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悪役令嬢に転生してしまった。だから、私を裏切る婚約者の事を絶対に信じません!  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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お茶会 フレイアとロイ

読み方

「」普通の会話

()心の声、システムメッセージ

『』キーワード

<>呪文


「……」

「……」


 歓談が始まり、隣同士で会話が始まっていた。しかし、フレイアとロイは一言も言葉を発していなかった。

 この二人の沈黙の戦いをテーブルに居る全ての人間は知っていた。だから、フレイアとロイに話しかけるものは居なかった。フレイアとロイがお互いを思いあっている事をジーク、クルル、マリア以外はみんな知っているからだ。


 ジークにはアンネが、クルルにはエースが、マリアにはミリアが積極的に話しかけてフレイアとロイが会話を始めるのを待っていた。アルトとヒイロも気を使って、テーブルから離れている。フレイアとロイは話し相手が互いしかいない状態になっていた。


 だが、二人の会話は始まる気配が無かった。


(どうしよう。何を話したらいいの?)

 フレイアは、ロイが隣に居るだけで緊張し、話題が頭に浮かばなかった。


(フレイアに何か話しかけねば……。だが、何を話したらいい?)

 ロイもフレイアが隣に居るだけで頭が真っ白だった。


 沈黙は永遠に続くかと思われたが、ミリアがマリアの占いをはじめ、あれこれ会話している最中にフレイアは、自然とミリアの占いが素晴らしい事をほめた。


「すごいよね。ミリアの占いは本当によく当たるの。おかげで私も色々と助けられてるのよね」

 フレイアは笑顔でマリアの言葉に同意した。


(ここだ!)

 ロイはフレイアとの会話の糸口をつかんだ。


「ふ、フレイアも占ってもらったことがあるのかい?」

 ロイの声は極度の緊張で震えていたが、何とか言葉を吐き出した。


「あ、はい。恋の相談で……」

「恋の相談?」

(ああ、バカバカ。私の馬鹿~。こんな事言ったら『誰と』ってなるじゃんか~。無理、まだ無理!ロイに告白なんて出来ないのに~~~~~~~)

(どういうことだ!まさか、フレイアには既に思い人が……)

「フレイアには気になる人が居るのか?」


(あああああああああああ~。やっぱり聞かれた~。どうしよう~。どうしたら良い~)


「気になる人は居ませんよ。ただ、将来的に恋人は出来るのかな~とか、出来るとしたらどんな人なのかな~とか、占ってもらったんです」

(ああ、嘘をついてしまった。そんな事、占ってもらったことなんてないけど、これなら言い訳できるはず)


「そういう事か、それで、どんな結果が出たんだい?」

(気になる人は居ないのか、よかった~。あ、でも私も意識していないという事か……。少し複雑だが、占いの結果次第では私にも可能性があるはず)


(うえぇぇぇ~~~。ロイ様が食いついてきた~~~。どうしよう。どうしよう。恋人が出来ないって答えたら、私がロイ様をなんとも思っていないと伝える事になるし、かといってロイ様のような恋人が出来るって答えたら、告白してることになるし……。無理無理、私きっとふられちゃう。誰か、助けて~~~~)


 フレイアは涙目になりながら、ロイを見つめていた。


「ロイ。フレイアの占いの結果を聞くって事は、フレイアがどんな人を好きなのか興味があるって事?」


 そんなフレイアを見かねて、ミリアが助け船を出した。


(ここで、肯定したら、私がフレイアを好きだと告白するようなもの……。だが、否定すれば……)


 ロイは悩んだ。悩んだ末に答えを出した。


「女性としてではなく友人として気にはなる」

 ロイは冷静さを取り繕って答えた。


(今は、まだ告白なんて無理だ。学園を卒業し、ちゃんと就職してフレイアと結婚できる状態になってからじゃないと……)

 ロイは真面目だった。そして、真面目過ぎた。


(ロイもダメね~。告白のチャンスなのに……)

 セリアはロイをヘタレだと思っていた。

(そうじゃないわ。ロイは真面目なのよ)

 ミリアはロイの性格をちゃんと知っていた。だから、ロイの考えていることも分かる。

(両想いなんだから、さっさと告白すれば良いのに)

 そんなミリアの心を知らずにセリアは軽く考えていた。


(友人としてなんだ……)

 ロイの言葉を聞いてフレイアは落ち込んでいた。


「そう、なら私の占いの結果を伝えるわ」

(え?ミリア。何を言うつもり?実際に占ってもらってないのに……)


「優しくて、真面目で、回復魔法が得意な神官で、背が高くて、美形で、水の……」

「ちょっとミリア!」

 ミリアは煮え切らない二人が少しでも近づけるように占いの結果を捏造した。

「ここまで言ったら分かる?」

「違うんです!違うんです!ロイ様!」

(まさか、私なのか?だが、フレイアの反応は拒絶?そんなに私と結婚するのが嫌なのか……)


 ミリアのアシストは裏目に出た。


(そうか、そうだよな。貴族とはいえ、宰相の娘に釣り合うような家柄でもないしな……)

「大丈夫ですよ。フレイア。私は勘違いなどしませんから……」

 ロイは明らかに落胆して答えた。


(ああ、ロイ……。あ、でも落ち込んでいるってことは……)


(あの、ロイ。もし、勘違いじゃないって言ったら?)

 フレイアは思うだけで、言葉には出せなかった。


(逆効果だったか……)

 ミリアは自分のアシストが失敗に終わったことを知った。


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