悪夢
読み方
「」普通の会話
()心の声、システムメッセージ
『』キーワード
<>呪文
セリアの目の前には、大きな液晶ディスプレイが置いてあった。その場所は真っ暗でディスプレイの他にはディスプレイに繋がれたゲーム機だけが置いてあった。
セリアは他にすることもないのでゲーム機の電源を入れた。するとディスプレイにアランとミリアが牢獄に繋がれている映像が映し出された。
「なぜ、マリアを殺さなかったの?」
ミリアがアランを責めるように言った。
「すみません。ミリア様の願いはマリアがアルト様の事を諦めることだと思っておりました。なので、痛めつけて脅すだけで良いと判断したのです。それに、ミリア様は本気でマリアを殺す気など無かったのでしょう?」
「そうね。そうよ。本当に殺したいだなんて思ってはいなかったわ」
「でも、何で自白なさったんですか?私はどんな拷問を受けようとも何も話すつもりはありませんでした。もしもの時は死んででも……」
「そうね。私が黙っていればあなたが死んで私は生き残れたと思う。でも、私が自白すればあなたを助ける事が出来る。だけど、それは理由じゃない。もう、疲れてしまったの。マリアと楽しそうに会話するアルトを信じ続けることに疲れてしまった。だから、終わらせようと思ったの……」
「そうですか、私にはミリア様の心が分かりません。ですが、アルト様はミリア様を裏切るような事はしていませんでしたよ」
「もう、どうでもいいわ。アルトのあの嬉しそうな顔を見たら、もう何もかもどうでも良い……」
そう言って、ミリアは膝を抱えて座った体勢ですすり泣いた。
(これは、なに?ゲームには無かった映像だ……)
セリアの隣にはいつの間にかミリアが膝を抱えて座っており、画面には純白のウエディングドレスを着たマリアと純白のタキシードを着たアルトが幸せそうに手を取り合って向かい合っている映像が映し出されていた。
それは、ゲーム内でのエンディングの一つだった。アルトは幸せそうにマリアを見つめ手を取っていた。ミリアはすすり泣いていた。
「大丈夫よ。ミリア、お姉ちゃんが守ってあげるから、こんな結末にならないように、なったとしてもミリアが立ち直れるように、私だけはアルトを信じないから……」
そう言って、セリアはミリアを包み込むように抱きしめた。
「お姉ちゃん。ああ、うああぁぁぁ~~~~~」
ミリアは溢れ出る悲しみを抑え切れなかった。
(今のは夢?)
いつの間にか、明るい部屋で目が覚めていた。ミリアの部屋の知っている天井を見ていた。だが、目じりには涙の後があった。
(お姉ちゃんも夢を見ていたの?)
(同じ夢かな?)
(たぶん。同じだよ。アルトが裏切る未来を見て、私は泣いた)
(同じ夢だね。まだ、アルトを信じるの?)
(うん)
(そう。私は信じないからね)
(うん。知ってる。ありがとう。お姉ちゃん)




