさい」
「で、私はアルト様と会話しない方が良い?」
「いいえ、そこまでしなくても良い。ここに居るみんなと仲良くして欲しい。これは本心よ。それでも、嫉妬してしまった私が悪いの……」
「じゃあ、約束してムカつくことがあったらちゃんと話すって」
「分かった。約束」
(今は、何とかなったけど、これってこの間の悪夢へとつながってるんじゃ……)
セリアは不安になった。悪夢でミリアが言った「マリアと楽しそうに会話するアルトを信じ続けることに疲れてしまった」セリフに繋がる展開だった。セリアはあの悪夢が予知夢でない事を願った。




