お茶会 アンネとジーク
読み方
「」普通の会話
()心の声、システムメッセージ
『』キーワード
<>呪文
「ねぇ、ジーク。今はどんな訓練をしてるんですの?」
「今は、鎧を着た状態での走り込みの練習をしています」
「それは、大変そうですわね」
「そうです。鎧が重くて大変なんですよ~。ですが、これは立派な騎士になる為には欠かせない訓練なので、手を抜かずに頑張っております」
(アンネ様。いつも俺に話しかけてくれるけど、俺の話って面白いのか?ミリア様やフレイア様と話してる方が楽しいと思うんだが……。
もしかして、俺に気があるのか?いやいや、それは無い。俺は貴族ではなく騎士、平民よりは位が上とはいえ王族とつり合いなど取れない。
結婚なんか出来ないし、恋する事さえ許されない身分だ。俺は騎士、この人を守るためにあるんだ。その本分は忘れないようにしないと……)
(このわたくしが、これだけ話題をふっているのに好意に気が付かないなんてまだまだお子様ね。もう14にもなるのに……。
仕方ないか、騎士になるのだけが夢で、今まで女性と触れる機会が少なかったとはいえ、ここまで女性を意識しないのも問題ですわ……。
純粋で真っすぐで馬鹿で可愛いところを好きになってしまったワタクシの負けなのだけれど。わたくしから婚約を申し出るなんてできませんし、不本意ですけど、ここは少し誘惑してみるしかなさそうですわね)
「ジークは、どんな女性と結婚するつもりですか?」
(ここで、私と答えたら100点なんだけど……)
「結婚ですか?考えたこともないですね」
(ああ、やっぱりね……)
「じゃあ、好きな女性は?」
「今は立派な騎士になるのが全てです。それ以外は考えたこともありません」
「あら?じゃあ、気になる女性もいないのですか?」
「はい」
(ああ、これだから騎士馬鹿は……。目の前の私でさえ眼中にないなんて失礼も良いところ、お世辞でも私が気になるって言ってくれれば嬉しいのに、まあ無理か、脳みそまで筋肉で出来ていますものね……。ですが、これならどうです?)
「あらあら、ジーク。お菓子が付いていましてよ」
そう言って、アンネはジークに顔を近づけ、ジークの口元に右手を移動させつつ、自分の皿からお菓子の欠片をスムーズにとり、あたかもジークの口元にお菓子が付いていたように演出した。
「あの……。すみません……」
アンネに急に近づかれジークは少し顔を赤らめた。アンネから漂う甘い香りと、優しく口元に触れた白い指先にジークは異性を感じていた。
「いいえ、構いませんわよ」
(少しは意識してくれたみたいね。なら、もう一押し)
アンネはジークの口元からとったと見せかけたお菓子を自分の口に運んだ。
(え?え?え?)
ジークはあまりの事に頭が真っ白になった。自分の口に付いていたお菓子をアンネが食べたのだ。高貴な女性がする事ではなかった。
(うふふ、可愛い。初めてワタクシの事を意識したみたいですわね)
「どうしたんですか?ジーク」
アンネはジークを誘惑するべく妖艶な笑みを浮かべた。
「いえ、なんでもありません」
ジークはアンネを直視することが出来なくなり、顔を真っ赤にしてアンネから顔を背けた。




