表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生してしまった。だから、私を裏切る婚約者の事を絶対に信じません!  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/48

暗殺者2

読み方

「」普通の会話

()心の声、システムメッセージ

『』キーワード

<>呪文


 訓練場の扉を破壊して駆け込んできたセリアを見つけて、不審に思っていたアランだが、セリアの後から短剣を構えて入ってきた少女を見て事態を把握した。

 そして、一瞬で少女とセリアの間に割り込んだ。少女はアランをヒイロと同じように飛び越えようとした。だが、アランは左手で自分の右肩に置かれた少女の左手首をつかみ取り、ねじって肩から外し、そのまま地面に叩きつけようとしたが、少女は空中で体勢を整えて着地し、アランの左手を振りほどいて距離を取った。


 アランは腰に佩いてある短剣を右手で抜き放って逆手に構えた。

「あ~あ、失敗しちゃった。千載一遇のチャンスだったのに……」

 少女は残念そうにそう言ったが、短剣を構えなおしてアランに対峙した。

「何者だ?」

「暗殺者が名乗るわけないでしょ?」

「そうだな、聞いてみただけだ。ミリア様、生け捕りになさいますか?」

「出来るなら誰の差し金か聞き出して」

「畏まりました」

 ミリアは体の主導権をセリアから奪い、少女からさらに距離を取った。


「私を生け捕りに?ずいぶんな自信ね」

(ゼファールの死神に勝てる気はしないけど、生け捕りにされるほど弱くないわ)

「動きを見れば実力は分かる。君は私より弱い」

「そうかしら?人間の男って女と子供相手だと実力を発揮できないんでしょ?」

「一般的にはそうかもしれない」

「あら?あなたは違うの?」

「戦ってみれば分かる」

 そう言って、アランは一気に間合いを詰めて少女の右手の腱を切った。


「あああああああ~~~。痛い痛い痛い。やめてやめて許して~」

(ゼファールの死神と言えど人間の男だ。泣き叫ぶ少女に追撃なんて出来ないはず。躊躇ちゅうちょしたところを左手で懐に隠してある短剣で……)

 少女は痛みを感じていなかった。魔法で痛覚を遮断していたからだ。見た目は少女だが中身は冷徹な暗殺者だった。演技でアランを油断させるつもりでいた。


 だが、アランは躊躇することなく左手の腱も切った。少女は隠し持っていた短剣を取ることも出来なかった。


(は?)

 少女は驚いていた。アランが全く躊躇しなかったからだ。


「待って、許して!助けて!脅されてやっただけなの!助けて」

 少女は必死にアランに訴えた。


 だが、アランは無言で少女の両足の腱を切り、少女の自由を奪った。そして、無言のまま両腕と両足を縛り止血する。


「なぜだ!なぜ!こんな事が出来る!」

(こいつ、本当に人間なのか?)

「なぜ?簡単だよ。私は只の護衛じゃない、本業は暗殺だ。女、子供も容赦なく殺せるように出来ている。無駄話は終わりだ。知っていることを吐いてもらうぞ」

 アランは無表情のまま背筋が凍るような静かな声で少女に告げた。

(ここまでか、だが、情報は渡さない!)


<深みへいざなえ闇の精霊、我が敵を焼き尽くせ!ダークネス・フレイム>

<深みへいざなえ闇の精霊、我が敵の精神を打ち砕け!ダークネス・ソード>


 少女とアランは同時に魔法を使った。漆黒の剣が出現し、少女の胸を貫いた。少女の目から生気が消えた。


「雇い主は誰だ?」


「ど……」

 少女が何か言おうとしたその時、少女の魔法が発動し少女は漆黒の炎に包まれ消滅した。


「すみません。ミリア様。自殺されました」

「大丈夫よ。良くやったわ」


(アラン……。恐ろしい子……。というか、これだけ完璧な暗殺者が何でゲームではミリアからの命令を完遂出来なかったのかしら?)

 セリアはゲーム内でのアランと現実のアランの出来の違いに違和感を覚えていた。


「ミリア!ケガはないか?」

「姉さん!大丈夫?」

 少女が消え去ると、アルトとヒイロがミリアに駆け寄った。


「大丈夫よ」

「なんで!アランをマリアにつけたんだ!」

 ヒイロは怒りの感情もあらわにミリアに詰問した。ヒイロが怒ったことでアルトはミリアに話しかけるタイミングを失った。


「だって、ユリアがマリアをイジメようとしたから……」


 ミリアの言葉を聞いて、ヒイロは罪悪感を覚えた。ユリアとはアルトとミリアの仲を裂くという共通の目的の為に一時的に手を結んでいた。まだ、その協力関係は続いている。ユリアはヒイロの友達ではないが仲間だった。その事がヒイロには後ろ暗かった。


「分かった。マリアの護衛は僕がする。だから、姉さんはアランを側において」

「え?いいの?助かるわ。ヒイロ」

「姉さんの為だからね」


「私もミリアの護衛をするよ」

「アルト様、嬉しい申し出ですけれど、セリアとの約束を覚えていますか?」

「聖騎士になるだったな」

「私の護衛をしていて、約束を果たせると御思いですか?」

 ミリアは真剣な眼差しでアルトを見ていた。

「分かった。約束を優先する」

 アルトはミリアの事が心配だったが、本来の目的である神域の迷宮を攻略するために、自身を鍛えることにした。

(まあ、アランに勝てない私が護衛についても役には立たないだろうしな……)


(なんか、ゲームと違うイベントが多すぎる)

(姉さんが知っている未来と違ってきているの?)

(どうも、そうみたい)

 セリアは、この先、何が起こるのか予想できなくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ