お茶会4
読み方
「」普通の会話
()心の声、システムメッセージ
『』キーワード
<>呪文
(姉さん。見た?)
(見た。なんで、こんな結果に……)
「ちょっと、調子が悪いみたい。もう一回占ってみるわね」
ミリアは先ほどの不幸な結果を無かったことにする為に、もう一度占うことにした。
(もう一度、今度はちゃんと集中して……)
再びカードが宙を舞い。ミリアの目の前にカードが現れる。
「嘘よ、こんな……」
ミリアの目の前にはまたしても塔のカードが現れていた。
セリアは混乱していた。ゲーム序盤の難関冒険者への昇格試験、通常であればアランをパーティーメンバーに加えれば苦戦することは無い。暗殺者の技能で討伐対象のストーンゴーレムを一撃で倒せるからだ。
だが、今回は、アランを連れていけない。なぜならミリアが参加しないといけないからだ。その為、ストーンゴーレムとまともに戦う必要がある。だから、参加メンバーには出来る限り最高の武具を装備させて臨むつもりだった。
その為に、マリアに着替えをさせるという名目で、体のサイズを測ったのだ。それでも、マリアが死ぬという結果になった。セリアには原因が分からなかった。
「もう一度」
3度目の占いの結果も同じだった。
(姉さん。マリアが死んだ場合、私たちはどうなるの?)
(マリアが居なくなるんだから、みんなそれぞれのパートナーと普通に結ばれると思うけど、何とも言えない。マリアが死んだ場合の未来は見ることが出来なかったから……)
セリアはマリアが死んでゲームオーバーになった後、ミリアたちがどのような運命をたどるか知らなかった。なぜなら、画面にゲームオーバーと表示されるだけだったからだ。
(もし、このままマリアを見殺しにしようとしたら、姉さんは怒る?)
ミリアにとってはアルトと結ばれることが全てだった。
(怒らないよ。ミリアがそれでいいのなら反対はしない)
(でも、姉さんはマリアの事、好きでしょ?)
(好きだけど、ミリアの幸せの方が大事だよ。だから、好きにしていい)
(出来ない。出来ないよ。マリアがどんな子なのか、姉さんの記憶を見て知っているもの……。あんな家族思いの良い子を見捨てるなんて出来ないよ……)
(なら、何とかしましょう。対処法を占ってみたら?)
(そうするわ。ありがとう姉さん)
「あの、私、やっぱりご迷惑をおかけするみたいですね」
マリアは申し訳なさそうにミリアに言った。
「待って、大丈夫よ。大丈夫だから、次は対処法を占うから、その結果を見てから判断して」
「分かりました」
マリアは自信を失いうつむいて小さな声で答えた。
「カードよ。導いて、マリアはどうしたら活躍できる?」
再度、ミリアが占った。カードがミリアの眼前に出現した。
「0番、愚者、重きを捨てて自由になれ、さすれば未来は開かれん」
そして、ミリアとセリアは純白のローブを身につけたマリアが、ストーンゴーレムの一撃を避けるイメージを受け取った。
(ミリア。マリアにプレゼント予定の鎧は中止、代わりに魔法で強化したローブを手配して)
(分かったわ)
「ジェーン、鎧の発注は取り消して、代わりに『疾風のローブ』を手配して」
「畏まりました」
ジェーンはそう言うと、セトに注文の変更を伝える為に中庭から出てった。
「これで、状況は変わったはず。もう一度、占ってみるわ」
ミリアは再度占った。
「7番、戦車、不安に打ち勝ち前進するとき、あなたの道に勝利はもたらされる」
(一時はどうなる事かと思ったけど、いい結果になったわね)
セリアは胸をなでおろした。
(そうね。姉さん。これで、マリアを説得できるわ)
「ほらね。やっぱりマリアには才能があるのよ」
「でも、死ぬって結果もあったわけで……。本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。結果は変わったのだから」
「そうですね。私、ミリアの占いを信じます。だって、同じ結果を3度も引いたんですもの」
「すごいよね。ミリアの占いは本当によく当たるの。おかげで私も色々と助けられてるのよね」
フレイアは笑顔でマリアの言葉に同意した。
ミリアとセリアは今回のお茶会での最優先の目標を達成した。なので、その後は、マリアがみんなと仲良くなるべく、それとなく話題を振り、会話の輪に入れるようにサポートした。その結果、マリアは参加したメンバー全員と少しだけ仲良くなった。
そして、マリアは誰が誰を好いているのかも把握した。
(それにしても、あの方は、ずっとあの人だけを見ていたわね。カッコいいと思ったけど、やっぱり私じゃ釣り合わないか……。初恋は失恋決定か……。仕方ない、切り替えていこう)
マリアは、恋をしていた。そして、相手が自分の事を見ていない事を知った。だが、マリアにとっては大きな問題ではなかった。
(私にとって、今、一番大事な事は戦う力を身につける事だもん。冒険者になっていっぱいお金を稼いでお父さんとお母さんを助けたい。弟と妹たちにお腹いっぱいになるまでご飯を食べさせたい。だから、恋は二の次、冒険者になってからでも遅くない。それに、ここに居る人たちは別世界の住人、学園生活が終わったらきっと……)
マリアはミリアたちとの友情が期限付きだと思っていた。
「ミリア様、そろそろお時間です」
ジェーンがミリアに耳打ちした。もうすぐ昼になる時間だった。
「ありがとう。ジェーン」
「みんな、今日は忙しい中、集まってくれてありがとう。また、来週も集まりましょう」
「ああ、もちろんだとも。君の為に予定を空けるよ」
アルトは嬉しそうに言った。
「ありがとうございます。アルト様」
「ふふ、すっかり元通りね。光曜日には信じないって騒いでいたのに……」
フレイアはミリアの態度が元に戻ったことをからかった。
「私は信じてない!」
フレイアの言葉にセリアが反応した。
「ああ、なるほど、そういう事か、信じる心と信じない心で別れたのね。アルト様、大変でしょうけどセリアからも信頼を勝ち取ってくださいね」
「無論、そのつもりだ」
「なるほど、だからカウンセリングは必要ないと言ったのですか」
ロイもフレイアの指摘で色々と納得した。
お茶会はお開きになり、マリアが帰る為に着替えて、馬車に乗るとき、ミリアはマリアに紙袋を手渡した。
「あの、これは?」
「ジェーンから聞いたんだけど、弟と妹が居るんだって?」
「はい、そうですけど」
「お茶会で余ったお菓子、弟と妹にプレゼントするわ。みんなで食べてね。今日は来てくれて本当にありがとう。嬉しかったわ」
「ありがとうございます」
(本当に普通に優しくしてくれてる。信じても良いのかな?)
マリアは、ミリアの心遣いを嬉しく思いつつも貴族を簡単には信じることが出来なかった。




