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悪役令嬢に転生してしまった。だから、私を裏切る婚約者の事を絶対に信じません!  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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因縁

読み方

「」普通の会話

()心の声、システムメッセージ

『』キーワード

<>呪文


(お茶会は成功だったかな?お姉ちゃん)

(たぶん、うまく行ったと思うよ。ミリア)

 セリアとミリアは、お茶会でマリアと他メンバーとの親密度が上がったと思っていた。そして、それは成功していた。


 入学してから1週間が過ぎ、2週間目の光曜日になっていた。ミリアは登校するとすぐにマリアに会うために平民の教室に向かった。

 教室に入ってマリアを探すが姿が見当たらなかった。なので、適当に近くにいた男子生徒にマリアがどこに居るか聞くことにした。


「ねえ、そこのあなた。マリアがどこに居るか知ってる?」

「ゼファール様!おはようございます。マリアでしたら、先ほどアウグスタ様が連れて行きました」

 男子生徒は直立不動でそう答えた。

「そう、どこへ行くとか聞いている?」

「いいえ、存じ上げません」

「そう、ありがとう。アラン。マリアの行先分かる?」

 アランが姿を現し、魔法を使う。

<深みへいざなえ闇の精霊、我が敵を探せ。ダークネス・サーチ>

「校舎裏です」

「ありがとう」

 ミリアはユリアが何をしようとしているのか予想がついていた。

(あの女!私に嫌がらせが効かないからってマリアに手を出すなんて……)




「ねぇ、あなた。ゼファール家のミリアと親しくしてるそうね?」

 ユリアはアウグスタ家が主導している派閥の貴族令嬢を引き連れてマリアを囲み、詰問していた。

「親しくしてると言うか、気に入られたというか……」

(ひぇ~~~~~~~~。ミリア様だけじゃなく、アウグスタ家の御令嬢までも私に絡んでくるなんて……。いったい私が何をしたって言うの~~~~)

 マリアは泣きそうになりながら答えた。


「良い事?ゼファール家と親しくするって事はアウグスタ家を敵に回すって事なのよ?分かっているの?」

「いいえ、存じ上げておりません」

「そう、なら、金輪際、あの女に近づかないでくれるかしら?」

(どんな理由があるにせよ。ミリアがこの女を気に入っているのは確かだし、引きはがせば多少のショックは受けるはず)

 ユリアはミリアが嫌いだった。だから、ただの嫌がらせでマリアを呼び出した。


「え~っと、私の方から避けても、ミリア様が近づいてくるので……」

(どうしろって言うのよ!ミリア様もユリア様も勝手過ぎる。私を巻き込まないでケンカしてよ~~~)

 マリアは貴族と関りを持ちたくなかった。だが、ミリアがそれを許さなかった。


「あら、とても楽しそうなお話ね」

 そこへミリアがアランを連れて現れた。


「ミリア!なんでここに」

「私の大切な友達に会うために来たのよ。なにやら、良からぬことを吹き込んでいたみたいね」

「なんの事かしら?」

「とぼけるの?なら、今後マリアに近づいたら、私の使用人が黙っていないけど良いかしら?」


「使用人を出すの?いい度胸ね。私の使用人よりも強いと言うのかしら?」

 ユリアがそう言うと、中年の男性が姿を現した。黒目黒髪で痩身の鋭い目をした男だった。名前をエルドといった。

「後悔することになるわよ?」

 ミリアはアランが負けないと信じていた。

(なに、このイベント。私は知らない)

 セリアは焦っていた。ゲームではこんなイベントは無かった。

(大丈夫よ。姉さん。アランはとっても強いから)

「エルド!やってしまいなさい」

 ユリアが命じるとエルドはアランを殺すために、右手で短剣を抜き放ち、アランの首筋を狙って接近しつつ短剣を振り抜いた。

 だが、アランは攻撃を避け、相手の右手を左手で掴み、そのまま背後に回り込み後ろ手に拘束した。そして、アランは右手でエルドの首にいつの間にか抜き放った短剣を当てていた。


「このまま、殺しますか?」

「ユリア。使用人を殺しても良いのかしら?」

「くっ、覚えてなさい!」

 そう言い残して、ユリアは逃げ去った。

「アラン。その人、放していいわ」

 アランがエルドを開放するとエルドは姿を消して逃げた。


「ありがとうございます」

「いいえ、ごめんなさい。私のせいね」

 ミリアはマリアを巻き込んだことを自覚していた。ユリアはミリアと敵対している派閥の令嬢だった。王国は今、二つの派閥に分かれて権力闘争を行っていた。グラウ公爵家を中心にまとまっているグラウ派とアウグスタ公爵家を中心にまとまっているアウグスタ派である。


 どちらの陣営もアルトへ自陣営の娘を嫁がせることで、王家への影響力を持とうと画策していた。現王の正妻はアウグスタ家の当主の妹だった。アウグスタ家はアルトへ当主の娘ユリアを嫁がせようとしたが、アルトが拒否し、ミリアを選んだ。

 アルトがミリアを選んだことで、ゼファール家の権力が増す事になったが、ゼファール家は中立を保っていた。グラウ家にもアウグスタ家にも繋がりを持っていなかった。


 だが、アルトがミリアを選んだことで両家から、どちらの陣営に加わるのか迫られ、セトはグラウ家と手を結ぶことにした。だから、ヒイロを養子にとってグラウ派の貴族令嬢と婚姻を結ばせ、グラウ派に加わるという約束をしていた。

 そのため、アウグスタ家の娘であるユリアは、アルトとミリアの仲を裂こうとしたり、嫌がらせを行っていた。


「ええっと、言いにくいんですが、やはり私はミリアと仲良くしない方が幸せになれる気がするのですが……」

「待って!それは困るのよ。だから、アラン!マリアを守って」

「ミリア様、それは出来かねます。旦那様からの御命令で護衛をしているのです。勝手に旦那様の御命令に逆らうことはできません」

「大丈夫よ。学園には警備の兵も居るし、誰かに襲われる心配はないわ」

「あの、今しがた襲われましたよね?」

「いいえ、あれは私から売ったケンカなんだから、こちらから襲われたとは言えないわ」

「ですが、旦那様に逆らう訳にはまいりません」

「いい、これは命令よ!従いなさい、アラン」

 ミリアはアランに凄んで見せた。

(これは、言っても聞かないな、従うしかない)

 アランは経験で、こういう時のミリアは自分の意見が通るまで引かない事を知っていた。

「分かりました。では、マリア様を護衛いたします」

「これで、大丈夫よ。マリア」

「ええ~。ミリアは護衛が無くて大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。今まで襲われた事なんてないんだから」

「そうですか……」

(勢いで言ったけど、大丈夫だよね?姉さん)

(まあ、ゲームでは学園内でミリアが襲われる事は無し、大丈夫でしょ)

 ミリアもセリアも楽観的に考えていた。




 ミリアが去った後で、マリアはアランと教室に向かって歩いていた。

「ねぇ、アラン。あなたが学院に居るのはミリアのため?」

「そうです。ミリア様の護衛をするために来ています」

「じゃあ、授業とか聞いてないの?」

「興味はありませんが、内容は聞いていますね」

「楽しい?」

「別に、楽しくは無いですよ」

「ねぇ、あなたって強いのよね?」

「ミリア様の護衛を任されるぐらいには……」

「じゃあ、午後の授業で剣術の相手をしてくれないかしら?」

「構いませんよ」

「ありがとう」

(強くなるためには、強い人と戦うのが一番よね)

 マリアは上機嫌で鼻歌を歌いながらスキップして教室に入った。


(なにがそんなに嬉しいのだろう?)

 マリアの様子を見て、アランは疑問に思った。アランの知っている訓練とは決して楽しいものではなかったからだ。




 午後になり、マリアとアランは剣の訓練場に入った。そこにはアルトとヒイロが居た。

「アラン!なんでここに居る?」

 ヒイロはアランを見つけて、驚いていた。

「ミリア様の御命令で、マリア様をお守りしています」

「では、姉さんの護衛は?」

「今は居りません」

「なんてことだ。アランすぐにミリア様の護衛に戻れ!」

「それは無理です。ヒイロ様の御命令を聞いて戻ればミリア様に叱責を受けてしまいます。先にミリア様を説得なさってください」

「ああ、分かった」


<吹き荒れろ風の精霊、我の翼となれ!ウインド・ウイング>

 ヒイロは一陣の風となってミリアの元へ急いだ。


「ヒイロ!」

(ああ、もう行ってしまったか、行動が速すぎるぞ!)

 アルトはヒイロと一緒に行きたかったが、移動系の魔法はまだ使えなかった。だから、走って追いかけるしか無かった。


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