お茶会3
読み方
「」普通の会話
()心の声、システムメッセージ
『』キーワード
<>呪文
「自己紹介は終りね。さて、みんなに集まってもらったのには理由があります。アルト様とヒイロとクルルには既に伝えてあるけど、私、二重人格になってしまいました」
ミリアはさらりと爆弾を投下した。
(え?いきなり何の話?ミリア様が二重人格?意味が分からない……)
マリアはミリアの突然の告白に絶句した。
「そっか、二重人格か~。なるほどね~。どうりで最近の発言がおかしいわけね」
フレイアはあっさりと受け入れた。
「まあ、大丈夫なんですの?」
「大丈夫よ」
(お義姉さまが二重人格?アルトお兄様が知っているという事は何も問題なさそうね)
アンネは、自分の兄が落ち着いているのだから問題ないと判断した。
「え?そうだったの?」
クルルは驚いていた。なぜなら、ミリアの中にセリアが居るのであって二重人格じゃないと思っていたからだ。
(クルル……。ちゃんと説明したのに……)
ミリアは自分の妹が残念な子なのは知っていたが、朝にした説明をすでに忘れているとは思わなかった。
「クルル。僕が、もう一度説明してあげるからこっちへおいで、姉さん少し席を外しても良いかな?」
「ヒイロ。助かるわ。お願いね」
「さあ、クルル。いくよ~」
「は~い」
クルルは何が何やら分からないままヒイロと席を離れた。
「それで、もう一人の人格なんだけど、名前はセリア。今から挨拶するから皆、よろしくね」
「分かった」「分かりましたわ」「はい」
フレイア、アンネ、マリアは返事をし、男性陣は黙ってうなずいた。
「初めまして、こんにちはセリアです。よろしく」
ミリアの雰囲気が変わった。今まで貴族令嬢然とした態度から、マリアの様な平民と同じ態度になった。
「まあ、本当にお姉さまとは別の人間なのね。驚きましたわ」
アンネは、心底驚いていた。
「そう?私と居る時と同じように見えるけど、でも確かに優雅さが無いか……」
「フレイア、それ酷くない?」
「ふふ、やっぱりミリアとは別人だわ」
「いや、まあ自覚はしてるけどハッキリ言われると傷つくよ?」
「ごめんごめん。まあ、優雅さは無いけど私はセリアも嫌いじゃないよ」
「ありがとう。フレイア」
「あ、マリア。驚いたよね?」
「ええっと、なんて言ったらいいのか……」
(驚いたけど、不用意な事は言えない……)
「まあ、そうだよね。私も驚いたもん」
セリアは、マリアに笑顔を見せた。
(ああ、なんだろう。ミリア様よりもセリア様の方が優しそうな気がする。セリア様とならお友達になれるかも)
「二重人格だと何か問題あるのか?」
ジークは頭に疑問符を浮かべて質問した。
「別に問題は無いけど、言動や態度がコロコロ変わるから気をつけてねって話よ」
「そっか、なら大丈夫だ。俺は元々細かい事は気にしないからな、それが漢だ」
「なるほど、最近、ミリア様の言動がおかしいと思っていましたが腑に落ちました」
エースはミリアの言動を振り返り違和感を覚えていた。そして、その理由がハッキリしたので納得もした。
「精神的な問題であれば、私がカウンセリングしましょうか?」
ロイは神官だった。ゆえに治療を申し出た。
「大丈夫よ。記憶障害は無いから日常生活で困ることもないし、そのうち治ると思う」
「ちなみに、どちらがコア人格ですか?」
「ミリアの方よ」
「なら、副人格のあなたが問題ないと言っても説得力がありませんね。ミリア様は、どう思われているのですか?」
「私も問題ないと思っています」
「そうですか、ならば何も言いません」
「さて皆さん。私から伝えたいことは以上になります。後は、お菓子と紅茶を楽しみながら歓談しましょう」
歓談が始まり、セリアは早速マリアに話しかけた。
「ねぇ、マリア。あなた気になる人はいる?」
「え?」
(いきなりの恋バナ?セリア様ってそういうタイプ?)
「えっと、居ません」
「本当に?」
「本当です」
(ふむ、今のところ誰でもないのか……。なら、特定の誰かを嫌いになってないかチェックするか)
「なら、逆に生理的に受け付けない人って居る?」
「ええっと、不潔な人は嫌かな~」
(なに、なんなの?何が目的なの?)
「そっか~。じゃあ、ジークとか無理?」
(えええええええええぇぇ~~~~~~。本人が居る前でそれを聞く?)
「いえ、ジーク様は清潔でいらっしゃいます」
「そっか、なら安心だ」
(なるほど、今のところ全員の親密度は0かちょいプラスって所か、まずまずの出だし、このまま親密度を上げていけばよしか)
(ちょっと姉さん!ジークに失礼でしょう?ちゃんとやれないなら私がやるわよ?)
(ええ?やだ。お菓子食べたいもん)
(なら、ちゃんとして)
(分かった。分かりました~)
「でざ、話は変わるんだけど、来週からの授業、なんに出るつもり?」
「そうですね。来週は魔法の授業にでようかと思っています」
「ダメよ。あなたはら来週も剣術の授業が良いわ」
「え?なんでです?」
「私の占いで、光属性の人は体を動かす授業が吉と出たのよね」
「ああ、なるほど、新聞部で宣伝していたミリアの精霊占いですね」
「そうそう。だから、剣術の授業に出ると良いよ」
「分かりました」
「それとね。もう一つお願いがあるんだけど」
「はい、何でしょう?」
「半年後に行われる冒険者への昇格試験、私と一緒に受けて」
「ええ?私がですか?」
「そう、あなたが必要なの」
「そんな、冒険者になるには最低でも1年半は訓練が必要だと聞いています。たった半年で昇級試験に合格するなんて無理ですよ。それに私はきっと足を引っ張ります。ミリアの友達には私より強い人が沢山いるのに、なんで私を……」
「それはね。あなたがとっても優秀で半年後にはとても強くなっている事を私が知っているからよ」
「それって、ミリアの占いですか?」
「そうよ。信じられないのなら占ってあげる」
そう言ってセリアはタロットカードを取り出し、ミリアに交代した。
(さあ、ミリア。迷えるマリアに未来を教えてあげて)
(任せて姉さん)
ミリアがカードに魔力を注ぐとカードはミリアの手から浮き上がり、球形を描いてシャッフルした後で、ミリアを中心に一列の円形になり、回転を始めた。
そして、1枚のカードがミリアの眼前で現れた。ミリアは機械的な抑揚のない声で、占いの結果を告げた。
「16番、塔、正位置、不測の事態によりマリアは死ぬ」
「え?私、死ぬの?」
マリアは占いの結果に驚き、顔を青くした。
「なんで、こんな結果に……」
占ったミリアも結果に驚いていた。
(嘘、なんでマリアが死ぬなんて結果に……)
セリアもあまりの結果に絶句してしまった。
そして、ミリアとセリアはカードからイメージを感じ取った。鎧を身につけたマリアがストーンゴーレムに殴り飛ばされ壁に激突し、絶命するイメージだった。




