お茶会 ジェーンとアラン
読み方
「」普通の会話
()心の声、システムメッセージ
『』キーワード
<>呪文
「ねぇ、アラン。アンネ様とジーク様を見て、どう思う?」
アランとジェーンはお茶会で給仕をしていた。紅茶をカップに注ぎ、お菓子を補充していた。そんな時でも暇はある。
カップも満たされお菓子も十分な時、ジェーンとアランは並んで立ち、用が出来るまで待機していた。そんな時、アンネがジークの口元からお菓子を取って、ジークが顔を赤らめていた。
「なにも思いませんが?」
アランは無表情のまま答えた。
「初々しいとか思わない?」
「よく分からないですね」
「アランは、学園に行ってみて気になる子は居なかったの?」
「そうですね。アルト様とヒイロ様、エース様にロイ様、それと剣術の授業の教官は、敵に回すと厄介ですね」
「そうじゃなくて、異性として可愛いとか思う子は居なかったの?」
「可愛いですか?ここに居る方たちに比べて美しいと思う方は居ませんでしたね」
「比較の問題じゃなくて、異性として付き合ってみたいなとか、話してみたいっていう子は居なかったの?」
「居るわけありませんよ。姉さんが私をそう育てたのだから……。異性を異性として認識しない訓練を受けていますから、どうとも思いませんよ」
「そうなんだけど、少し悲しい答えね」
「なぜ?私は姉さんの教えを守っているのに」
「女心についても教えておくべきだったわ」
「それは、ミリア様の護衛に役立つのですか?」
「役には立たないけど、あなたの人生には役立つわ」
「なら、いりません。私は、旦那様に拾われ使命を与えられました。そして、姉さんに全てを教わり、今はミリアお嬢様をお守りできます。これ以上の幸せはありません」
「そうね。私が、そう教えたものね……」
(はぁ~~~~。本当に今さらよね。今になって、あなたの事を男として意識するなんて思わなかった……)
ジェーンはアランに暗殺術と護衛術の全てを教えた。感情のコントロールも欲望の制御も全て教えた。女性の裸に対する耐性も誘惑に対する耐性もジェーンが自身を使って教え込んだ。結果、アランは完璧な暗殺者となった。
そうして、15歳になり、男らしさが出てきた時、ジェーンはアランに恋をしてしまった。だが、当のアランは感情を持たないロボットだった。色仕掛けも効かない完全なロボット。彼に恋をさせる方法をジェーンは思いつかなかった。
(スキンシップしても無反応だし、抱き付いても無反応、裸みせても無反応、抱き付いて耳を甘噛みしても無反応……。全部、欲望をコントロールする訓練だと思われる……。詰んでる。詰んでいるわ……)
(最近、姉さんからの誘惑攻撃が多いな、学園に入って大勢の女性と接する機会が増えたから、訓練を強化してるんだろうけど、私も信頼されていないな、姉さんの期待通りに完璧に任務をこなしているんだけど、いつになったら認めてくれるんだろう?)
ジェーンの想いはアランに全く伝わっていなかった。




